小沢コージのものくろメッセ その35 編集長には説得力ある独善力が必要だ

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aheadの編集長が交代するという。「編集長」というものには知的で世の中を動かすカッコ良いイメージもあり、憧れる人も多いと思うが、結構とんでもない存在だったりするので、いままで見た凄い編集長、ダメな編集長に基づき小沢が勝手に検証してみよう。

text:小沢コージ [aheadアーカイブス vol.171 2017年2月号]

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その35 編集長には説得力ある独善力が必要だ

その35 編集長には説得力ある独善力が必要だ

感覚的に言うと名編集長は大抵クセがあって独善的なキャラクターだったりする。正義感や見識もあるので尊敬すべき点も多いが、心底善人だなぁ…と思う人に出会ったことはない。それどころか「将軍様」と呼ばれる身勝手な人もいた。なにしろ校了時に原稿差し替えを命じるのだ。

しかし説得力があって編集部員の不満を抑えて結果を出せばいい。逆に言うといくら人柄が良くても、優柔不断で、八方美人な人は大抵ダメ編集長である。 

ところで編集長ってなにをやる人なのか。ライターやカメラマンと違い、多分に分かりにくいが要するに「方針を決め」「取捨選択」をし「トーンを決める」人だ。

具体的には週刊誌なら従軍慰安婦を良しとするのか、原発を否定するのか、誰に原稿を書かせるのか、最後に原稿をチェックして直す直さないなども決めたりする。タイトルや見出しも基本編集長のモノだし、電車の中吊り広告を考えるのも編集長の仕事だ。

その点、今の自動車専門誌で決定的にダメなのは原稿を直さないこと。あるいは在るべきトーンを指示しないことだと思う。編集長がやるべき仕事をあまりしていない。

さらに専門系で問題なのは、加えてそもそもジャンルが狭いので心底面白いネタを探すのが難しく、お決まりのルーチンワークになりがちなのと、基本的にギャランティが低いのでクオリティを追究しづらいこと。その昔、とある週刊誌は専門誌の3倍近い原稿料が出た。これは緊張感という意味で大きく、自ずと競争原理が働く。

しかし専門誌はこの手の競争がなく、毎月のように出るプリウスやらフィットなどの新着情報をなにも考えずに、お決まりのライターに書かせて安いギャラを払うのが関の山なので、ぶっちゃけいろんな意味で「違い」が作れない。これは結構切実だ。

逆に言うと、いま最も分かり易く面白いのは週刊文春だろう。直接仕事をしたことは無かったはずなので、想像で書くがまず一般週刊誌はネタとなるターゲットが広い。政治から経済から芸能からスポーツからグラビアからモノから食から歴史認識などあらゆるジャンルを取り扱う。

しかも読者層が広く、当たると大きい。おそらく1号あたり億単位のお金が動く。その分、経費を使えるので、自ずとスタッフ全体が「面白いネタを扱おう」「面白いコメントを引きだそう」「インパクトある写真を撮ろう」「面白い原稿を書こう」となる。

要するに雑誌の本質は博打要素に満ちた二次元エンタテイメントなのだ。本来なにを扱ってもいいメディアだと思う。もちろん広すぎるとツラいので自ずとある程度ジャンルは絞られることになるが。

だが、第一義は大衆の欲望、知りたい欲、見たい欲に答えることに尽きる。つまりその手のリーダーは、情報に敏感で知的好奇心とガッツと理念があって多少常識がなく、エゲツないぐらいでいい。いい編集長はいい人である必要はない。説得力ある独善力、それが最も必要だと小沢は考えている。

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text:小沢コージ/Koji Ozawa
雑誌、ウェブ、ラジオなどで活躍中の “バラエティ自動車ジャーナリスト”。自動車メーカーを経て二玄社に入社、『NAVI』の編集に携わる。現在は『ベストカー』『日経トレンディネット』などに連載を持つ。愛車はロールスロイス・コーニッシュクーペ、トヨタ iQなど。
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