イタリア車を考える vol.1 「美」編

イタリア車を考える vol.1 「美」編

アヘッド イタリア車

でも、実際のところは、それほど難しく考えるようなことでもないような気もしてる。というのも、わざわざ頭を捻らなくたって、観て、乗って、心で感じれば、もうほとんど理解できたも同然なのだから。というか、そもそもイタリア車は〝理解する〟ものではなく、〝感じる〟もの、と申し上げても暴言にはあたらないだろうと思う。

端的に言って、イタリア車の素敵なところは〝美〟と〝快〟だ。それは昔から枕詞のようにしてイタリア車を語るときについて回るものだけど、四半世紀以上も欧州車が大きな軸となっている自動車メディアに関わり、今も車齢的にあちこち不具合が生じはじめてきた中古のアルファ・ロメオにだましだまし乗り続けている僕にすれば、〝地球は青い〟並みの真実であるとしか言いようがないのだ。

だって4年目に差し掛かった今になっても、その姿を目にするたびに心がときめくし、走らせるたびに胸が躍るような気持ちよさを常に感じて、飽きるということがない。

手に入れたときの新鮮な感動が薄まらないどころか、もしかしたらその当時より惚れてるかも知れない。「美人は3日で飽きる」とのたまう人がいるなら、その人は何にでもすぐに飽きてしまう飽きっぽい人なんだと思うほど。

まぁその辺りはひとりのオーナーの戯言と思っていただくとして、話はイタリア車の〝美〟である。

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美醜の基準は人それぞれだけど、あなたがこれまでに「カッコイイな」「綺麗だな」と感じたクルマや、あるいは「あれはいったい何なんだ!?」と目を奪われて引き剥がせなくなったクルマ達の中には、イタリア車が圧倒的に多かったりはしないだろうか?好みの問題はあるが、おそらく多くの人は否定することができないだろう。

何せイタリアはデザインと造形の国。日本の庶民が竪穴に屋根を被せただけの家に住み、土器を使い、祭祀用の銅鐸や青銅製の鏡がせいぜいだった時代に、神話の情景が精密に彫り込まれたガラス工芸品や多色に彩られた写実的なフレスコ画、大理石を用いた彫刻や彫像といった現代の芸術にそのまま通じる工法/手法が確立されていて、コロッセウムやティトゥス浴場のような明確に設計がなされた巨大建築物を完成させていた国である。

キリスト教という信仰を通して美術や建築を発展させ、中世にはルネサンス文化の発祥の地となり世界に大きな影響を与えた国である。ドナテッロ、ヴェロッキオ、ミケランジェロ、ダ・ヴィンチ、フランチェスカ、ボッティチェッリ、ラファエロ、カラヴァッジォ、ベルニーニ──。

そうした歴史に名を残す芸術家や、その何十倍も何百倍も存在した名を残すことのできなかった芸術家達の、末裔達が暮らす国である。そしてその末裔達は、家から一歩外に出れば至るところに古くからの美しい建築物や美術・芸術、それに鮮やかだったり絶妙だったりする色彩が転がってるような、そんな土地で育つのだ。

それはもう〝美〟というものに関する感覚がごく自然に磨かれて、その感覚的なベースが高くなるのも当然といえば当然。意識のあり方が違うのだ。

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そうしたバックグラウンドがあるせいか、クルマのデザインや造形というものに対しても捉え方は全く一緒で、創り上げる方もそれを見る方も、意識が極めて高い。イタリアではそうした環境の中で、連綿とクルマ作りが行われてきた。

なるほど、この国で生まれたスーパーカーが、他国の超高性能スポーツカーに絶対に引けをとらない造形的な美しさを誇ってきてるわけである。なるほど、フツーの人のためのフツーなポジショニングのクルマなはずなのに、やたらと彫刻的な姿をしてたり、逆にシンプルなのに驚異的な黄金比的バランスを持つフォルムが与えられてたりするわけである。

生活のための道具のような簡素なクルマなのに、妙にハッキリと印象に残ったりするのもそう。パッと見では怯み、けれどなぜか次第に惹かれてしまう凄まじい個性を持ったクルマが生まれてくるのもそう。実用第一であるはずのステーションワゴンなのに、ラゲッジスペースへの5枚目のドアが小さくてスペースそのものだって狭いモデルが許されちゃうのもそう。

良くも悪くも、それがイタリア車。姿カタチで人をたぶらかすこと呼吸するがごとし、なのだ。


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text:嶋田智之/Tomoyuki Shimada
1964年生まれ。エンスー系自動車雑誌『Tipo』の編集長を長年にわたって務め、総編集長として『ROSSO』のフルリニューアルを果たした後、独立。現在は自動車ライター&エディターとして活躍。

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