現代のスーパーカー vol.6 現実世界から仮想空間へ「GT by CITROEN」
更新日:2024.09.09
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多くの人はスーパーカーを〝自分には運転することが叶わないクルマ〟と思っているかも知れない。「そんな夢のないことをいわずに」と檄を飛ばすのが僕の役目なのかも知れないが、冷静に考えてみれば、クルマ1台に2000万円だ5000万円だ1億円だなんてのがリアリズムの対極にある話なのは確かだろう。
text:嶋田智之 [aheadアーカイブス vol.116 2012年7月号]
text:嶋田智之 [aheadアーカイブス vol.116 2012年7月号]
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- vol.6 現実世界から仮想空間へ「GT by CITROEN」
vol.6 現実世界から仮想空間へ「GT by CITROEN」
▶︎2008年に発表されたGT by シトロエンは、本文中にもあるようにヴァーチャルな世界をハイスピードで走るために開発されたスーパーカー。ショーに展示されたのはその“レプリカ”的存在とはいえ、もちろん走行に耐えうるレベルの作り込みがなされてる。発表と同時に世界中の裕福なファンから販売のオファーが相次いだが、シトロエンは最終的にそれらを全て断った。モニター外に存在して走ることができる車両は、象徴としてのこの個体1台のみ。クルマ好きにとって、何ともロマンティックな話じゃないか。
ところが、途方もないミリオネアにも平穏な庶民にも全く平等なスーパーカーというのが存在する。2008年のパリ・サロンで公開されて世界中の話題をさらった、GT byシトロエンがそれだ。
このクルマの登場はちょっとしたセンセーションだった。フランスの主要新聞がこぞって第1面でデカデカと採り上げたほどだったのだ。
理由は大きくふたつ。昔から独創的かつ前衛的なクルマ作りを貫いてきたシトロエンが初めてスーパーカーを手掛けたこと。そしてモーターショーに展示された実車が、もちろんランニングコンディションだったものの、実はデジタル空間を疾走するために開発されたクルマのレプリカ的存在だったこと。
つまり世界でシリーズ累計6500万本近くを販売しているプレイステーション用レースゲーム、いや、むしろ超リアルなドライビングシミュレーターと呼ぶべき『グランツーリスモ』シリーズの中で走らせるマシンとして設計・開発がなされ、それをモニターの外へと引っ張り出したのがこのクルマ、というわけなのだ。
ところが、途方もないミリオネアにも平穏な庶民にも全く平等なスーパーカーというのが存在する。2008年のパリ・サロンで公開されて世界中の話題をさらった、GT byシトロエンがそれだ。
このクルマの登場はちょっとしたセンセーションだった。フランスの主要新聞がこぞって第1面でデカデカと採り上げたほどだったのだ。
理由は大きくふたつ。昔から独創的かつ前衛的なクルマ作りを貫いてきたシトロエンが初めてスーパーカーを手掛けたこと。そしてモーターショーに展示された実車が、もちろんランニングコンディションだったものの、実はデジタル空間を疾走するために開発されたクルマのレプリカ的存在だったこと。
つまり世界でシリーズ累計6500万本近くを販売しているプレイステーション用レースゲーム、いや、むしろ超リアルなドライビングシミュレーターと呼ぶべき『グランツーリスモ』シリーズの中で走らせるマシンとして設計・開発がなされ、それをモニターの外へと引っ張り出したのがこのクルマ、というわけなのだ。
低くワイドなボディは、いかにもシトロエンといった風情のオリジナリティ溢れるスタイリング。燃料電池による電動システムを持ったミドシップ4WDで、最高出力は何と788psを発揮する。0→100㎞/h加速タイムは3.6秒、最高速度は330㎞/hと、充分にスーパーな領域だ。
僕達は普通なら体験できないその世界を、挙動が実車に酷似してることからプロのレーシングドライバーさえも練習のためにプレイする『グランツーリスモ』のテクノロジーを通じて、満喫することができるわけだ。
このクルマをデザインし、プロジェクトそのものを企画段階から引っ張ってきた事実上の立役者は、シトロエンの日本人デザイナーである山本卓身さん。彼の発案は『グランツーリスモ』シリーズのプロデューサーであるポリフォニー・デジタル代表の山内一典さんとが手を添えることで大きく膨らみ、それをシトロエンが全面的にバックアップしたかたちだ。
世界中のクルマ好きに大きな夢を贈りたい─。それを実行に移すことのできる人達が、それぞれの持てるチカラを出し合って完成した、これは〝皆のためのスーパーカー〟なのである。
実際にモニターの中で走らせてみると、速い。ただごとじゃなく速い。そして男らしく、ちょっとだけ暴れん坊だ。そんなところまでハッキリと判る。無論、楽しい。何とも凄い世界もあったものである。しかもそれは手を伸ばせば楽に届く、僕達のすぐそばにあるのである。
僕達は普通なら体験できないその世界を、挙動が実車に酷似してることからプロのレーシングドライバーさえも練習のためにプレイする『グランツーリスモ』のテクノロジーを通じて、満喫することができるわけだ。
このクルマをデザインし、プロジェクトそのものを企画段階から引っ張ってきた事実上の立役者は、シトロエンの日本人デザイナーである山本卓身さん。彼の発案は『グランツーリスモ』シリーズのプロデューサーであるポリフォニー・デジタル代表の山内一典さんとが手を添えることで大きく膨らみ、それをシトロエンが全面的にバックアップしたかたちだ。
世界中のクルマ好きに大きな夢を贈りたい─。それを実行に移すことのできる人達が、それぞれの持てるチカラを出し合って完成した、これは〝皆のためのスーパーカー〟なのである。
実際にモニターの中で走らせてみると、速い。ただごとじゃなく速い。そして男らしく、ちょっとだけ暴れん坊だ。そんなところまでハッキリと判る。無論、楽しい。何とも凄い世界もあったものである。しかもそれは手を伸ばせば楽に届く、僕達のすぐそばにあるのである。
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text:嶋田智之/Tomoyuki Shimada
1964年生まれ。エンスー系自動車雑誌『Tipo』の編集長を長年にわたって務め、総編集長として『ROSSO』のフルリニューアルを果たした後、独立。現在は自動車ライター&エディターとして活躍。
text:嶋田智之/Tomoyuki Shimada
1964年生まれ。エンスー系自動車雑誌『Tipo』の編集長を長年にわたって務め、総編集長として『ROSSO』のフルリニューアルを果たした後、独立。現在は自動車ライター&エディターとして活躍。