クラッチスタートシステムが広まった理由は何だったのか?

安全対策としてのクラッチスタートシステム…

クラッチ

ニュートラルに戻してエンジン停止させたつもりで、再始動しようとセルを廻したら「ギアが入っていた」という場合、サイドブレーキを引いていてもクルマは「ガクガクガク…」と前に進んでしまう…。そんな経験がMT車に乗っている方ならあろうと思います。また急坂で停車させる際に、下がっていかないように「ギアを入れておく」こともあると思いますが、こうした場面でも同様にやってしまう事があるでしょう…。

これは非常に危険な事になってしまいます。ドライバーが乗車していればすぐにブレーキを踏むなどで、その後のクルマの挙動を押さえる事ができますが、もし後付の「リモコンエンジンスターター」、あるいは「窓から手を伸ばしてエンジンをかける」、といったクルマから離れた状態で行った場合、サイドブレーキをかけていたとしても、クルマが勝手に動き出してしまう…という事態が起こりうるのです。

実際、これによる事故が多発、1999年 (平成11年) 7月以降の新車MT車にはこのクラッチスターターの装備が義務付けられたのです(ただし積載量2トン以上のトラック、特殊自動車などの例外もある)。

クラッチスターターのメリット・デメリット

このシステムはスターターモーター(セルモーター)の電気回路をクラッチペダルに連動させ、踏み込んだ際に通電するシンプルな仕組み。しかしこれにより、前述のような誤発進のリスクは回避できるので、大きな安全性のメリットがあります。

デメリットといって良いかわかりませんが、これにより出来なくなったのが教習所で習う「エンジン停止した場合のセルモーターでの踏切からの脱出」です。恐らく以前免許を取得した方は「ギアを入れてセルモーターを回し、その力で強引にクルマを動かし線路から脱出する」という風に習った事と思います。

その為、クラッチスタートシステム搭載車の説明書には「車を置いたままなるべく早く線路内から退避し、踏切の非常ボタンを押す (あるいは発炎筒を焚く、赤色灯を振るなど)」などといった対処方法が記載されているようです。

リモコン式エンジンスターターの弊害…

現在も、クルマに乗らなくともエンジンをリモコンで始動させることのできるエンジンスターターが販売されています。出発前の暖気を事前に行う、車内の空調を事前に調整できる、といったメリットはあります。確かにパーキングロックがしっかりでき、かってに動き出すリスクの低いAT車には有用なアイテム。

しかしヒューマンエラーでギアが入ってしまっている事もあるマニュアル車には決して適したアイテムではありませんでした。クラッチスタートシステムの義務化もこのリモコンスターターによる事故発生によるもの。現在ではMT車用のエンジンスターターは製造中止になっているようです。またショップでも取り付けを拒否されるかと思われます。

もちろん、DIYでも取り付けしようと思えば行う術もあるでしょうが、クルマの暴走…といったリスクが存在する以上、その取り付けは止めた方が良い、と言えるでしょう。クラッチスタートシステムを「キャンセル」するカスタムもありますが、先に述べたような「リスク」がある以上、決して奨められるものではありません。

少し煩雑でも、エンジン始動時にクラッチを踏むという行為は安全のために必要な「儀式」と言えるかもしれませんね。

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