ターボエンジンは実際のところ燃費は良いの?悪いの?

1.2 TSIエンジン

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ターボ付きエンジンというと、現在では環境対応型が多くなっています。排気ガスのエネルギーを利用してタービンを回転させ、コンプレッサーで空気を圧縮することで、充填効率を上げる。これがターボエンジンの大まかな仕組みです。以前のターボエンジンのイメージでは、あくまでも高出力型で燃費が悪いと思われていたものが、なぜここにきて「燃費の良い」ターボが生み出されたのでしょうか。実際にターボエンジンの燃費というのは、改善されたのでしょうか。過去と現在の実例を見ながら探ってみます。
Chapter
作ろうと思えば作れた燃費重視ターボ
フォルクスワーゲンよりも前から熱心だった北欧メーカー
突き詰めて登場、フォルクスワーゲンの小排気量高効率ターボ
たとえばレヴォーグ

作ろうと思えば作れた燃費重視ターボ

あるエンジニアが質問に答えているシーンが記憶にあります。20年以上前のことです。

質問者「ターボのメリットには燃費の向上も含まれているはずですが、なぜそれは達成されないのですか?」
エンジニア「作ろうと思えば、燃費重視のターボエンジンも作れます」

つまり、当時は燃費型のターボは求められていなかった、という解釈ができます。あくまで出力重視。ユーザーもパワーが出るぶん、燃費は多少悪くても仕方がない…。やがて、ターボ =燃費が悪いというイメージが付いてしまったので、燃費型のターボエンジンを作ろうとしても受け入れられないと判断されてた可能性はあると思われます。

実際に、MR2(SW20型)のGTターボは、低回転でシフトチェンジして運転することで燃費は軽く12km/L、レガシィRSも高速でなら15Km/Lは走ったといったような話は、少なくありません。

ターボ車というのは、あまり負荷をかけずに必要以上に飛ばさなければ、燃費はもともとそんなに悪いものではなかったと言えそうです。ただし、これはダイレクトにクラッチがつながり、繊細なアクセルワークのできる(右足でブーストをコントロールできる)マニュアル車に限った話でのこと。

20年くらい前のトルコン式オートマチックだと段数も少なく、トルコンのスリップも大きかったため、ターボが作動しやすくなり、過剰にターボが効いてしまうような走行パターンになりがちでした。その結果、当時のターボ+オートマはやはり燃費が悪かったのではないかと思われます。

フォルクスワーゲンよりも前から熱心だった北欧メーカー

燃費重視というより、非高出力型ターボエンジンに関しては、スウェーデンのサーブやボルボが熱心でした。

そもそも低排気量の4気筒エンジンしか持てないという資源的な問題と、ヨーロッパ各国の諸事情、とりわけ国によって大排気量に対する重税が課せられるという事情に合わせて、排気量を上げるということができなかったのです。そこで彼らは、排気量をアップするのと同様の効果が得られるターボの装着に着目したのです。

ボルボは、約30年以上前の240や740の時代から日本でもターボ車を設定していましたが、それはあくまでも車体に対して排気量が小さい(2.3リッター)ことを補う目的のものでしたし、サーブもまた同様でした。

ハイスペックというより、実用ターボという趣きのもの…と同時に、彼らのラインナップにはハイパワー仕様のターボ車も設定されていたりと、ターボには使い道によって大きく性格を変えられるという特性が見て取れるわけです。

つまり高い可能性があることを、サーブやボルボのターボ車が他の自動車メーカーに先んじて示していたといえるのです。

突き詰めて登場、フォルクスワーゲンの小排気量高効率ターボ

ダウンサイジングターボはVWが先鞭をつけたかに見えて、実はアイデアそのものは古くからあった高効率ターボでもありますし、それを突き詰めたかたちで、より環境を意識して作りこんできたのがVWだったと言えます。

VWのメインユニットとなっているTSIエンジンも、当初はスーパーチャージャーとターボのツインチャージャーでした。この初期のTSIエンジンは、あまり燃費に作用しないという問題(日本での交通モードに則していないチューニングのため)もあり、VWはTSIエンジンに対して、相当な改善・改良を施しています。

VWの強みは、DSGとの組み合わせにあるといえます。スリップのないクラッチ、細かく区切られた階段のステップのようなギア比、また過剰なアクセル開度を自動的にコントロールし、常に最適な充填効率を実現する電子制御スロットルなど、あらゆるパーツをコンピューターがコントロールすることで、ターボを上手に使っているのですね。

たとえばレヴォーグ

スバル レヴォーグの1.6Lターボは、ダウンサイジングコンセプトで作られたエンジンです。

ガソリンもレギュラー仕様になっていて、JC08モード燃費も17.6Km/Lと、スペック上ではとても優れた性能を有しています。しかしこのエンジン、運転してみるとターボ独特の爆発力があり、その方向で走りを楽しむと、やはり燃費は落ちることもあるようです。

これはスバルとしても難しいところで、スバルは従前のスポーティエンジンEJ20型のイメージが強く残っていますから、環境エンジンといえども、いきなり大人しい仕様には作りにくかった(作りたくなかった?)という事情はあると思われます。

ただ、ターボにあまり負荷をかけないように、リニアトロニックも高めの変速比を保つように、SIドライブもインテリジェントモードにして流れに乗って走れば、JC08モード燃費に近い値を記録することも確かなようです。

本来的にターボエンジンは長時間の高速走行、流れに乗りつつ右足で適度にブーストをコントロールしながら気持ちよく走る、そんな場面で最良の性能を発揮してくれる傾向です。ストップ&ゴーで発進のたびにブーストが鋭く立ち上がるようなシーンは得意とはいえません。

乗り手の操作ひとつで性格や燃料消費を大きく左右することは、なにもこの環境ターボに限ったことではありませんが、ただただ広告に書かれているからというだけで高い燃費性能を容易に得られるというわけでもないことは覚えておきましょう。
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