SUZUKI JIMNY & JIMNY SIERRA 日常で履くワークブーツ
更新日:2024.09.09
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多くのメディアが伝える通り、新型ジムニーの構成は伝統の二本立てだ。660㏄の直列3気筒ターボを搭載するのが「ジムニー」で、このシャシーに185幅のタイヤを納めるオーバーフェンダーを装着し、1.5リッター自然吸気エンジンを搭載したのが「シエラ」だ。そして試乗には、一般公道でシエラ(4AT)、オフロードにジムニー(5MT)が用意された。
text:山田弘樹 photo:長谷川徹 [aheadアーカイブス vol.190 2018年9月号]
text:山田弘樹 photo:長谷川徹 [aheadアーカイブス vol.190 2018年9月号]
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- 日常で履くワークブーツ
- スズキ ジムニー シエラ
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日常で履くワークブーツ
初対面したシエラには、男心を鷲づかみにするカッコ良さがあった。ジムニーと共用するキャビンは小さく直線的。そこにジムニーより片側で85㎜も張り出したフェンダーが、明確な差別化を主張してくる。
拡大された軽自動車枠の利点を活かし、パジェロ的SUVルックでより伸びやかに一般性をアピールした先代よりも明らかに無骨だが、媚びがない。見た目以上に驚かされたのは、静粛性の高さと乗り心地の柔らかさだった。
ただしその洗練が、クロカン性能を磨き上げた結果得られたものだというのも大いにくすぐられる。
ボディのそこかしこに増やされた吸音・遮音材効果は確かに高いが、悪路走行時のキックバック対策であるステアリングダンパーや、クロスメンバーを配置した新型ラダーフレームのねじり剛性向上、新設計マウントの品質が、オンロードでの質感をも上げているのだ。
拡大された軽自動車枠の利点を活かし、パジェロ的SUVルックでより伸びやかに一般性をアピールした先代よりも明らかに無骨だが、媚びがない。見た目以上に驚かされたのは、静粛性の高さと乗り心地の柔らかさだった。
ただしその洗練が、クロカン性能を磨き上げた結果得られたものだというのも大いにくすぐられる。
ボディのそこかしこに増やされた吸音・遮音材効果は確かに高いが、悪路走行時のキックバック対策であるステアリングダンパーや、クロスメンバーを配置した新型ラダーフレームのねじり剛性向上、新設計マウントの品質が、オンロードでの質感をも上げているのだ。
フレームの上に被さるボディの接合もよいのだろう。モノコック車なみに内装のキシミや低級振動が感じられないのも見事である。102psを発揮する1.5リッターには速さが全くない。が、面白いことに不満や遅さも感じない。自然吸気エンジンの良好なアクセル追従性を130Nmのトルクが後押しし、日常に不足ないスピードを提供するからだ。
いまどき4速!? とアタマを抱えたATはこのエンジンと共にシエラのおっとりした性格を形作っている。巧みなギア比でゼロ発進はスムーズ。今回高速走行は試せなかったが、シティムーバーとしては十分合格点だ。ちなみにシエラの車重は1090㎏と、フル装備したNDロードスター(6AT)と比べても30㎏重いだけなのだから、それも納得である。
いまどき4速!? とアタマを抱えたATはこのエンジンと共にシエラのおっとりした性格を形作っている。巧みなギア比でゼロ発進はスムーズ。今回高速走行は試せなかったが、シティムーバーとしては十分合格点だ。ちなみにシエラの車重は1090㎏と、フル装備したNDロードスター(6AT)と比べても30㎏重いだけなのだから、それも納得である。
唯一難点と感じたのは、悪路での操作性を重視したボール・ナット式ステアリングの緩慢さ。しかしこれも室内のレバーで駆動方式を4WDからFRとすることで、回頭性の良さを取り戻すことができてしまった。
真打ちであるジムニーは、定説に違わぬオフロード性能の持ち主だった。クラッチを断続しながらモーグルやぬかるみを走る緊張感があったのは、最初だけ。5速MTのフィールにはブレがなく、ターボの過給圧制御には柔軟性があり、アクセルを急に閉じても開けても過敏な反応がないため、積極的に96psのパワーを悪路へ伝えて行くことができる。
サスペンションは足が長く、前後のリジッドアクスルが粘り強く路面を捕らえる。新型ジムニー/シエラはオンロードでの乗りやすさを高めるべく車輪の空転を電子制御ブレーキで止めているが、小排気量ターボということもあり悪路からの脱出は割と深めに、思い切ってアクセルを踏み込まねばならない。このレスポンスに対してはやはりオプションのLSDがベストだが、車体の軽さと取り回しの良さが、多くをフォローしてくれた。
走れば走るほどジムニーとの一体感が増し、笑いが止まらなくなる。何度もオフロードを〝お代わり〟するうちに、どんどんジムニーが欲しくなってくる。とはいえ日常の生活にダートがない以上「買うならシエラだろうなぁ」なんて現実的な思いまでもが頭をよぎる。
真打ちであるジムニーは、定説に違わぬオフロード性能の持ち主だった。クラッチを断続しながらモーグルやぬかるみを走る緊張感があったのは、最初だけ。5速MTのフィールにはブレがなく、ターボの過給圧制御には柔軟性があり、アクセルを急に閉じても開けても過敏な反応がないため、積極的に96psのパワーを悪路へ伝えて行くことができる。
サスペンションは足が長く、前後のリジッドアクスルが粘り強く路面を捕らえる。新型ジムニー/シエラはオンロードでの乗りやすさを高めるべく車輪の空転を電子制御ブレーキで止めているが、小排気量ターボということもあり悪路からの脱出は割と深めに、思い切ってアクセルを踏み込まねばならない。このレスポンスに対してはやはりオプションのLSDがベストだが、車体の軽さと取り回しの良さが、多くをフォローしてくれた。
走れば走るほどジムニーとの一体感が増し、笑いが止まらなくなる。何度もオフロードを〝お代わり〟するうちに、どんどんジムニーが欲しくなってくる。とはいえ日常の生活にダートがない以上「買うならシエラだろうなぁ」なんて現実的な思いまでもが頭をよぎる。
……完全に魅了されてるじゃないか。それはジムニー/シエラが、紛れもなくホンモノだからだ。不思議なのはボクのようにジムニー/シエラを試乗しないでも、既に多くのひとたちがこれを指名買いして、納車3年待ちという状況になっていることだ。
それだけ今の人たちの情報感度が高いとは言えるけど、きっとこれまで積み上げてきたジムニーの実績に、このルックスと価格、そして世の中の価値観がピッタリ合ったのだと思う。
オトコってヤツは、ホンモノを手にすることに喜びを感じる生き物であり、それがジムニーなら、メルセデスGクラスのような夢物語じゃなくて現実になる。いやむしろ、今の時代ジムニーのコンパクトさは誇らしいミニマルだ。そんなイメージを消費者は、自然とかぎ取るものなのだろう。
それだけ今の人たちの情報感度が高いとは言えるけど、きっとこれまで積み上げてきたジムニーの実績に、このルックスと価格、そして世の中の価値観がピッタリ合ったのだと思う。
オトコってヤツは、ホンモノを手にすることに喜びを感じる生き物であり、それがジムニーなら、メルセデスGクラスのような夢物語じゃなくて現実になる。いやむしろ、今の時代ジムニーのコンパクトさは誇らしいミニマルだ。そんなイメージを消費者は、自然とかぎ取るものなのだろう。
スズキ ジムニー シエラ
車両本体価格:¥2,019,600(税込、JC、4AT)
エンジン:水冷4サイクル直列4気筒
総排気量:1,460cc
駆動方式:パートタイム4WD
車両重量:1,090kg
最高出力:75kW(102ps)/6,000rpm
最大トルク:130Nm(13.3kgm)/4,000rpm
燃料消費率(WLTC):13.6㎞/ℓ
エンジン:水冷4サイクル直列4気筒
総排気量:1,460cc
駆動方式:パートタイム4WD
車両重量:1,090kg
最高出力:75kW(102ps)/6,000rpm
最大トルク:130Nm(13.3kgm)/4,000rpm
燃料消費率(WLTC):13.6㎞/ℓ
スズキ ジムニー
車両本体価格:¥1,744,200(税込、XC、5MT)
エンジン:水冷4サイクル直列3気筒インタークーラーターボ
総排気量:658cc
駆動方式:パートタイム4WD
車両重量:1,030kg
最高出力:47kW(64ps)/6,000rpm
最大トルク:96Nm(9.8kgm)/3,500rpm
燃料消費率(WLTC):16.2km/ℓ
エンジン:水冷4サイクル直列3気筒インタークーラーターボ
総排気量:658cc
駆動方式:パートタイム4WD
車両重量:1,030kg
最高出力:47kW(64ps)/6,000rpm
最大トルク:96Nm(9.8kgm)/3,500rpm
燃料消費率(WLTC):16.2km/ℓ
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text:山田弘樹/Koki Yamada
自動車雑誌「Tipo」編集部在籍後フリーに。GTI CUPレースを皮切りにスーパー耐久等に出場し、その経験を活かして執筆活動を行うが、本人的には“プロのクルマ好き”スタンス。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。
text:山田弘樹/Koki Yamada
自動車雑誌「Tipo」編集部在籍後フリーに。GTI CUPレースを皮切りにスーパー耐久等に出場し、その経験を活かして執筆活動を行うが、本人的には“プロのクルマ好き”スタンス。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。