「ニッポンにはクラウンがあります」

アヘッド トヨタ クラウン

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さる6月26日に発売となったトヨタの第15代新型クラウンの販売が好調だ。月販目標4500台のところ、1カ月でその7倍弱の3万台の受注をしたという。もしかしてこの夏、クラウンが車名別の登録台数の統計で第1位に躍り出ることだってあるかもしれない。なぜこれほどの支持が得られたのか?

text:今尾直樹 [aheadアーカイブス vol.189 2018年8月号]
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「ニッポンにはクラウンがあります」

「ニッポンにはクラウンがあります」

新型クラウンは「初代コネクティッドカー」である。ニッポン人は初物に弱い!

加えて、あのカタチ。一見してアウディA6、いやジャガーXJ風だけれど、ヨーロッパの高級車と並んでも時代遅れ感がない。それでいて、正面からの写真を見ると、ああクラウンだな、と思わせる。「伝統と革新」には、手を出しやすい安定感と安心感がある。

価格は一番安い2ℓターボの460万6200円からで、ということは乗り出し500万円はする。そんなニッポンの高級車クラウンが飛ぶように売れているというのは1980年代末のバルブ期以来のことで、ようするに平成最後の御世の2018年いま、貧民化する元中流庶民に実感はないけれど、バブルが再来しているのだ。バブルとは無縁の筆者はさておき、高額商品がバンバン売れるのは不思議でもなんでもない。

もうひとつ、新型クラウン人気の要因として考えられるのは、われわれニッポン人は結局のところ、クラウンが好きだ、ということである。クラウンはいまや世界一を争う自動車メーカーに成長したトヨタのクルマづくりの原点であり、数少なくなってしまったニッポンの成功物語であって、豊田喜一郎、あるいはその先代の佐吉に始まり、いまもモリゾウこと章男によって演じ続けられている近代日本のサーガ、壮大な叙事詩の重要なプレイヤー、と考えられる。

国産乗用車をニッポン人の手でつくることを夢見た豊田喜一郎が創業したトヨタは、戦後、海外メーカーとの技術提携を選んだ日産、いすゞ、日野とは異なり、独自技術にこだわった。そうして1955(昭和30)年、主査の中村健也が中心となって開発したのが初代「観音開きのクラウン」だった。

それからすでに六十余年。現役で存続しているニッポン最古の自動車ブランドであるところのクラウンを否定することは、戦後ニッポンの歩みを否定することにもなりかねない……。

われわれニッポン人は、ほとんど無意識にサッカー日本代表やテニスの錦織 圭選手や大リーグの大谷翔平選手、イギリス人であるカズオイシグロにさえつい肩入れしてしまう人びとである。あなたもトヨタのル・マン制覇を待ち望んではいなかったか?

おそらく、である。「いつかはクラウン」は、もはやニッポン人のDNAに組み込まれているのではあるまいか!?

一度、血液検査してみたらどうでしょうか。右傾化した、ということではないと思いたい。

▶︎これまでのクーペ風スタイルを一気に先鋭化し、まるでリアゲートを持つのか、と思わせるぐらいにリアを寝かせた流麗なファストバックに6ライトのエクステリアをまとわせた。ヨーロッパの高級車と並んでも時代遅れ感のない、デジタルテクノロジーが支配する現代的なカタチに見える。(今尾直樹)

■TOYOTA CROWN
車両本体価格:¥6,906,600
(税込、RS Advance)
エンジン:V型6気筒 総排気量:3,456cc
最高出力:220kW(299ps)/6,600rpm
最大トルク:356Nm(36.3kgm)/5,100rpm
[モーター]最高出力:132kW(180ps)
最大トルク:300Nm(30.6kgm)
燃料消費率:17.8km/ℓ(JC08モード)
                  16.0km/ℓ(WLTCモード)

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text:今尾直樹/Naoki Imao
1960年生まれ。雑誌『NAVI』『ENGINE』を経て、現在はフリーランスのエディター、自動車ジャーナリストとして活動。現在の愛車は60万円で購入した2002年式ルーテシアR.S.。
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