21世紀少年はドライブにいく夢を見るか? vol.4 人工知能を持ったレーシングカー

vol.4 人工知能を持ったレーシングカー

アヘッド 21世紀少年はドライブにいく夢を見るか? 背景

開催は決まっているものの、詳細は明らかになっていない。発表されていることと言えば、ドライバーレスで車両を走らせること。車両はフォーミュラEと同じように電気自動車であること。そして、コネクテッドであることだ。

クルマを運転する場合は通常、ドライバーが認知、判断、操作を行うが、ロボカーはドライバーレスである。では誰がドライバーの代わりに認知、判断、操作を行うのかといえば、人工知能(AI)だ。

車両に搭載されたセンサー類で周囲の状況を認知し、どう動くべきかを人工知能が判断。車輪を動かすモーターや、車両の向きを換えるステアリング系に指令を出す。その人工知能の優劣を競うのがロボレースというわけだ。

コネクテッドであることもポイントだ。コネクテッドは通信を利用し、車両が外部と情報のやりとりを行うことを意味するが、それができると、自動運転の能力は飛躍的に高まる。

例えば、先行車が前に立ちふさがってコーナーの入口が(カメラで)見通せない状況でも、通信によってサポートされていれば、自分がコースのどの位置を走っているかを把握することができる。その状態なら迷うことなく、コーナー進入に向けてブレーキやステアリングの操作を行うことができる。

情報をコース側からサポートするのか、GPSを利用するのかなど、どういう方法でコネクテッドな状態にするかに関しての発表はまだないが、自動運転技術の進化に役立つのは間違いない。

アヘッド ロボレース

「レースに自動運転を持ち込んだ場合、究極の動性能はどうあるべきかが技術の中心になると思います」と、自動運転技術の開発に携わる、あるエンジニアは言う。

「周囲の状況を認識した際の応答性です。量産車においては『完全自動運転で走れるようにしましょう』というのが、現在の技術開発のメインストリームです。予期しない事態が発生した場合にどう反応するんだという開発までは手が回っていません。

例えば、自動運転だからとドライバーがリラックスしていたとします。何も起きない前提だからリラックスしていいのですが、予期せず何か起きる可能性は否定できません」

そのとき、ドライバーは素早く回避行動に移れるかというと、そうはいかないだろう。緊急回避の際の判断や操作は人工知能に任せることになるが、それをレースで磨くことに価値がある。

周囲の状況をセンシングする技術を磨くことも重要だが、車両の運動性能を最大限に引き出す能力も必要だ。車両運動性能の限界を超えるような操作を行ったところで、クルマは狙いどおりに動いてはくれないからだ。

激しいつばぜり合いを演じるレースでぶつからない技術を鍛えれば、緊急事態の際にぶつからない技術として、自動運転の進化に役立つことになる。

アヘッド ロボレース

限られた情報しか明かされていないロボレースだが、3月末にはプロトタイプの車両デザインが公開された。車両の基本構造はフォーミュラEと同様で、サスペンションアームがむき出しの形態だが、ボディから延びたカウルが前後の車輪を覆い、フロアと一体化している。

漢字の「串」を立体化したような、ユニークなフォルムだ。「ドライバーレス」であることを誇示するかのように、ボディ上面はフラットに仕立てられている。

これまでのどのレーシングカーにも似ていないし、SF映画にでも出てきそうな未来的なスタイルにも感じる。それもそのはずで、チーフデザイナーを務めるのはダニエル・サイモンなのだ。

自動車会社に勤務した経歴を持つサイモンは、映画『トロン:レガシー』の車両デザインを手がけたことでも知られる。F1のカラーリングを手がけたこともあるし、'14年にはロータスが初めて手がけたバイクのデザインも行っている。そのバイクは未来とレトロが絶妙に同居した、個性あふれるルックスだ。

「人工知能です」「ぶつからない技術を鍛えるんです」と口を酸っぱくして訴えるより、「この不思議なクルマは何?」と思わせ、関心を引く作戦だろう。量産車の自動運転技術にも言えることだが、技術の見せ方はとても重要である。

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text:世良耕太/Kota Sera
F1ジャーナリスト/ライター&エディター。出版社勤務後、独立。F1やWEC(世界耐久選手権)を中心としたモータースポーツ、および量産車の技術面を中心に取材・編集・執筆活動を行う。近編著に『F1機械工学大全』『モータースポーツのテクノロジー2016-2017』(ともに三栄書房)、『図解自動車エンジンの技術』(ナツメ社)など。http://serakota.blog.so-net.ne.jp/

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