クルマと音の関係性

アヘッド 車と音

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クルマの中の〝音〟というのは、無意識だとあまり気にならないが、意識した途端にその〝音〟ばかり気になってしまうという経験をしたことはないだろうか。

text:神谷朋公 [aheadアーカイブス vol.153 2015年8月号]
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クルマと音の関係性

クルマと音の関係性

●マツダCX-3
車両本体価格:¥2,808,000
(XD Touring L Package 2WD 6MT、税込)
排気量:1,498cc
最高出力:77kw(105ps)/4,000rpm
最大トルク:270Nm(27.5kgm)/1,600-2,500rpm


7月上旬、マツダ「CX-3」の北海道ロング試乗会に参加し、NVH性能開発部の担当者に話を伺うことができた。聞き慣れないNVHとは、Nはノイズ、Vはヴァイブレーション、Hはハーシュネス(路面からステアリングやシート、フロアに感じる振動)のことで、この部門は、クルマから発生するノイズや振動などを計測し、ドライビングに必要な音は残しつつ不快な音を取り除く研究をしているという。

まずエンジン単体で振動、音を分析し、その後車体に載せた状態で振動や音を作り込んでいく。まるで楽器を調律するようだ。「エンジン」、「車体」といった開発部門を越え、人の感覚で音作りを行なっている。

ロードスターのようなスポーツカーは、ドライバーポジションからマフラーエンドまでの距離が近いので音を作りやすい。スポーツカーだからこそ、エンジンサウンドが耳に届かないと楽しさが半減してしまう。

いっぽう、CX-3はスポーツカーには分類されないクルマなので、快適で心地よい音を作るのが一番難しいのだという。騒がしいと快適さがなくなり、まったく無音や無振動でもインフォメーションやフィーリングが伝わらずダメ。非常に難しい。
▶︎本来中空であるピストンピンの中に、「ナチュラル・サウンド・スムーザー」を組み入れて振動を打ち消す世界初の技術。これによりディーゼルエンジン固有のノッキングと音を低減させている。


話の中で特に印象に残ったのは『ナチュラル・サウンド・スムーザー』と呼ばれる部品をエンジン内部のピストンピンの中に組み入れる技術だ。ディーゼルエンジン固有のカラカラというノッキング音は、ピストンとコンロッドが3500Hzの共振周波数で伸縮振動していることによるもの、と突き止めたという。

この部品、中空となっているピストンピンの中にダンパー機構を持った〝重り〟のようなパーツを圧入。この重りが上下に僅かに振れるピストンの振動を打ち消す仕組みだ。

同じ周波数の振動物を加えることで、元の振動を打ち消すという原理を利用しているという。これらが可能になったのは、原因となる共振を、どの部分がどのように振動して起こるかを明らかにできたことが大きい。

走行中のクルマの中には、エンジン音やロードノイズ、風騒音など様々な要因で音がたくさん発生している。それらの音をどのレベルに設定して市販車にするか。非常に難しくなかなか日の目を浴びにくい仕事だが、やりがいのある仕事だと語ってくれた。

実際にCX-3のディーゼルエンジンを試乗したが、音楽を聞きながら普通に会話ができ快適に過ごすことができた。言われなければディーゼルと分からないレベルの音だが、まったく無音でもない。アクセルを踏み込めば、インフォメーションが伝わってくる。

恥ずかしながら、今までエンジン音は大きければカッコイイと思っていたし、音なんか気にしていなかった。今回の試乗会で音の大切さに気付かされた。音を作り込むメーカーの姿勢が、ブランドイメージに直結する。今一度クルマの音に耳を傾けてみてはどうだろうか。

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