ボディー剛性が高いと何が良いのか?決して安全とは限らない?

ボルボ XC90 2015

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「強い車」というフレーズに、どのような印象を持たれますか?衝突などの事故に強いことでしょうか。それとも力強く走る抜けることでしょうか。さまざまなイメージが浮かび上がりますが、今日は車のボディ剛性に注目してみましょう。よく耳にするフレーズですが、ボディ剛性が高いことのメリットを説明してくれるセールスマンは少ないかもしれません。車のボディ剛性が高いと、どのようなメリットがあるのでしょうか?
Chapter
ボディー剛性が高いとは、どのようなことか?
「剛性が高い」例
剛性が高いことのメリットは?
乗り心地は好み?

ボディー剛性が高いとは、どのようなことか?

そもそも、ボディ剛性とは?

現代は、モノコックという構造で作られた車がほとんどです。ティッシュ箱や卵の殻の様に柱を持たずに外側のパネルに応力を受け持たせることで、全体の強度を出しています。

もちろんティッシュ箱とは極端な表現で、実際にはさまざまに金属を溶接し、ひとつの形を形成しています。補強材を持たず、捻じれなどにも強いため、量産車にはうってつけのボディ構造といえます。

モノコックが普及する前は、トラックなどにみられるフレーム構造(柱を主にする構造)が主流でした。このフレーム構造のメリットは、ボディにダメージを受けてもフレームが無事ならば、走行性能にまったく影響がでないことです。

反対にモノコックは、ねじれなどに強いぶん、一度損傷を受け、形状が変形しまうと、完全に元通りに戻すことは困難になります。とはいえ、軽量で高剛性というメリットは、量産車にはおおきな魅力です。

「剛性が高い」例

量産車のなかで、比較的ボディ剛性が高い車としてゴルフを例に挙げてみましょう。よく輸入車は、ボディが丈夫だ!という声を聞きますが、根拠はその構造にあったのです。

まずゴルフのボディには、要所に熱間形成高張力合板という金属が用いられています。筆者がフォルクスワーゲンジャパンを訪れた時には、ボディのカットサンプルがおいてありました。某国産車のパネルは、私一人の手で簡単にねじることが可能でしたが、ゴルフのそれは成人男性2人がかりでも、ほとんど歪みが見られませんでした。

かつては鉄板3枚重ねで強度を出していたそうですが、軽量化のため特殊な技術を取り入れることで、1枚の鉄板で同じ強度を実現しているそうです。軽量化は低燃費化にもつながりますし、万がいちの事故の際にも軽い方が衝突エネルギーが少ないので、安全性が高くなっています。

また、この合板はレーザー溶接という技術でつなぎ合わされています。従来のスポット溶接は、例えるなら釘を打ち込んで点でつなぎ合わせていたものですが、レーザー溶接だと釘と釘の間まで隙間なくつなぎ合わせることが可能です。

両者を比較すると溶接でつながれた面積には、じつに5倍もの差が生まれます。強い金属を5倍の面積でつなぎ合わせる。こうやってボディの剛性を高めているのです。

剛性が高いことのメリットは?

では剛性が高いと、なにが良いのでしょうか?一般的な生活で自動車を使用する環境で乗員が不快に感じないように、車のボディは絶え間なくしなっています。

ガタガタの路面を乗り越える時やコンビニに入る時のちょっとした段差で、ボディが微妙にしなることが乗り心地に寄与しています。

しかし、このしなりが発生する瞬間にボディに付随している外板、ドアやフェンダーも一緒にしなっています。そして、ドア同士が接触しないように外板の隙間には数ミリ程度のクリアランスがあらかじめ設けられています。

この隙間は走行時に風切り音を生み、静粛性の低い車としてドライバーに負担をかけます。高速道路を走っていると、エンジンの音だけでなく車が風を切る音をうるさく感じたことはないでしょうか?

ボディ剛性の高い車は車体が歪みにくいため、これら外板の隙間をギリギリまで狭くすることが可能です。走行中の不要なノイズを低減し、リラックスして運転に集中することができるのです。

レーザー溶接の特徴は、屋根を見た時にはっきり表れています。それは、屋根の両端を走るプラスチックのカバーがないことです。これはスポット溶接の目隠しのために備わっているもので、レーザー溶接だと非常にすっきりしたデザインが生まれます。

乗り心地は好み?

ボディ剛性が高い車に乗ったときの第一印象として、硬いと感じる方も少なくないと思われます。

サスペンションだけが硬いのでなく、車体そのものが硬いため、初めてボディ剛性の高い車に乗ったときは、他の車との乗り心地の差に驚くことでしょう。この点に関しては個人の好みの差があるので硬い=良いとは言い切れない部分があるのも事実です。

一方で、車の操作性には、メリットが感じられることも多いと思われます。たとえば、人が急に飛び出して来たり、不測の事態で思い切りブレーキペダルを踏み込むと、ハンドルまでガタガタと振動を感じることがあるでしょう。この時にボディ剛性が高い車は、急ブレーキにもしっかりと車体が耐えてくれるので、ドライバーに伝わる不要な振動を軽減してくれます。

日常ではかからない負荷のもとでもいつもと変わらない操作ができれば、より安全に車を操作することが可能となります。

ナビやバックカメラ、最近では衝突防止ブレーキなどさまざまな付加機能がセールスポイントになるなかで、あらためて基本的な車造りの価値を知ることで、より安全で快適なカーライフを楽しむことができます。

車選びをするときには、なかなか高速道路を試乗したり、急ブレーキを試すことはないかもしれません。しかし、遮音性やハンドルの切りやすさなど、ちょっとしたことに目を向けるだけで、これまでとは違った視点から大切なマイカーを選ぶことが可能となります。ぜひ次のマイカー選びの際には、五感を駆使してご自分に合った車を選んでみてください。
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