クルマの防弾ガラスはどれだけ頑丈なのか?

防弾ガラス スモークガラス カーテン

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政府要人など、世界のVIPが使用する防弾車。ほとんどの人にとっては、所有することはもちろん、触れる機会さえないクルマですが、だからこそ、「ほんとに防弾できるの!?」と、その正体が気になります。今回は、防弾車の防弾性能について、また世界の有名な防弾車について、見ていきましょう。

文・吉川賢一
Chapter
防弾車とは
防弾ガラスってどんな構造なの?
どのくらい頑丈なの?
世界のいろいろな防弾車

防弾車とは

防弾車はその名の通り、外からの銃撃に対し、銃弾を貫通させないよう設計された自動車です。一般的にその外見は、普通の高級車で、要人輸送のほか、警察用、貴重品輸送などの用途もあります。

有名なところでは、2017年にアメリカのトランプ大統領が訪日した際、別便で運ばれてきた大統領専用車両「ビースト」があります。

ビーストは窓ガラスに防弾ガラスが使用されるほか、ボディ部にも特殊鋼などが使用されています。

防弾ガラスってどんな構造なの?

防弾車の製造を手掛け、日本政府関係車両も扱う株式会社セキュリコによると、自動車用防弾ガラスには、通常、ポリカーボネート積層型防弾ガラスという特殊なガラスが使用されているそうです。

一般的な自動車の合わせガラスは、2枚のガラスを強靭な特殊中間膜で貼り合わせたものですが、防弾車の合わせガラスは、生板(フロート)ガラスを何層か積層し、さらに内側にポリカーボネートを接着したものだそう。

幾層にも重ねたガラスの層で弾丸を受け止め、そして閉じ込める、というメカニズムになっており、戦車のように、キンキンと銃弾を弾き返すわけではないのです。

さらに内側のポリカーボネートの層が着弾時に発生するスポール(有害な高速の破片)が、車室内に飛散しないようになっています。

どのくらい頑丈なの?

防弾ガラスの防御能力については、NIJ規格(NIJ-0108.01)が指標としてよく用いられます。この規格は、米国の国立司法省研究所(NIJ : National Institute of Justice)が制定したもので、防弾ガラスの能力を6段階でランク付けしています。

一番性能が低いレベルは、警察官などが所持している一般的な拳銃の弾を阻止することが可能。最高レベルは、強力なライフルの弾丸も貫通させない能力を持ちます。

ただし防弾ガラスは、防弾効果を上げるために、生板(フロート)ガラスが使用されているため、小石などがガラスに当たっただけで簡単に割れてしまう、という欠点があります。

また、寒冷地においては、ガラスが凍り付いた状態で暖房をつけると、中間膜や内側のポリカーボネート層が剥離してしまうこともあるため、寒冷地での使用には熱線ヒーター入りの防弾ガラスが必要です。

ちなみに、通常のクルマのガラスは20年経っても問題なく使用できますが、防弾ガラスは、中間膜や内側のポリカーボネート層が熱に弱いため、その耐用年数は3年から6年ほどといわれています。

世界のいろいろな防弾車

アメリカ

アメリカ大統領専用車のキャデラック・ワン(別名:ビースト)は、アメリカの自動車メーカー・シボレーの高級車キャデラックをベースとしています。

ビーストという別名のとおり、まさに“野獣”、“動く要塞”と呼ぶにふさわしい重装備の数々が備えられており、現在の米国大統領であるトランプ氏は、このキャデラック・ワンを17億円かけて、さらなるセキュリティー強化をしたそうです。

日本

日本の内閣総理大臣専用車には、長らく、トヨタ センチュリーが使われていましたが、2008年にレクサス LSが追加配備となりました。

クルマの前面に青色LED灯が備えられており、この青色LED灯を点滅させて走行します。なお、キャデラック・ワンと違い、総理専用車は、セキュリティ上の理由から、詳しい装備などは明らかになっていません。

ローマ教皇「ポープモービル」

別名パパモビルとも呼ばれるローマ教皇の専用車は、教皇が移動の際に使用する専用車で、20世紀の半ばまで使用されていた移動式玉座を自動車で代替したものです。後部座席が特徴的で、大きな防弾ガラスで囲まれた教皇席が設けられています。

ポープモービルにはいろいろなかたちがありますが、2012年メルセデス・ベンツがローマ教皇庁に納めた、Mクラスをベースにしたものが有名です。1981年、ヨハネ・パウロ2世が襲撃されて以来、使用されるようになりました。


世界では、NIJ規格の最高ランクでも防ぐことができない特殊兵器も登場しているそうです。要人を守るこうした防弾車は、これからも進化を続けていくでしょう。

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