ライコネンの選んだルノー・メガーヌ

ahead renault

※この記事には広告が含まれます

キミ・ライコネンのインタビューでのやりとり、あるいはF1のテレビ中継で流れる無線のやりとりを知っている人なら、思わずクスッとしてしまうテレビCMがヨーロッパで放送されている。

text:世良耕太 [aheadアーカイブス vol.125 2013年4月号]
Chapter
ライコネンの選んだルノー・メガーヌ

ライコネンの選んだルノー・メガーヌ

純白のルノー・メガーヌで砂浜に乗り入れたライコネンはクルマを降りて波打ち際に向かい、釣り人に近づいていく。横に並んだところでひげ面の釣り人が口を開く。
 
「休みかい?」
「ノー」
「じゃ、仕事?」
「ノー」
「フランス人?」
「ノー」
「なんでわざわざこんな遠くまで来たんだい?」
「なんでだろうね」
 
ざっと、こんな感じだ。質問に対する答えが極端に短く、しかも無表情に受け答えするのが、ライコネンというF1ドライバーの特徴である。スピンしてレースを終えたライコネンは「どうしたの?」とマイクを向けられ、「スピンした」と答える。とりつく島もないとはこのことだ。
 
ライコネンだってときに、長々と話すことはある。でも、イメージ的には「レースはどうなりそう?」と聞かれれば「暑くなりそう」と答える人であり、無線であれをしろこれをしろと指示を出されれば、「そんなこと分かっているよ。放っといてくれ」と言うドライバーなのである。
 
そんな言動を見聞きすると、物事に関心を持たないかわりに人にも干渉されたくない人物のように思える。だが、本当にそうなら、わざわざ過酷なレースに出つづけて勝利を狙おうなどとは思わないはず。口には出さないけど、勝利への欲求は人一倍強い。そんな、外面と内面のギャップが人を引き付ける秘密のようだ。
 
開幕戦オーストラリアGPでは、7番手からのスタートながら、下馬評を覆して勝利を手にした。冷静な判断力と途切れることのない集中力、正確無比なドライビングテクニックが必要なはずだったが、「今までで一番楽なレースだったかも」と言ってのける。それがライコネン。
 
そんなライコネンが選んだクルマがルノー・メガーヌなんだよ、というのがCMに込められたメッセージだ。「ネバーエンディング・ドライビングプレジャー」を備えているのがメガーヌの身上。物事に関心のない振りをしているけれど、こだわるところはきちんとこだわっているというわけだ。
 
釣り人と別れてクルマに戻ったライコネンは、誰にも見られていないことを知ってか、運転中にふっと口元を緩める。楽しんでいる証拠だし、気に入っている証拠。「なんでメガーヌを選んだの?」と聞いても「なんでだろうね」とクールに答えるだけだろうけれど…。

-----------------------------------
text : 世良耕太/Kota Sera
F1ジャーナリスト/ライター&エディター。出版社勤務後、独立。F1やWEC(世界耐久選手権)を中心としたモータースポーツ、および量産車の技術面を中心に取材・編集・執筆活動を行う。近編著に『F1機械工学大全』『モータースポーツのテクノロジー2016-2017』(ともに三栄書房)、『図解自動車エンジンの技術』(ナツメ社)など。http://serakota.blog.so-net.ne.jp/
【お得情報あり】CarMe & CARPRIMEのLINEに登録する

商品詳細