Letter From Mom 夫と子どもとクルマたち Vol.11 ミニバンの悲劇と女の直感

アヘッド Letter From Mom

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新年早々、我が家のミニバンはぶつけられて痛々しい姿になってしまった。修理に入ってから、もう3週間。代車での不便な生活が続いている。

text:まるも亜希子 [aheadアーカイブス vol.183 2018年2月号]
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Vol.11 ミニバンの悲劇と女の直感

Vol.11 ミニバンの悲劇と女の直感

ぶつけられたのは、年に2〜3回は行っている観光地の公共駐車場に停めていたあいだ。夫がそこへ戻ると、数人の警官が自分のクルマを取り囲んでいたという。ぶつけた本人が警察に連絡して事故証明をとっていたところだった。夫は最初こそ怒りが爆発したらしいが、相手の対応も誠意あるものだったのだろう。

自己責任は相手が100%で、すべて保険会社を通じて対処することになった。タイヤ側にフェンダーがめり込み、自走が厳しいと思われたダメージも、積んであった工具で力いっぱい引っ張ると少しマシになって、なんとか走れる状態だ。そうした経過とともに夫の怒りも静まり、「当て逃げされなかっただけ良かった」と納得していた。

ところが、そのあとがまったく良くなかった。相手が加入していた大手保険会社は、賠償金を安く済ませたいからか、「事故の痕跡が残らないように直してほしい」というこちらの要望にはあれこれ理由をつけて応じない。それなら考える時間がほしいと言うと、「では、その間の代車料金はお客様負担になります」などと、脅しまがいの返答に絶句。

何度も保険会社と電話でバトルする夫も、それを聞いている私も、ちょっと病んでしまいそう。こちらは被害者なのに、どうしてこんな思いをしなければならないのか、消えた怒りの火がまたパチパチ燃え上がりそうだ。

けれど、私にはひとつ後悔していることがある。事故現場となった駐車場に停めたのは、私だった。我が家のミニバンは全長が5m近い巨体なので、なるべく他のクルマの出入りを邪魔しないように、いつもは壁側の端っこに停めることにしている。

出入り口からバックで進まないと停められない難易度が高いスペースで、言っちゃ悪いが車庫入れがヘタな人が隣りに停める可能性が低く、ぶつけられにくいだろうというのもその理由だった。

でも私が駐車場に入ったとき、ほかはガラガラだったのにそのスペースには先客がいた。なんでまたよりによって、とガッカリしたけれど、よく見ると運転席に人の姿があった。

ちょっと待てば出るかな? まぁでも、今日くらいはほかのスペースでもいいかな? 私は迷った。実はそのとき、妥協して別のスペースに停めたせいでぶつけられたらイヤだなと、一瞬頭をよぎったのだ。でも私はお手洗いをずっとガマンしていたし、待っても空かない可能性もあるしと、さっさと停めてしまったのだった。

夫は事故直後、「なんで端っこに停めなかったんだよ」と強い口調で私を責めた。とっさに私も、「空いてなかったのよ!」と感情的になってしまったけれど、今は素直にゴメンと思っている。私がお手洗いをガマンさえしていれば。少し待って端っこに停めてさえいれば。そんな後悔と、もうひとつ……。やっぱり「女の直感」は当たる。次からは何があっても、その直感に従おうと誓ったのだった。

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text:まるも亜希子/Akiko Marumo
エンスー系自動車雑誌『Tipo』の編集者を経て、カーライフジャーナリストとして独立。ファミリーや女性に対するクルマの魅力解説には定評があり、雑誌やWeb、トークショーなど幅広い分野で活躍中。国際ラリーや国内耐久レースなどモータースポーツにも参戦している。
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