EVのF1開幕元年 “Formula E”とは何か

EVのF1開幕元年 “Formula E”とは何か

アヘッド Formula E

この新カテゴリーは、F1(フォーミュラワン世界選手権)やWEC(世界耐久選手権)、WRC(世界ラリー選手権)、WTCC(世界ツーリングカー選手権)と同様、FIA(国際自動車連盟)が統轄する電気自動車(EV)によるレースである。

タイヤやドライバーが露出した形態はF1に似ている(この形態を「フォーミュラ」と呼ぶ)が、動力性能的にはF3と同等である。とはいえ最高速度は225㎞/hに達し、0-100㎞/h加速を3秒以下でこなす(いずれも想定値)俊足の持ち主。エキサイティングな走りを見せてくれるに違いない。

エキサイティングといえば、EVならではのサウンドもそのひとつ。配信されている公式トレーラーなどで確認できるが、EVだからといって無音ではなく、加速に応じて独特の高周波電磁音が高まる。

量産EVは変速機を用いないので連続音になるが、「フォーミュラE」は4段変速機を搭載しているので、レーシーな断続音になる。複数のマシンが同時に走ったときにどんなハーモニーを奏でるのかと、期待が高まる。

サウンドは魅力のひとつではあるけれども、ガソリンエンジンが主体の既存のモータースポーツと比べるとはるかに静かで、走行中は排ガスを放出しない。

その特徴をアピールするため、10戦が予定されているレースはすべて市街地(全長2・5~3㎞の特設コース)で開催される。それも、北京やロサンゼルス、ベルリンやロンドンなど、大都市ばかり。世界選手権は春から始まり秋に終えるのが一般的だが、「フォーミュラE」は秋に始まり夏に終える。

初年度に参戦が認められるのは10チームで、各チームに2名のドライバーが所属する。エネルギー問題に関心があり、技術力をアピールしたいと望むチームが独自にマシンを開発することは可能。

ただし、初年度は参戦のハードルを低くするため、FIAが用意した共通のマシンで競技を行う。俳優L・ディカプリオが共同オーナーを務める「ベンチュリ」に加え、「アウディスポーツABT」、「アンドレッティオートスポーツ」、「ヴァージン」など、実績や知名度の高いチームが集う。

アヘッド Formula E
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「スーパーアグリ・フォーミュラE」もそのひとつだ。

運営の母体はイギリスに置くようだが、'06年から'08年途中までF1に参戦した国産チームのDNAを受け継ぐ。「スーパーアグリ」のエースドライバーだった佐藤琢磨が、「フォーミュラE」の開発ドライバーを務めるのもニュースだ。現時点では開催地に日本の都市が入っていないが、気運が高まればとの期待を抱かずにはいられない。

琢磨が開発に携わるマシンが、「スパーク・ルノーSRT-0‌1E」だ。

車名の一部になっている「ルノー」は電動システムの統合を担当。パワートレーンおよびエレクトロニクスは「マクラーレン・エレクトロニクス・システムズ」、バッテリーは「ウィリアムズ・アドバンスト・エンジニアリング」と、F1でなじみのある企業やチームの関連企業が携わっている。

シャシーの製造は、今年度からの「スーパー・フォーミュラ」や現行インディカーを手がける「ダラーラ」だ。タイヤはミシュラン。フォーミュラに装着するタイヤはホイール径が小さいのが伝統で、「F1」は13インチである。

だが、「フォーミュラE」は18インチを装着。ドライとウェットでタイヤを履き替えるのがレースでは一般的だが、「フォーミュラE」はトレッドパターンのあるドライ/ウェット兼用のタイヤを履く。量産車への技術のフィードバックを意識した判断だ。

イベントは土曜日に集中して行う。1時間の練習走行の後、予選を実施。練習走行のタイムをもとに出走順を決め、1台ごとに2周の計測ラップを行ってグリッドを決める。レースは約1時間。練習走行と予選は200kW(270馬力)のフルパワーで走ることができるが、レースはあえて133kW(180馬力)に出力を抑えて走る。

ただし、〝プッシュ・トゥ・パス〟ボタンを押したときにだけ、フルパワーを放出できる仕掛けだ。このプッシュ・トゥ・パスは、SNSとの連携が計画されている。SNSで多くの応援を集めたドライバーにだけ、追加でプッシュ・トゥ・パスの使用を認める内容で、文字通り、ファンの応援がドライバーの背中を押すことになる。

また、視聴者が21番目のドライバーとして実際のレースにバーチャルで参戦する「リアルタイム連動レースゲーム」の開発も予定されている。

フォーミュラEはレース中、2回のピットストップが義務付けられるが、このときドライバーは満充電のマシンに乗り換える。バッテリー容量の問題で生じた規則だが、なんとも斬新。何から何まで型破りだ。

●2014/2015シーズン開催カレンダー
第1戦  2014年  9月13日 北京(中国)
第2戦  2014年10月18日 プトラジャヤ(マレーシア)
第3戦  2014年11月15日 リオデジャネイロ(ブラジル)
第4戦  2014年12月13日 プンタデルエステ(ウルグアイ)
第5戦  2015年  1月10日 ブエノスアイレス(アルゼンチン)
第6戦  2015年  2月14日 ロサンゼルス(アメリカ)
第7戦  2015年  3月14日 マイアミ(アメリカ)
第8戦  2015年  5月  9日 モナコ
第9戦  2015年  5月30日 ベルリン(ドイツ)
第10戦2015年  6月27日 ロンドン(イギリス)

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text:世良耕太/Kota Sera
F1ジャーナリスト/ライター&エディター。出版社勤務後、独立。F1やWEC(世界耐久選手権)を中心としたモータースポーツ、および量産車の技術面を中心に取材・編集・執筆活動を行う。近編著に『F1機械工学大全』『モータースポーツのテクノロジー2016-2017』(ともに三栄書房)、『図解自動車エンジンの技術』(ナツメ社)など。http://car-me.jp/listener/redirect?r=http%3A%2F%2Fserakota.blog.so-net.ne.jp%2F

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