目指せ!カントリージェントルマン VOL.5 ココロとカラダの冬支度

アヘッド ココロとカラダの冬支度

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締め切りの期間は、一日中家から出ない、というか敷地から出ない日が多い。昼間、薪を運ぶために外に出るとリスとスズメとメジロとムクドリとトンビとカマキリたちと一斉に目が合う。少し前はクワガタとシマヘビも日向ぼっこしていた。

text:吉田拓生 [aheadアーカイブス vol.181 2017年12月号]
Chapter
VOL.5 ココロとカラダの冬支度

VOL.5 ココロとカラダの冬支度

本格的な冬の入りを迎えた今、野生の彼らは忙しいのだ。リスはクルミを、スズメとメジロは路上でつぶれたスダジイのドングリを、トンビはカマキリを、ムクドリは菜園のハクサイを、それぞれ狙っている。

ムクドリはあまりに情け容赦がないので、今年ハクサイにはネットを掛けた。すると今度はブロッコリーの葉を啄ばんでいるわけだが、まあ少しくらいはくれてやる。我が家族も、彼らと一緒に森で生きる一員なのだから。

仕事部屋の窓からリスがクルミを割っている様子が見える。彼らはひたすらクルミの合わせ目を前歯で削り、半分に割って実を食べる。落ちている殻の中には腹の部分に穴が開けらているものもあり、これは野ネズミの仕業だ。目の前には一切姿を現さないが、夜行性の彼らもまたフクロウに怯えながら生活している。

弱肉強食という言葉には弱い者いじめのようなイメージもあるがそれは食物連鎖のことであり、それがあってはじめて世の中が成立する。人間だって、誰よりも盛んにあらゆるものを口にしているのだが、「命を奪って食べている」という意識がゼロに近いだけなのである。

改めて考えるまでもないが、現代人の暮らしは利便性を追求し、季節や天候や食物の偏りを均すことで成立している。冬だからと言ってたくさん食べる必要もなく、むしろおいしい冬の味覚で太らないように気を付けるくらい。冬仕度と言っても衣替えくらいだろうか。
クルマに関しては冬タイヤへの交換を欠かさないという人も多いと思う。暮らしと同じように年々便利になっていくカーライフにあって、半期に一度のタイヤの交換はけっこう面倒くさい。使わないタイヤの置き場のこともあるし。

なんて言っていたら、我が家のクルマは今年、グッドイヤーのオールシーズンタイヤ、「ベクターフォーシーズンズ」に替えてしまったので、ただでさえ少ない冬支度がまたひとつ減ってしまった。まだこのタイヤで雪道は試していないのだが、静粛性と乗り心地はすこぶるいい。

今後オールシーズンタイヤの知名度が高まれば、たまにしか雪が降らない地方の冬タイヤの勢力図が塗り替わるかもしれない。
個人的な冬の入りは、師の薪割りを手伝うことから始まる。標高1,400mの高地に住む自然派作家、田渕義雄さんの庭に、氏のライフスタイルに心酔するチェンソー遣いが集まり盛大に薪割りパーティを催すのである。僕もメンバーのひとりとして氷点下の高原でTシャツ1枚になって汗をかき、古典的労働に勤しむ。

普段まるで友達付き合いのない僕にとってこれは貴重な機会であり、改めて労働と同好の志がもたらす人生の喜びに浸る。と同時に自給自足的ライフスタイルの発信者である田渕さんの菜園や自宅、木工作品をつぶさに観て、自らの怠惰な生活を律するためのヒントをもらうのだ。

今年の冬はいつもより薄着で過ごしてみようと思っている。そうやって冬の寒さをより強く感じることで得られる温かさやおいしさも、確実にあるからである。

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text:吉田拓生/Takuo Yoshida
1972年生まれのモータリングライター。自動車専門誌に12年在籍した後、2005年にフリーライターとして独立。新旧あらゆるスポーツカーのドライビングインプレッションを得意としている。東京から一時間ほどの海に近い森の中に住み、畑を耕し薪で暖をとるカントリーライフの実践者でもある。
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