オンナにとってクルマとは Vol.70 サイドミラー・ロス

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母が私の愛車を運転していて、一度だけコツンとぶつけたことがあった。狭い道で自転車を追い越そうと端に寄ったら、電柱にサイドミラーが当たってしまったのだ。助手席に乗っていた私が文句を言うと、「ミラーが出っぱってるのが悪いんでしょ!」なんて憎まれ口をたたかれ、強気な母らしいと苦笑いしたのを覚えている。

text : まるも亜希子 [aheadアーカイブス vol.164 2016年7月号]
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Vol.70 サイドミラー・ロス

Vol.70 サイドミラー・ロス

でも、母の言葉にそうだそうだとうなずく私もいる。教習所に通っている頃には、ミラーで後方を確認するという行為がどんなに運転を難しくしているかを思い知った。とくに車庫入れの時なんて、ミラーを見ながらハンドルを切ると、必ず思った方向とは反対にバックしてしまってパニックに。

今だって、ミラーさえなければもっと寄せて停められるのに、と思うことは多いし、どうしても死角が残ることでヒヤッとする場面もあるし、必要だけれど全面的に信用はできない、ちょっと中途半端な存在がミラーだ。

ただ、デザインの一部としてのミラーは、そのクルマやオーナーの個性を表現しているようで昔から好きだった。20年くらい前はクラシックカーに乗っていたせいか、ミラーを好きな形のものに交換したり、色や模様を変えたりするのを楽しむ人が目についた。

最近では、ワールドカップ開催中にドイツを訪れると、サイドミラーにドイツ国旗柄のカバーをして走るクルマをたくさん見かけて、サッカー王国らしい楽しみ方だなと感心した。

日本のメーカーからも、ミラーをドレスアップするパーツはたくさん出ている。クルマ全体からすれば小さなパーツなのに、色や素材を変えると明らかに印象がちがってくる、女にとってのピアスみたいな存在がミラーなのかもしれない。

そんなミラーが近い将来、クルマから消える可能性が高まってきた。国土交通省が6月18日から、バックミラーやサイドミラーの代わりにカメラによるモニタリングシステムを備えた、「ミラーレス車」の製造を解禁したのだ。

狭い道ではジャマで、車庫入れでは不便なミラーだけれど、完全に無くすと言われるとなぜか素直に喜べない。カメラだけで、どこが映っているのか瞬時にわかるの? 暗い場所や強い陽射し、雨や雪でも映るの? メカに弱い人でも大丈夫? などと新たな心配をする自分がいる。

それに、デザインはどうなるのかとミラーレス車のコンセプトカーを見ると、どれもシュッとしてスマート。狭い道は通りやすそうだ。でもなんだか、イチゴがのってないショートケーキみたいに物足りなく思えるのも正直な気持ち。

果たしてミラーレス車は、女にとって歓迎すべきものなのか、どうなのか。

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まるも亜希子/Akiko Marumo
エンスー系自動車雑誌『Tipo』の編集者を経て、カーライフジャーナリストとして独立。ファミリーや女性に対するクルマの魅力解説には定評があり、雑誌やWeb、トークショーなど幅広い分野で活躍中。国際ラリーや国内耐久レースなどモータースポーツにも参戦している。

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