バリアブルギアレシオってなに?メリット・デメリット

ホンダ S2000 typeV

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バリアブルギアレシオやアクティブステアリングという言葉を聞いたことがあるでしょうか。ステアリングのギア比を、車速や状況に応じて変化させ、鋭いハンドリングと、高い安定性を両立することができるといった機構です。非常に優れたシステムに聞こえますが、じつは一長一短があるのです。

文・吉川賢一
Chapter
バリアブルギアレシオとは?
バリアブルギアレシオを搭載するメーカーは?
短所はあるのか?

バリアブルギアレシオとは?

今から約20年前、ホンダはS2000のステアリング機構に当時、世界初となるVGS(可変ギア比)を装着しました。VGS(Variable Gear ratio Steering)とは、走行状況に応じてステアリングのギア比(ステアリングホイールの回転角と前輪の切れ角の比率)を変化させる機構のことです。

ホンダはこのVGSを、リアルスポーツカーの『新たな操る喜び』を提供する技術、という名目で開発し、ステアリングの最大回転量を示すロックトゥロックは、従来のクルマの約半分となる1.4回転に設定。

ワインディングでは切り始めの瞬間からレスポンスよく向きを変え、また高速走行では過敏過ぎない穏やかで安心感のあるハンドリングを実現。さらに低速での方向転換や、車庫入れなどのときには、少ないハンドル操作でタイヤを動かすことができるので、人間の仕事を大幅に減らすことができていました。

バリアブルギアレシオを搭載するメーカーは?

上記で紹介した以外にも、バリアブルギアレシオを採用しているメーカーは多くあります。

トヨタのVGRS(Variable Gear Ratio Steering)は、2002年にランドクルーザーに採用したことを皮切りに、クラウン、レクサスのGS、LSにも採用しています。レクサスには、後輪操舵機構も織り込み、低速から中速域および高速域までの広い速度域で、高い次元の安定性を確保することができました。

また、日産の4WAS(アクティブステアに後輪操舵も足した制御機構)は、Y51フーガとV36スカイラインに採用されていました。現在は、Y51の4WAS仕様は廃止されており、後継としてV37スカイラインにDAS(ダイレクトアダプティブステア)というステアバイワイヤによって、バリアブルギアレシオ相当の効果を出す機構が装着されています。
BMWのアクティブステアリングは、2003年に登場したE60型5シリーズから。当初は、操舵の違和感があり、評判はよろしくありませんでしたが、現在では完成度を高めてきています。

最新型では後輪操舵と合わせた、インテグレイテッド アクティブ ステアリングに進化し、他のメーカーと同様に、4輪操舵と合わせた制御となっています。ちなみに、初期のE60型のアクティブステアリングは、異常故障が多発しており、修理には高額の修理費用が掛かることでも有名です。

短所はあるのか?

バリアブルギアレシオを持つステアリングの売り文句として、極低速で駐車をするときに、右左へといっぱいまでハンドルを回す角度が減るので切り返しが非常に楽になる、ということが挙げられます。

ただし誤解してならないのは、ハンドルの操作量が減るだけで、タイヤの最大切れ角は増えていないということ。長いホイールベースのクルマでは、フル転舵時の曲がり方はそれなりに大きいのです。

それを解決するため一部の高級車では、後輪操舵と組み合わせて、駐車時には後輪を逆位相とすることで、最小回転半径を小さくしています。しかし今度は、フォークリフトのように後輪が外側へ振り出すため、慣れが必要になります。また言わずもがな、こういった機構を付けていくほどに、コストも上がります。

Y51から4WASがカタログ落ちしたのは、4WAS装着のSportグレードの価格が高く、ユーザがそれだけの価値を見いだすことができなかったことも原因だと考えられます。

反対に、バリアブルギアレシオやアクティブステアリングの価値をもっとも体感できるのは、交差点に差し掛かったときです。ほぼハンドルを握り変えずに曲がることができ、誰でもその効果はわかると思います。機会があれば、ぜひ体感してみてはいかがでしょうか。

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