ひこうき雲を追いかけて vol.72 シンプル イズ ベスト!

vol.72 シンプル イズ ベスト!

アヘッド 自動車人の食卓

およそ"食"に興味のない人はいないし、「食べ物」のページがあったらいいですね、と言われることも多い。でもaheadでなんの脈絡もなく"食"を取り上げるのでは芸がない。きちんとクルマの話としても読めるページでなければ。そういう私の与太話に乗ってくれたのが他でもない松本 葉さんだった。これ以上の書き手はいない。

連載のスタート時に決めたのは、紹介するレシピは基本的に、日本の読者が再現できるもの、ということ。だからレシピは松本 葉さんがアレンジしたオリジナルのもので、それを私が実際に自宅のキッチンで作って、撮影している。これがとても楽しい。

私はほぼ毎日、食事を作るが、食卓に並ぶのはいわゆる"普通"の和食で、これまでほとんどパスタすら作ったことがなかった。 私にとってパスタはリアルな食事ではないから、だったのだと思う。でも撮影となるとそうも言ってられない。今では撮影までの間に、平均して月に3、4回は作るようになった。

それで気づいたことは、これ以上シンプルな料理はないんじゃないかということだ。これまでの回を読み返してみても、いわゆる味付けらしきものはほとんどない。今回ご紹介したトンノ(シーチキン)のパスタなんて、味付けのための"塩”すら入れていない。パスタを茹でる以外は、フライパンにトンノ以外の材料を全て入れてしまって最後に合えるだけ。味はひとつひとつの材料が決めてくれる。

大事なことはただ2つ。パスタを茹でる時の塩の量。第3回目の葉さんのレシピにある「計ってみたら我が家は3ℓの水に40gの塩を使っている」。

これ、実際にやってみると「こんなに塩入れるの?」と躊躇するはず。でも、この水と塩の比率をだいたい守って入れば、びっくりするくらい美味しいパスタが出来上がる。パスタを和えたときの水分の量もこの茹で汁で調整するから、この"塩"がパスタの味を決めると言っても、あながち間違ってはいないと思う。

そしてこれまた葉さんが書いているとおり、「余計なことをしない」こと。細かいことの好きな日本人はつい、ちょっと調味料を入れてみたらいいんじゃないかとか、最後の彩りに何か足してみたらいいんじゃないかとか、工夫と言う名のものとに余計なことをしてしまいがち。日本人の美徳ではあるが、同時に最大の欠点でもある。

とにかくこの2つさえ守って入れば、ほとんど失敗がない。イタリア人は天才だな、と毎度のごとく、私はひとりつぶやいている。

読者の皆さんにもぜひ、トライしてみていただきたい。大げさに言うと、一皿のパスタから、自動車の国、イタリアのエッセンスを感じることができると思う。

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text:若林葉子/Yoko Wakabayashi
1971年大阪生まれ。Car&Motorcycle誌編集長。
OL、フリーランスライター・エディターを経て、2005年よりahead編集部に在籍。2017年1月より現職。2009年からモンゴルラリーに参戦、ナビとして4度、ドライバーとして2度出場し全て完走。2015年のダカールラリーではHINO TEAM SUGAWARA1号車のナビゲーターも務めた。

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