忘れられないこの1台 vol.69 KTM 125 DUKE

アヘッド 忘れられないこの1台 vol.69 KTM 125 DUKE

※この記事には広告が含まれます

KTMのDUKE(デューク)シリーズは、オフロードバイクメーカーとして名高いKTMが考えるロードモデルとして登場した。モタードとネイキッドを融合したようなスタイルは、軽快なハンドリングでライディングの自由度が高い。本文に登場する125ccをはじめ、200cc・390ccと、基本的に同じサイズのフレームで作られている。

text:サトウマキ [aheadアーカイブス vol.147 2015年2月号]
Chapter
vol.69 KTM 125 DUKE

vol.69 KTM 125 DUKE

忘れられないといっても、まだ年代も若く、現行車として自分の元でバリバリに現役として活躍している1台なのだが……。この125DUKEのコンセプトモデルが登場したのが2009年。

スタントバージョンとレースバージョンという2モデルが発表され、スタンドバージョンのプラモデルの下地に使われるサーフェーサーを塗りっぱなしにしたようなグレーの濃淡に蛍光グリーンをアクセントに使ったなんとも前衛的なカラーリングに一目惚れをした。

キスカデザインのバイクらしからぬフォルムに惚れ、白黒縦目の690DUKEを愛車にしていただけに、フォルムはおとなしめなものの、その個性的でクールなスタイリングはまさに、自分の琴線に触れる衝撃的なものだったのだ。

だが、翌年の2010年にニューモデルとして発表されたのは、オレンジと黒をベースにした、コンセプトで発表していたもうひとつのレースバージョンをモディファイしたもののみだった。フレームも黒だし、見た目が普通のバイクになってしまったなぁ、と正直ちょっとだけがっかりしていた。

そんな中、とある男の一言がこのバイクを忘れられない一台にした。

「125㏄なら、いじり放題じゃん。フレームなんて塗っちゃえばいいし、気軽に遊べるんじゃね?」と。

それは、枻(エイ)出版社に勤めていた頃の同僚であり、ライダースクラブの編集長だった故キャプテン竹田津、その人の言葉だった。人の背中を押すのが上手いというか、散財は男のロマンだ! なんて言い訳を豪語する永遠の少年だった。
125DUKEの試乗車が日本に来たのが2011年の4月。袖ケ浦で行われたプレス試乗会で編集部の面々からお墨付きをもらい、後は入荷を待つばかり。フレームを何色にしようか、コンセプトモデルのようにクールに仕上げるべき妄想を膨らませていた6月……、あの事故が起こった。キャプテン竹田津が帰らぬ人となってしまったのだ。

7月の頭に第一便で届いた125DUKEはバイク屋に届いたその瞬間に全バラにされ、たくさんの方の協力により、キャプテンの愛機であったDB5カラーに仕上げられた。どうせフレーム下ろすなら全バラ確定だし、オールペンしちゃえっ! と。キャプテンの言葉通りに、当時の感情の勢いのままに作り上げたのだ。

編集部は違えどバイクチームとして、歳の近い同僚としてこれから進んでいく道を相談し合うような、そんなかけがえのない〝悪友〟だったキャプテンの存在をなにかに刻みたい一心と、リスペクトの意を込めて……。タイミングという必然によって生まれた、絶対に忘れられない一台となってしまったのだ。

---------------------------------------
text:サトウマキ/Maki Sato
ファッション専門誌からバイク専門誌の編集部に転職した異例の経歴を持つ。現在はフリーランスのエディター&ライター。30代でバイクの免許を取得した。遅咲きながら、バイクへの情熱は人一倍、勉強熱心で努力家。ライディングの美しさには定評がある。
【お得情報あり】CarMe & CARPRIMEのLINEに登録する

商品詳細