埋もれちゃいけない名車たち vol.66 超高性能・超豪華 SUVの起源「ランボルギーニ・LM002」

アヘッド ランボルギーニ・LM002

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今や世界中でSUVが大ブーム。庶民的な小さなモノからラグジュアリーセダンも真っ青になる超高級なモノまでと、ひと昔前だったら想像もつかないほどの品揃えだ。そして昨年の12月、ザ・スーパーカー・メーカーとでも呼ぶべきランボルギーニが、〝ウルス〟というモデルを正式に発表した。

text:嶋田智之 [aheadアーカイブス vol.182 2018年1月号]
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vol.66 超高性能・超豪華 SUVの起源「ランボルギーニ・LM002」

vol.66 超高性能・超豪華 SUVの起源「ランボルギーニ・LM002」

650hpに850NmのV8ツインターボを搭載、静止状態から100㎞/hまで3.6秒で到達し、そのままアクセルを踏み続けたら305㎞/hに達するという、スーパーSUVだ。

砂利や砂の上を走ることも想定してるクルマにそこまでの高性能が必要か? なんて考えてしまうのはきっと僕の心が貧しいからであり、世の中には確実にこうしたクルマの需要はある。ベントレーのベンテイガが好評で、2019年のアストンマーティンDBXの登場だって待たれている。

こうしたクルマの起点はどこなのだろう? 元々は軍用としてスタートしているクロスカントリー・タイプの4WDモデルに豪華で上質なインテリアを初めて持たせたのがレンジローバーだから、そこを起点とすることもできるが、レンジはこんなふうに呆れるほど高性能だったりはしない。

ならば……? いや、灯台下暗しだった。同じランボルギーニのかつてのラインアップに、このカテゴリーの起点があるじゃないか。その名を〝LM002〟という。

1986年に発売が開始されたLM002だが、その企画がスタートしたのはもっと早く、1970年代半ばのことだった。アメリカ軍の制式採用を目指した、〝チーター〟という本格的な高機動車のプロトタイプがそれだ。結局は軍用車として日の目を見ることは叶わなかったが、ランボルギーニはそのコンセプトをエキゾチックカーに転用、幾つかのプロトタイプを経て、LM002へと発展させた。

チーターやそれまでのプロトタイプと異なるのは、エンジン搭載位置がミドシップからフロントへと変更になったこと、そして搭載エンジンがクライスラー製V8からカウンタック・クワトロバルボーレと同じ5.2リッターV12へと変更されたこと。450ps/51.0kgmのパワーとトルクは、鋼管スペースフレームにFRPとアルミのボディからなる2.7トンの車体を、200㎞/hオーバーへと導いた。

当然ながら本格的な4WDシステムを採用しており、そのミリタリー然としたルックスからは想像できないが、本革があしらわれた4人乗りの室内やエアコン、オーディオ、分厚いカーペットなどが装備されていた。

マルチパーパス+いかついルックス+超豪華+超高性能。オトコの好きなモノが全てつまったクルマの原形は、30年前にすでにできあがっていたのだ。けれど、ヒット作にはならなかった。生まれた時代が早かったのかも知れない。

ランボルギーニ・LM002

LM002は1986年にデビューしたランボルギーニ初のSUV。ゴージャスなインテリアや装備などを持つ、超高級SUVだ。が、その実は本格的オフローダーとしても機能する荒れ地のスーパーカーと呼べる側面も持ち、砂漠などでの使用を考慮したエアクリーナー、酷暑対策の大型ラジエター、パンクしても走行可能なピレリと共同開発の専用タイヤ、航続距離を増やすための290ℓタンクなど、真剣に開発されたモデルであることを伺わせる。産油国の王族などを顧客に1993年までに300台ほどが生産された。

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text:嶋田智之/Tomoyuki Shimada
1964年生まれ。エンスー系自動車雑誌『Tipo』の編集長を長年にわたって務め、総編集長として『ROSSO』のフルリニューアルを果たした後、独立。現在は自動車ライター&エディターとして活躍。
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