車の合成皮革はここまで進化!高級車も採用するワケ?

日産 フーガ
レザーインテリアというものは、かつて高級乗用車の証にようなもので、現在でもほとんどの高級乗用車には、標準もしくはオプションで選択できるようになっています。しかし、最近はやや事情が変わり、合成皮革もかなり品質を上げ、本革に負けない質感を持つようになりました。今回は、本革と合成皮革について取り上げます。

CARPRIME編集部

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Chapter
本革シートの手入れ、実は思ったより難しくない?
進化する合成皮革、もはや「安価な代替品」ではない
「あえて合成皮革を選ぶ」という選択肢と、知っておくべき耐久性の真実
かつて存在したMB-TEXは最強の合成皮革!?

本革シートの手入れ、実は思ったより難しくない?

高級車の本革シートが持つ上質な風合いは、多くのドライバーの憧れです。しかし、「天然素材だからデリケートで、細かなメンテナンスが大変」というイメージが先行しがちです。確かに、手入れを怠ると劣化が進み、硬化やひび割れが生じる可能性はあります。

しかし、ここで知っておきたい重要なポイントがあります。自動車のシートに使われる本革は、一般的な革製品とは異なり、車内の過酷な環境(高温、紫外線、摩擦)に耐えるための特殊な表面保護コーティングが施されているのです。

このコーティングのおかげで、実は日常的なメンテナンスは非常にシンプルです。基本は固く絞った柔らかい布での水拭きと、その後の乾拭きで十分とされています。一般的な革製品の手入れで使われる保革油(オイル)は、コーティングに浸透しにくく、むしろ座面を滑りやすくしてしまう可能性があるため、自動車シートには推奨されません。つまり、特殊な加工が施されているからこそ、意外と手間をかけずに美しさを保つことができるのです。

進化する合成皮革、もはや「安価な代替品」ではない

かつては「ビニールレザー=安っぽい」というイメージが根強かった合成皮革ですが、近年の技術革新により、その品質は劇的に向上しました。ぱっと見では本革と見分けがつかないほど質感の高い素材も登場し、高級車でも積極的に採用されるようになっています。

例えば、日産がかつて販売していた高級セダン「シーマ(Y51型)」では、グレードに応じた戦略的な素材の使い分けが見られました。ベースグレードには「ネオソフィール」という高品質な合成皮革と布地を組み合わせたコンビシートが標準採用され、しっとりとした質感と快適性を両立していました 。一方で、上級グレードにはより高価なセミアニリン本革シートが標準装備されており 、顧客の求める価値に応じて最適な素材が提供されていました。

このように、最近の車では本革シートを選んでも、身体が直接触れないサイド部分などには高品質な合成皮革が併用されることは珍しくありません。これは単なるコスト削減ではなく、それぞれの素材が持つ特性を適材適所で活かす設計思想の表れと言えるでしょう。

「あえて合成皮革を選ぶ」という選択肢と、知っておくべき耐久性の真実

合成皮革の性能向上に伴い、「あえて合皮を選ぶ」というユーザーも増えています。特にカスタムカーの世界では、加工のしやすさや豊富なカラーバリエーション、本革より安価である点などが評価されています。また、汚れを水拭きだけで簡単に落とせる手軽さも、日々の使い勝手を重視するユーザーにとって大きな魅力です。

ただし、「耐久性」については、「合成皮革」という言葉で一括りにするのは注意が必要です。

一般的に流通している安価な合成皮革(特にポリウレタン製)には、空気中の水分と化学反応を起こして表面がボロボロになる「加水分解」という避けられない劣化現象があり、寿命は3年~5年程度とされることがあります。


一方で、自動車メーカーが純正採用する高品質な合成皮革や人工皮革は、この問題を技術的に克服しています。特殊な樹脂を使用することで加水分解への耐性を極限まで高め、10年以上の使用にも耐えうるように設計されています。レクサスの「L-tex」やBMWの「センサテック」などがその代表例で、これらはもはや単なる代替品ではなく、耐久性やメンテナンス性において本革を凌駕することもある高性能素材なのです。

 
結論として、現代のシート選びは、本革の持つ伝統的な高級感と、技術の粋を集めた高性能な合成素材が持つ実用性や機能性を天秤にかけ、自身のライフスタイルに合ったものを選ぶ時代になったと言えるでしょう。

かつて存在したMB-TEXは最強の合成皮革!?

過去には、メルセデス・ベンツが「MB-TEX」と呼ばれる優れた合成皮革素材を内装に採用していたこともあります。これは1985年から1995年にかけて生産されたEクラス(W124)や190Eなどに用意されたオプションで、本革ではなく本革の質感を持つ高品質なビニール素材でしたが、その見た目は非常に精巧で、一見しただけでは本革と見分けがつかない代物でした。知識のない販売店が中古車を「本革シート装備」と誤って売ってしまった例もあるほどです。

このMB-TEXは耐久性も抜群で、「ほとんど破壊不可能」と評されるほどでした。タクシー用途で酷使されてもへたらず、汚れも水拭きで簡単に綺麗になるなど、お手入れの容易さも特筆されました。

その後もメルセデスは「レザーARTICO」といった高品質な合成皮革を提供しており、現在では他メーカーも広く採用しています。もはや本革か合成皮革かにこだわる必要のない時代になりつつあります。

本革は天然素材ゆえ限りがあるため、量産車の内装素材として合成皮革の方が理にかなっているとも言えます。実際、ボルボは2021年に新型EVから本革を廃止する方針を宣言し、テスラも段階的に本革の使用を廃止。2017年にはシートを、2019年からはステアリングホイールを含む内装全体を本革レス(ヴィーガン)仕様へと移行しました。


合成皮革は高級感と実用性を兼ね備え、注目されるでしょう。
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