AT車の「N」ってなんのためにあるの?

シフトノブ ニュートラル

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AT車のシフトゲートにある「N(ニュートラル)」。駐車は、P(パーキング)に入れるので、Nレンジは必要が無いように思いますよね。でもどんなクルマにもNレンジがあるので、なにか意味があるはず。AT車のNには、どういった用途があるのでしょうか?

文・吉川賢一
Chapter
「N」はニュートラルの意味
ニュートラルのもっとも重要な役割は?
ニュートラル走行は意味があるのか?
信号待ちでニュートラルにすると燃費が良くなる?

「N」はニュートラルの意味

ニュートラル(neutral)とは、日本語に訳すと中立という意味で、一方に偏らない中間にあることを指しています。

クルマにおいては「エンジンの動力が伝わらない状態」のことで、エンジンとミッションは切り離されています。

ニュートラルのもっとも重要な役割は?

AT車に乗っていると、普段は使う機会のないNレンジですが、緊急時には重要な役割を持ちます。

たとえば線路の踏切内で、エンジン等の故障により車が動かなくなってしまったとき、ギアがDに入った(噛んでしまっている)ままだと、クルマは簡単に動きません。しかし、ギアが完全に切り離されたニュートラルであれば、人力でも動かすことができます。

またレッカー移動の際にも、パーキングの状態ではロックされているタイヤを引き摺ることになってしまいますが、ニュートラルにしておけば、タイヤを引き摺ることなく移動させることができます。

つまり「危険回避のため」というのが、Nレンジの大事な役割なのです。

ニュートラル走行は意味があるのか?

「下り坂では、ニュートラルで走行すると燃費が良くなる」という、うわさを聞きますが、実際はNレンジでもエンジンはアイドリングを維持するので、燃費はDレンジでの走行時と比べて変わりません。

むしろ下り坂での燃費は、AT車でアクセルオフを使って走行したほうが有利になります。なぜなら、負荷が低いシーンでは燃料カットが入り、エンジンへガソリンを送らなくなるためです。ニュートラルで走行しているときはアイドル状態と同様の回転数となるため、燃費は良くはならないのです。

またニュートラルで走行した場合、エンジンブレーキがまったく利かなくなるため、フットブレーキを多用し、その結果、フェード現象(ブレーキの発熱によるブレーキの効きの悪さ)やベーパーロック現象(ブレーキ液に気泡が入りブレーキの効きが悪くなる)を起こす可能性が高まり、重大事故につながるおそれがあります。

信号待ちでニュートラルにすると燃費が良くなる?

信号待ちでニュートラルにしても、Dレンジのままブレーキを踏んでいても、燃費は変わりません。ニュートラルで信号待ちをすると、ATF(AT車用のオイル)の冷却ができず劣化が早まり、ギアへの負担が大きくなり、最悪の場合はギアが焼き付いてしまうこともあります。


ATのNレンジは、エンジンが停止してクルマが動かないとき、緊急移動やレッカー移動などのために付いています。ニュートラルにすることで燃費が良くなるというのは誤った考え方ですし、むしろ危険につながるおそれがあるので、走行中は使わないようにしましょう。

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