お蔵入りとなった"幻の和製スーパーカー"、日産のMID4ってどんなクルマ?

MID4-Ⅱ

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日本車の黄金期と呼ばれた1980年代、1台のスーパーカーがモーターショーに出展されました。「MID4」という名のクルマは、当時の日産が持つ技術をすべて注ぎ込んで製作され、驚きの完成度を誇りながらも市販化されなかった”幻の和製スーパーカー”でした。MID4とは、どんなクルマだったのでしょうか?

文・立花義人
Chapter
MID4開発の経緯
MID4の発表
MID4-Ⅱへと発展
MID4はなぜ市販されなかったのか?
MID4開発によって培われた日産の技術

MID4開発の経緯

1970年代の中頃、日産自動車は国内の自動車販売シェアにおいて、首位のトヨタに追いつかんばかりの勢いがありました。しかし、80年代にかけて販売戦略が失敗、トヨタの後塵を拝するようになってしまいました。

日産はその状況を打開すべく、まったく新しいコンセプトカーの開発に着手します。そしてそのコンセプトカーは、元々サファリラリーで実績のあった日産が、WRCに導入される予定だった新カテゴリー「グループS」への参戦を意識したものでもありました。

MID4の発表

MID4は、”スカイラインの父”とも呼ばれた故・櫻井眞一郎氏によって開発が進められました。MID4の名前は、ミドシップレイアウトと、フルタイム4WDの駆動方式から名付けられました。

ミドに横置きで搭載されたエンジンは、V6 SOHCのVG30型(Y30型セドリック・グロリア、マキシマに搭載)をDOHC化した最高出力230psのVG30DE。それにオーストリアのシュタイヤー プフ社が供給する4WDシステム、4WS(HICAS)を備えたスーパーカーになりました。

また、リトラクタブルヘッドライト、2シーターミドシップの特徴であるサイドエアインテークなど、スタイルもスーパーカーの王道をいくものでした。

MID4は、1985年9月に開催されたフランクフルトモーターショーで発表され、同年の第26回東京モーターショーにも出展されると、その高い完成度が話題となりました。

MID4-Ⅱへと発展

MID4の評判がモーターショーで上々だったことから、日産は市販化を前提にMID4の改良に着手。2年後の1987年に東京モーターショーにて「MID4-Ⅱ」を発表しました。

初代に比べると、丸みを帯びたデザインとなり、ボディサイズは、全長、全幅ともに拡大。縦置きとされたエンジンは、MID4に搭載されたVG30DEにインタークーラー付きツインターボを装着したVG30DETT。最高出力330psを発生するエンジンに合わせ、トランスミッションもフェアレディZ(Z31型)用をベースとした縦置きへと変更されました。

サスペンションは、MID4が前後マクファーソンストラット式であったのに対し、MID4-Ⅱではフロントがダブルウィッシュボーン式、リアがマルチリンク式に変更され、高性能車としての走りにさらに磨きがかけられました。

MID4はなぜ市販されなかったのか?

MID4、MID4-Ⅱともに、プロトタイプとしては非常に完成度が高く、さらにテストコースにて試乗会も開かれたことから、多くの人が市販されるのも時間の問題と思われていたことでしょう。

しかし市販化のためには、安全基準に対応する調整や、部分改良などを含めた開発期間に、少なくとも1年以上が必要であったこと、そしてスポーツカー専門メーカーではない日産が量産体制を取るために、社内システムを大きく変更・再構築する必要がある、という問題が浮上しました。

さらに、販売価格は2,000万円を超えると試算され、量産メーカーの日産がどのくらい販売できるのか、という点も疑問が生じます。

それらを受けて日産は、やむなくプロジェクトを中止。MID4は市販されることなく姿を消すことになったのでした。

MID4開発によって培われた日産の技術

MID4が市販されることはなかったものの、開発によって培われた技術は、VG30DEは”日本初のV型6気筒DOHCエンジン”として、F31レパードやZ31フェアレディZに搭載、さらに280psにデチューンされたもののフェアレディZ(Z32)にはVG30DETTを採用。

また、4WDと4WSの組み合わせは、改良を加えられた後、R32型スカイライン GT-RにアテーサE-TSとスーパーHICASというかたちで、その後の市販車に採用されています。


現在、MID4-Ⅱは、神奈川県座間市にある日産ヘリテージコレクションに保管されています。市販はされませんでしたが、MID4は「日産の技術力向上」という当初のコンセプト通りの役割を担ったといえるでしょう。

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文・立花義人
フリーライター。5歳の頃に自動車図鑑で見たアルファロメオのデザインに衝撃を受け、以降クルマに魅了される。様々なクルマの個性を知りたいと考え、免許取得後国産・輸入車問わず20台以上を乗り継ぐ。車検整備を取り扱う企業に勤務していた際、メンテナンスや整備に関する技術や知識を学ぶ。趣味はドライブ、食べ歩き。現在の愛車はパサート・ヴァリアント。
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