ESC(VDC) によってもたらされるメリット

最近のクルマには、さまざまな安全装置が盛り込まれており、そのひとつに横滑り防止装置(ESC:Electronic Stability Control)があります。メーカーによって、VDCやVSCなど呼び名は異なりますが、その機能はほぼ同等です。ESCの効果と、その有無で起きる違いについて、日本車メーカーで実験を担当していた筆者の経験を元に紹介します。

Chapter
ESC(VDC)の役割
アンダーステアとオーバーステア
ESC(VDC)によるメリット3つ

ESC(VDC)の役割

日産 VDC

横滑り防止機能(ESC)は、VDC(ビークル ダイナミクス コントロール)やDSC(ダイナミック スタビリティ コントロール)など、3文字に省略して呼ぶことが多いです。

このESC(VDC)は、車両がスリップをする挙動を検知した際に、車速に応じて、エンジン出力および個々の車輪へブレーキ圧をかけて、車両姿勢を安定に保つ制御のことを指します。

アンダーステアとオーバーステア

日産 フェアレディZ 2017

コーナリング時、速度が出過ぎていると遠心力によってクルマの挙動が外側に膨らむことがあります。これがアンダーステア。逆に、内側に切れ込む挙動をオーバーステアと言います。

このアンダーステアとオーバーステア、どちらも出過ぎると狙い通りのコーナリングができず、スピンをしたり、道路の外に出ていってしまったりと、車両挙動はとても危険な状態になります。

自動車メーカーでは、こういったシーンに遭遇したときにでも安全に走行できるよう、ESCを開発(正確には制御ロジックを元に車両適合)しており、極端なアンダーステアやオーバーステアが出ることがないようにしています。

これによって、路面が滑りやすい雨の日や雪道といったシーンでのスリップ事故を減らすことができます。

横滑りが大きくなるのを防止するESCのメリットは、大きく3つにまとめられます。

ESC(VDC)によるメリット3つ

日産 GT-R コーナリング

①コーナリングを安定させる

クルマは、車速系(車輪速センサー)、加速度計、回転角計を装着しており、ESC(VDC)は車両の横滑りを検知すると、エンジントルクの制限とABSのコントロールを行います。ABSはタイヤがなにかの拍子にロックしたとき、ブレーキの解除と作動を行い、制動や回避に必要なグリップ力を回復させることができます。

ESCは、4輪のブレーキ(ABS)を調整し、グリップ力を回復させることで、ドライバーにスリップからの回避行動をとるための、余裕を与えることができるのです。

②回頭性が向上する

ESCは、コーナリング時の安定性を高めることもできますし、回頭性を高めることも出来ます。

4輪のブレーキを個別に調節することができるため、もっと旋回をしたければ、フロント両輪にブレーキをかけ(ただし挙動を崩さない範囲で弱く)、フロント輪へ荷重をのせてコーナリングフォースを上げ、旋回モーメントを増やします。

クルマの重量や、重心高によって回頭性への効果代は異なりますが、よりスムーズにコーナリングできるようになります。

ちなみにESCに加えて、4輪のトルクコントロールができる4WD協調制御が付いたメーカーもあります。これは4輪の駆動トルクを制御して、ヨーモーメントをコントロールする技術です。

アンダーステアのときは、後輪の駆動力を増して回頭性を高めるといった仕組みになっており、ブレーキ(ABS)だけの制御よりも、高度に制御できる機能です。

③トラクションコントロールによりさらに安全性が向上

雪道など滑りやすい路面でアクセルを踏み過ぎると、タイヤが空転することがあります。その際、エンジンの駆動力を制御し、安全な走行を補助するトラクションコントロールというものがあります。

ESCトラクションコントロールを制御することで、片輪がスリップ、片輪がグリップした場合、スリップ側をブレーキでつまんで、グリップしている側のタイヤに徐々に駆動力をかけることで、スリップすることなく雪道を進んでいくことができます。

装備のないクルマでは、ドライバーがアクセル操作によってタイヤの空転を抑える必要があり、技術が必要になります。

Gベクタリング


マツダのGベクタリング、トヨタのVDSM、日産の高機能VDC等、走りの特性をコントロールする新たな車両制御技術も普及し始めました。ESCは、より安全に、より意のままなコーナリングを実現する武器として、今後も発展していくでしょう。