ドライバーは孤独じゃなくなる 日立オートモティブシステムズのITプラットフォーム

アヘッド 日立オートモティブシステムズのITプラットフォーム

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雲をつかむような話に聞こえるかもしれないが、むしろ、雲のように自由に形を変えられると理解したい。「クラウド」と呼ばれるITサービスのことだ。パソコンでもスマートフォンなどの情報端末でも、従来は個々の機器に情報を保存し、その中で処理を行ってユーザーに価値ある情報を提供してきた。

text:世良耕太 イラスト:佐々木博昭 [aheadアーカイブス vol.116 2012年7月号]
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日立オートモティブシステムズのITプラットフォーム

日立オートモティブシステムズのITプラットフォーム

▶︎日立オートモティブシステムズは、“クラウド”を活かし、クルマと社会が常に最新のネットワークでつながるITプラットフォームを構築。このシステムなら、ドライバーは孤立した存在ではなくなる。www.hitachi-automotive.co.jp/


クラウドの場合はデータの保管と処理機能を本体から分離。離れた場所にあるITセンターで情報処理を行い、端末には結果だけを伝える。ディスプレイは情報を映し出す窓の役割に徹するわけだ。

これをクルマと社会の関係に置き換えた場合、従来はクルマの中にあるデータだけを頼りに情報を処理していた。この場合は情報の処理能力にも限りがあるし、その時点の社会の状況と照らし合わせることはなく、独自の判断でドライバーに最適と思われる情報を提供していたことになる。

極端な見方をすると、いったんクルマに乗り込んで道路を走り出すと、社会から断絶した状態になっていたわけだ。

一方、クラウドを生かすと、クルマと社会がネットワークでつながる。クラウドには自分のクルマだけでなく周囲を走るクルマからも情報が上がってくるし、道路を含め、広く社会から多くの情報が集まる。

情報の処理能力は車載機器よりはるかに高いので、高度な計算を素早く行うことが可能だ。こうしたクラウドサービスを提供するITプラットフォームを構築しているのが、日立オートモティブシステムズである。

例えば、従来のナビシステムで目的地までのルートを探索した場合、ルートの途中で渋滞が発生していようが悪天候が待ち構えていようが、車内の端末にある情報を頼りに計算を行っていた。クラウドを使えば、渋滞や天候など、時々刻々と変化するリアルな情報を頼りに処理することができる。どちらが安心・安全・便利だろうか。

これはほんの一例。クルマは安心・安全・便利な走行を担保するために、車輪速や加速度や搭載する機器の温度など、さまざまな情報を収集し、走行制御に生かしている。

すでに利用しているこれらの情報をクラウドに吸い上げて処理を行うと、ある部品は劣化が激しいからそろそろメンテナンスが必要といった情報をクルマ側に発信することが可能。処理の仕方を変えるだけで、ドライバーの健康を管理することも技術的には可能だ。疲れや眠気をクラウドが判断し、教えてくれるわけだ。

クラウドを活用すればクルマは道路上で孤立した存在ではなくなり、常にネットワークが見守ってくれるようになる。可能性は雲のように無限大で変幻自在。どんなサービスが便利で安心、安全につながるのか。具体化する段階に来ている。

▶︎パシフィコ横浜で5月に開催された「人とくるまのテクノロジー展2012」。クルマの未来を担う最先端技術を世界に発信すべく、日立オートモティブシステムズを含む436社の企業が出展し、来場者は3日間で7万人を超えた。

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text:世良耕太/Kota Sera
F1ジャーナリスト/ライター&エディター。出版社勤務後、独立。F1やWEC(世界耐久選手権)を中心としたモータースポーツ、および量産車の技術面を中心に取材・編集・執筆活動を行う。近編著に『F1機械工学大全』『モータースポーツのテクノロジー2016-2017』(ともに三栄書房)、『図解自動車エンジンの技術』(ナツメ社)など。http://serakota.blog.so-net.ne.jp/
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