耳出しヘルメットの是非を問う

アヘッド ヘルメット

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バイクに乗る時のヘルメット着用義務は、時代に応じて道路交通法が見直され、'75年(政令指定道路を走行する51㏄以上)、'78年(すべての道路での51㏄以上)、'86年(原付も含めたすべてのバイク)と段階的な規制強化を経て、浸透してきた。

text:伊丹孝裕 [aheadアーカイブス vol.180 2017年11月号]
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耳出しヘルメットの是非を問う

耳出しヘルメットの是非を問う

では、そのヘルメットの基準はいかに定められているのか? さぞ厳格な規定があるのかと思いきやこれが意外なほど緩く、同法第2章の3「自動車等の運転者の遵守事項」の第9条の5にはこう記載されている。

①左右、上下の視野が十分とれること
②風圧によりひさしが垂れて視野を妨げることのない構造であること
③著しく聴力を損ねないこと
④衝撃吸収性があり、かつ帽体が耐貫通性を有すること
⑤衝撃により容易に脱げないように固定できるあごひもを有すること
⑥重量が2㎏以下であること
⑦人体を傷つけるおそれがある構造ではないこと

という7項目に過ぎず、しかも「十分」、「著しく」、「有する」、「おそれ」といった文言はいかようにも取れる。ゆえに、工事現場用のヘルメットを被ってスーパースポーツに乗っていても即違反とは言えず、たとえそれがナベであっても重量2㎏以下で、あごひもが付いていれば、その場で衝撃吸収性や耐貫通性の無さを判断できないのが現状なのだ。

もちろんこれは極論だとしても、このところ安全性に対する意識の2極化が進んでいる感は否めない。胸部プロテクターやエアバッグの認知が進んでいる一方、ふた昔前のようなルーズなヘルメットやウェアが再び目立つようになったからだ。

中でも、耳が露出したヘルメットで乗ることをよしとする雑誌やテレビは以前よりも増えた印象がある。もしもの時に脱げやすく、そうでなかったとしても損傷の部位が格段に増える可能性があるそれは、顔がよく見えることもあって芸能人を起用したテレビ番組やファッション系雑誌で多く見られ、ここ数年で盛り上がったカスタム文化の自由なイメージともリンクする。気軽さと無頓着さを履き違えてしまっている一例だ。

ただし、ヘルメットメーカー自身はそんな風潮に左右されず、真摯な姿勢でモノ作りに励んでくれていることが救いだ。大手メーカーの製品には例外なく消費生活用製品安全法(PSG)や製品安全協会(SG)の基準をクリアしたマークが貼られ、さらに厳しいJISやSNELLの規格も率先して取り入れるなど、安全性へのこだわりはストイックそのもの。

ファッション性を意識したクラシックスタイルのヘルメットでもそれは変わらない。

なにを基準に選ぶか。後はライダーの意識に委ねられている。
●アライ「クラシックMOD」
軽量・コンパクトでありながら、アライ独自の素材「スーパーファイバー」仕様のシェル(帽体)により耐貫通性試験ではJIS規格を上回るスネル規格と同等の3m耐貫通テストをクリアする高い安全性能を確保。またかぶりやすさと快適性を追求した内装「エコピュアー」により抗菌・消臭・防汚機能も向上している。www.arai.co.jp 
価格:ソリッドモデル ¥29,160(税込)
   グラフィックモデル ¥35,640(税込)
●SHOEI「J・O(ジェイ・オー)」
ファッションの一部として溶け込むことを重視しつつ、安全性と快適性を研究した結果がJ・O専用設計のシールド(CJ-3)だ。その形状と開閉角度はメガネやサングラス、ライダーの顔への干渉を避けながらも巻き込みを最小限に抑えることを重視してデザインされている。JIS規格。
http://jp.shoei.com
価格:¥34,560(税込)

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text:伊丹孝裕/Takahiro Itami
1971年生まれ。二輪専門誌『クラブマン』の編集長を務めた後にフリーランスのモーターサイクルジャーナリストへ転向。レーシングライダーとしても活動し、これまでマン島TTやパイクスピーク、鈴鹿八耐を始めとする国内外のレースに参戦してきた。国際A級ライダー。
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