Letter From Mom 夫と子どもとクルマたち Vol.14 電動ママチャリ・デビュー

アヘッド Letter From Mom

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この春、我が家に新しい乗りものが2台やってきた。1台は、3歳になった娘にプレゼントした12インチ自転車だ。夫も私も、3歳半にはもう補助輪ナシで自転車を乗り回していたので、そろそろいいだろうと思ったのだが、娘はどうも乗り気じゃない様子。私が欲しくて欲しくて買ってもらった子どもの頃とは大違いで、その後も数回乗っただけでほったらかしになっている。

text:まるも亜希子 [aheadアーカイブス vol.186 2018年5月号]
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Vol.14 電動ママチャリ・デビュー

Vol.14 電動ママチャリ・デビュー

それに比べて、もう1台の方は大活躍。夫がカタログや口コミ情報を比較検討して選んだ、ヤマハの電動アシスト自転車だ。もちろん後ろには娘用のチャイルドシートが付いている。

今までは、「あったら便利だろうなぁ」とは思いつつも、なんだかんだとクルマか徒歩+ベビーカーでどこへでも出かけていた。でも娘の幼稚園には駐車場がなく、歩くと15分。通常はバス通園だが、たまに送り迎えが必要な日もあり、それなら自転車がいいよねということで久々の自転車選びを楽しんだ。

が、私が自転車に乗るのは12年ぶり、いやもっとかもしれない。以前は普通のママチャリだったのが、今度は電動ママチャリだし娘を乗せるとバランス感覚も狂いそう。実は、ちゃんと乗れるんだろうかと不安もあったので、最初に乗った夫からインプレッションを聞き、注意事項を頭に叩き込んだ。こういうとき、ドライビングインストラクターをすることもある夫は教え方がうまく、頼もしい。

そのおかげもあって、たまに低速でグラっとして足をつくことはあっても、あとはスイスイと乗れるようになった。慣れてしまえば、自転車ライフはなんと快適なことか。今までクルマで行って駐車場待ちをしていたスーパーにも、すぐに入れる効率のよさ。娘も大喜びで乗ってくれるから、「ママの自転車で行こう」と言えばサッと出かけられてストレスフリー。よしよし、これで幼稚園の送り迎えも楽勝だ。

と思うのはまだ早かった。いよいよ当日、朝9時過ぎに幼稚園へと向かった私は、驚くべき光景に足がすくんだ。あちこちの路地から次々と走ってくる電動ママチャリが、幼稚園へと続く道を塞いでいたのだった。歩行者もクルマもいるし、電動ママチャリは幅をとるので追い抜くのもすれ違うのもひと苦労。

あちこちの神経を研ぎ澄まして進んでいかなければならないのは、まるで砂漠ラリーに出たときのようだ。でも何日かたつと、電動ママチャリ同士にはあ・うんの呼吸というか、暗黙のルールが出来上がっていることに気がついた。

前から電動ママチャリがきて、その途中に障害物があったら、瞬時に距離を測って先に到達する方に進路を譲る。信号待ちでは、横に並ばず後ろに続いて停まる。混み合った道でも接触や転倒が起こらないのは、そのおかげなのだろう。ただしそれは女性同士だけの話で、そのルールを乱すのは決まって男性が乗っている電動ママチャリ。わずかな隙間からグイグイ抜いてきてヒヤリとさせられる。

よく女性は「共感脳」、男性は「競争脳」だなんて言われるが、まさにそれだ。私はやっぱり女なんだなぁなんて、電動ママチャリに教えてもらった春だった。

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text:まるも亜希子/Akiko Marumo
エンスー系自動車雑誌『Tipo』の編集者を経て、カーライフジャーナリストとして独立。ファミリーや女性に対するクルマの魅力解説には定評があり、雑誌やWeb、トークショーなど幅広い分野で活躍中。国際ラリーや国内耐久レースなどモータースポーツにも参戦している。
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