F1ジャーナリスト世良耕太の知られざるF1 Vol.49 チームメイト同士の闘い

F1ジャーナリスト世良耕太の知られざるF1 Vol.49 チームメイト同士の闘い

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F1はドライバーが腕を競う競技であると同時に、チームの技術力を問う戦いでもある。'13年まで4連覇したレッドブルがいまひとつ精彩を欠く一方、メルセデスAMGが他を圧倒する速さを見せつけているのは、チームの技術力の差だ。

text:世良耕太 [aheadアーカイブス vol.138 2014年5月号]
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Vol.49 チームメイト同士の闘い

Vol.49 チームメイト同士の闘い

▶同じ戦闘力のマシンをドライブするため、レースではチームメイトどうしの争いになることが多い。写真は第3戦バーレーンGPでのハミルトン(前)とロズベルグ。チャンピオン獲得(2008年)経験が物を言うのか、メルセデスAMGのチームメイト対決はこれまでのところハミルトンに軍配が上がっている。第4戦中国GPの最終周で17番手に上がった小林可夢偉だったが、チェッカードフラッグが規定の1周前に振られる珍事が起きたため、最終週の順位変動は無効となり、リザルト上は18位となった。


「最大のライバルはチームメイト」とは、F1に限らずモータースポーツでよく耳にするフレーズだ。下位が常連のチームに属するドライバーは、いくら頑張っても上位チームを相手に互角の勝負に持ち込むことはできない。

残酷ではあるが、チームどうしの技術力の差は、ドライバーどうしの腕の差より大きいからだ。となると、ドライバーが自身の存在感を示す効果的な方法は、チームメイトとの勝負に勝つことになる。これは、下位チームに属するドライバーだけでなく、上位チームのドライバーにも言える。

ところがチームの立場に立ってみると、チームメイトどうしで争われては困るのだ。争った末にぶつかりでもし、2台がともにリタイヤしたのでは、チームの成績を考えるうえで絶望的だからだ。

第3戦バーレーンGPの決勝レースでは、メルセデスAMGのL・ハミルトンとN・ロズベルグの両ドライバーが終盤にトップ争いを演じることになった。無用な衝突を避けるため、2番手のロズベルグ選手に対して「攻めるな」と指示することは可能だったが、チームはチームメイトどうしの争いを許した。

両ドライバーに対し「クルマを無事にゴールまで運んでくれ」と無線を通じて伝えたのである。「争ってもいいが、無茶はするな」という意味だ。ふたりは相手にダメージを与えることなく、クリーンなファイトを演じた。

第4戦中国GPの決勝では、過去4年連続でチャンピオンを獲得しているレッドブルのS・ベッテルが、新入りのD・リカルドに追い上げられた。ペースは明らかにリカルドが勝っていた。競争するのは自由だが、リカルドが無理に仕掛け、ベッテルが執拗に防御すればお互いがダメージを負いかねない。

そこでチームはベッテルに対し、「リカルドを前に行かせろ」と指示を出した。ベッテルは「なんで、譲らなければいけないんだ」と抵抗したが、最終的にはリカルドに道を譲った。リカルドの方がフレッシュなタイヤを履いていたためペース的に有利だったのだが、ベッテルにとれば屈辱だったろう。逆にリカルドにとれば、自分の実力をアピールする格好の展開になった。

同じレースの最終周、ケータハムの小林可夢偉はマルシアのM・ビアンキを追い抜いて17番手に上がった。チームメイトを置き去りにするだけでなく、実力が拮抗するチームに後塵を浴びせることで、存在感を示した格好だ。

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text:世良耕太/Kota Sera
F1ジャーナリスト/ライター&エディター。出版社勤務後、独立。F1やWEC(世界耐久選手権)を中心としたモータースポーツ、および量産車の技術面を中心に取材・編集・執筆活動を行う。近編著に『F1機械工学大全』『モータースポーツのテクノロジー2016-2017』(ともに三栄書房)、『図解自動車エンジンの技術』(ナツメ社)など。http://serakota.blog.so-net.ne.jp/
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