ばね下の軽量化は、クルマに悪影響って本当?

NSX アルミ 骨格構造

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ばね下の軽量化を”正義”と考えている方は多くいます。昔から、「ばね下1kgの軽量化はばね上○kgの軽量化に相当する」などと言われてチューニングに励んできたのですが、じつはばね下の軽量化にはデメリットもあるのです。そこで今回は、ばね下の軽量化によるメリットとデメリットについて紹介します。

文・吉川賢一
Chapter
クルマの軽量化
ホイールが単純に軽量化できない理由

クルマの軽量化

クルマの軽量化は、加速や燃費性能、ハンドリングの向上といったさまざまな面にメリットがあるのは間違いありません。そのため、低燃費を競う乗用車から、速さを求めるレーシングカーまで、どのメーカーも車両の軽量化に取り組んでいます。

車体剛性を落とさずに質量を減らすため、アルミを使った骨格構造を採用したり(新型NSXやアウディ、ジャガー等)、ルーフやエンジンフードの素材をカーボン(BMWやメルセデス等)にしたりと、ときにはコストをかけてでも質量を削ろうと、エンジニアたちは日々検討をしています。

なかでも「ばね下の質量」は、ないがしろにはできない要素です。”ばね下”とは、サスペンションがストロークする際に動く部分を指し、タイヤ、ホイール、ブレーキキャリパー、ブレーキローター、ハブベアリングに、サスペンションアームやブレーキ配管の一部も含みます。その重さは、一般的なタイヤとホイールで、1組あたりおおよそ15kgほど(※225/55R17 スカイラインの場合)になります。

そのバネ下の軽量化でもっとも手軽な方法は、軽量なホイールに交換することです。そうすることで、1輪あたり約1〜2kgは削ることができるため、その効果はとても大きいものとなります。それならば、最初からメーカーが軽量なホイールにすればよいのでは?と思いますよね。

ところが、純正ホイールを持ったことがある方はご存知かもしれませんが、純正ホイールでそれほど軽いものはありません。なぜホイールを軽量化しないのでしょうか?

ホイールが単純に軽量化できない理由

メーカーが軽量なホイールを使わない理由は、大きく分けて2つあります。

まずひとつが、ロードノイズの悪化です。軽量ホイールに交換すると、路面からの衝撃や振動を減衰・吸収する性能が低下します。技術的には「ホイールの軽量化によって、ばね下の共振周波数が上がり、防振領域での振動遮断性が落ちる」といいます。

ロードノイズの改善には共振周波数を下げることが有効で、ばね下質量を重たく、かつタイヤの縦方向のばね定数を下げて柔らかくすることで一定の効果がみられます。

つまりホイール質量の軽量化は、ロードノイズ増大の原因になってしまいます。

もうひとつは、乗り心地の悪化です。それまで重たいホイールでタイヤをたわませて吸収していた路面の凹凸を、ホイールが軽くなることで拾いやすくなってしまいます。サスペンションが路面の凹凸を拾いやすくなると、ボディへ伝わる振動が増え、乗員の感じる乗り心地が悪化します。

それを避けるには、タイヤの縦ばね定数を低減したり、スプリングレートやショックアブソーバーの減衰特性などを見直すのですが、そうすると今度はハンドリングに悪影響が出てしまいます。

また、スプリングやショックアブソーバーの設定を変更すると、前述した共振周波数の観点からも余計な振動を伝達することになり、不快な乗り心地になります。

タイヤ&ホイールのインチアップをした際に乗り心地を維持するには、インチアップでタイヤの縦バネが硬くなったぶんだけホイール重量を増やす、そして固有振動数を揃える、というのがセオリー。乗り心地重視の高級車の大径ホイールが重たいのは、そういった理由があります。


軽量ホイールによって、加速性能やブレーキ性能が向上することは、直感的におわかりになるかもしれません。でもじつは、ロードノイズや乗り心地といった”快適性”を損なう可能性があるのです。

極端なばね下の軽量化をすると、クルマの性能バランスを崩すことになります。ホイール選びは、慎重にすることをおすすめします。

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