Rolling 40's Vol.85 自宅か店かは料理と同じ

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最近、自動車バイク用の工具を色々買い足している。元々ある程度は持っていたのだが、高級ブランド工具で整然と揃えたいという無意味な収集癖があった故に、費用のことから停滞気味だった。

text:大鶴義丹 [aheadアーカイブス vol.155 2015年10月号]
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Vol.85 自宅か店かは料理と同じ

Vol.85 自宅か店かは料理と同じ

しかし昨今はネットの普及により色々な工具が安く買える時代になった。実際にそれらのリーズナブルなモノを使ってみると、高級ブランド工具を揃えるということが、商売上の見栄以外は全く意味のないことに気が付いた。

とくにバイクはクルマと違い、設計上、それほど強くネジやナットを締め付ける必要がなく、リーズナブルな工具などで不安を感じることはない。ただ、唯一、締め付けトルクを管理するトルクレンチというモノだけは、精密機器なので安かろう悪かろうである。なので高級品ではないが、日本製のそこそこのモノにしている。

ここだけちゃんとしていれば、あとは店でも開いて、毎日何時間も工具を酷使して、エンジンの奥までバラしでもしない限り十分である。というわけで、今までは避けていたリーズナブルな工具を、特殊なモノまでどんどん揃えている。

すると今までは躊躇していた複雑な整備も楽々できてしまい、バイクに限っては、エンジンやミッションの中身以外は全部自分でできてしまう。

つい最近などはフロントフォークのオーバーホールを特殊工具まで揃えて自分で敢行してしまった。ここまでいくとバイク屋さんには申し訳ない話なのだが、大抵のことは自己責任の範囲で自分でやってしまう。

ただ、知人のバイク屋さんには特別に優秀なメカニックもいて、エンジンなどに関する難しい整備はあえて自分で挑戦せずにプロに任せることにしている。

私の推奨するガレージ整備は、無理に何でも頑張るということではなく、プロに任せる部分と自分でできる部分を整理していくということだ。また、時々プロに任せることで、自分では気が付かなかった不具合や間違った整備を指摘され、正しい方法をプロから直接教えてもらうことも多々ある。

プロに払う整備費用は安いものではないが、使い方によっては、自分の知識としての無形財産に変わってゆくのだ。

趣味関連におけるインターネットの役割は全てを変えてしまった。バイクにはオフからオンまで30年も乗り続けているが、複雑な整備の情報を手に入れられるようになったのもここ10年くらいのことである。

プロはだしのエンジン整備の工程などを、こと細かにブログなどでアップしているマニアは幾らでもいる。彼らの発信している情報に対する信頼度の問題は多少はあるが、それを差し引いても、彼らが発信してくれている情報がどれだけ有益であるかは明白だ。

ちょっとした疑問でも、バイク屋さんによっては聞きにくい雰囲気があったりもするので、そういう疑問がインターネットの情報などでどんどん解決されていく様は、昔と比べたら信じられないような状況である。

同時にその状況は、四輪やバイクを商売にしている方にとっては苦境ともなりかねないのだが、それはネット時代の今となっては飲食から医療まで、お客と直接接する商売でも同じことなので仕方のないことであろう。

逆に見れば情報がクローズされていた故に、以前では、不完全なモノでも淘汰されずにいたということでもある。

オンロード系とオフロード系の違いでは、圧倒的にオフロード系のほうが自分で整備する方が多い。オフロードに関しては、タイヤ交換くらい朝飯前の方が半分くらいである。

これは簡単な理由で、オフロードはバイクやエンジンが小型ゆえに軽いので、バイク自体を真横に倒して整備するのも可能だったり、人気のない山奥で故障したり破損したりする可能性もあり、多少の整備が出来る出来ないがサバイバルに関わったりするからだろう。

その点、オンロードはレース活動をしたり、特殊な改造が趣味でもない限り、きれいに磨いたり着飾ったりして盆栽的に愛でる方が多数なので、メカニカルなことはお店任せというケースも多い。これはこれで正しい姿であり、一流シェフの腕による至極の料理をそれなりの対価を払って楽しむのと同じだ。

しかしそれでも自分でマシンを触らない方が多過ぎる。私たちバイクマニアが当たり前に行っているブレーキのオーバーホールまで付け焼き刃で敢行せよとは言わないが、4輪2輪に関わらず、運転する限りはある程度はマシンに触れた方が良いと思う。

一番の理由は、ブレーキなどはその構造を理解しおくと、作動の違和感などに対して敏感になるからだ。それによって故障や事故を未然に防いだことが幾度となくある。

それが家族を乗せているマシンというなら、私個人の感覚では、車検時だけのプロ任せで満足している神経の方を疑ってしまう。その間にゴムや金属が変化、劣化、破損をしないと誰が決めたのだろう。

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text:大鶴義丹/Gitan Ohtsuru
1968年生まれ。俳優・監督・作家。知る人ぞ知る“熱き”バイク乗りである。本人によるブログ「不思議の毎日」はameblo.jp/gitan1968
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