VOLVO(ボルボ)XC60【プロフェッサー武田の現代自動車哲学論考】
更新日:2024.09.09
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ボルボのエステートワゴンに、愛する家族やゴールデンレトリーバーなどの大型犬を乗せてお出かけ。1980-90年代の日本では、そんな様子が幸福なファミリーの象徴のように受け止められていたことをご記憶の向きもあるかもしれない。240や740/940などのFR時代の旧き良きモデルから、FFが主流となった850/V70時代まで、わが国におけるボルボの人気は驚くべきものだったのだが、その人気と幸福感を裏づけていたのは「世界で最も安全な乗用車」という、ボルボが長年の努力で培ってきたイメージにほかなるまい。
文・武田公実/Takeda Hiromi
文・武田公実/Takeda Hiromi
文・武田公実/Takeda Hiromi
ボルボ XC60は骨太な安全思想に裏打ちされたモデル
ボルボが初めて自動車の生産を始めたのは1927年。当初は、この時代の量産大衆車の規範であったアメリカ車を小型化したようなオーソドックスなクルマ作りに徹していたのだが、1956年に「アマゾン」こと120シリーズが誕生したあたりを契機に、のちの自動車業界のトレンドを先取りするかたちで、安全性への取り組みを強めてゆく。
1959年以降のアマゾンには世界で初めて3点式シートベルトが装備。翌60年からはダッシュボードにソフトパッドが貼られる。また後席内蔵型のチャイルドシートや、シートサイドのエアバック、あるいは頭部を保護するカーテン型のエアバックなどは、いずれも1990年代のボルボがパイオニア。
近年では日本の軽自動車にも採用された追突回避・低減型/歩行者保護型フルオートブレーキシステムも、ボルボが今世紀初頭から世界に先鞭をつけたものである。
そして今回テストドライブの機会を得た二代目XC60も、ボルボの骨太な安全思想に裏打ちされたモデルであることには疑う余地もないが、同時にここ数年のボルボが強調しているかに思われるプレミアム路線の延長上にもあるようだ。
例えばインテリアでは、かつて「フリーフローティング・センタースタック」と呼ばれていた、向こう側に小物が置けるよう設えられた極薄のセンターコンソールなど、スカンジナヴィア風デザインを分かりやすく伝えてくれるディテールは失われてしまったものの、当たりのソフトなシートに代表される居心地の良さなどは、以前のボルボの長所はそのまま、さらに洗練を加えたかのように思われる。
1959年以降のアマゾンには世界で初めて3点式シートベルトが装備。翌60年からはダッシュボードにソフトパッドが貼られる。また後席内蔵型のチャイルドシートや、シートサイドのエアバック、あるいは頭部を保護するカーテン型のエアバックなどは、いずれも1990年代のボルボがパイオニア。
近年では日本の軽自動車にも採用された追突回避・低減型/歩行者保護型フルオートブレーキシステムも、ボルボが今世紀初頭から世界に先鞭をつけたものである。
そして今回テストドライブの機会を得た二代目XC60も、ボルボの骨太な安全思想に裏打ちされたモデルであることには疑う余地もないが、同時にここ数年のボルボが強調しているかに思われるプレミアム路線の延長上にもあるようだ。
例えばインテリアでは、かつて「フリーフローティング・センタースタック」と呼ばれていた、向こう側に小物が置けるよう設えられた極薄のセンターコンソールなど、スカンジナヴィア風デザインを分かりやすく伝えてくれるディテールは失われてしまったものの、当たりのソフトなシートに代表される居心地の良さなどは、以前のボルボの長所はそのまま、さらに洗練を加えたかのように思われる。
ボルボ XC60…「幸福なイメージ」を、いま一度再燃させる
そして走りだしてみても、現代の高級車市場をリードするドイツ製ライバルよりも乗り味が格段にマイルド。言い換えれば少しだけユルいことが分かるのだが、クルマが強く自己主張してこないナチュラル感は、これはこれで好ましくも感じられる。
あらゆる面でドイツ・プレミアム御三家(メルセデス/BMW/アウディ)のSUVとアメリカ製SUVの中間くらいの立ち位置かな……?と思いが及んだところでハタと気がついた。この絶妙なスタンスもまた、かつて世界中のファンから愛された1980-90年代のボルボと変わってないのである。
あらゆる面でドイツ・プレミアム御三家(メルセデス/BMW/アウディ)のSUVとアメリカ製SUVの中間くらいの立ち位置かな……?と思いが及んだところでハタと気がついた。この絶妙なスタンスもまた、かつて世界中のファンから愛された1980-90年代のボルボと変わってないのである。
精緻さが身上のドイツ車と比べてしまうと少しだけガサツで、アクセルを踏み込んだ際には若干耳につく4気筒ターボエンジンのサウンドもまた、かつて我々が慣れ親しんだボルボに近いもののように感じられてしまう。
ついでに、ボディサイズの割には小回りが利くというFR時代以来のボルボの美点を引き継いでいるのも、特筆すべき事実だろう。
ここ数年の世界的SUVブームは、もはやブームという域を超えてパーソナルカー、あるいはファミリーカーの一ジャンルとして確立されたと言えよう。
そんな状況のもと、日本カー・オブ・ザ・イヤー獲得が話題となっている二代目XC60は、時代こそ違えども、ボルボがわが国において体現してきた「幸福なイメージ」を、いま一度再燃させるような気がしているのだ。
ついでに、ボディサイズの割には小回りが利くというFR時代以来のボルボの美点を引き継いでいるのも、特筆すべき事実だろう。
ここ数年の世界的SUVブームは、もはやブームという域を超えてパーソナルカー、あるいはファミリーカーの一ジャンルとして確立されたと言えよう。
そんな状況のもと、日本カー・オブ・ザ・イヤー獲得が話題となっている二代目XC60は、時代こそ違えども、ボルボがわが国において体現してきた「幸福なイメージ」を、いま一度再燃させるような気がしているのだ。
武田公実|Takeda Hiromi
かつてロールス・ロイス/ベントレー、フェラーリの日本総代理店だったコーンズ&カンパニー・リミテッドで営業・広報を務めたのちイタリアに渡る。帰国後は旧ブガッティ社日本事務所、クラシックカー専門店などで勤務ののち、自動車ライターおよびイタリア語翻訳者として活動。また「東京コンクール・デレガンス」、「浅間ヒルクライム」などの自動車イベントにも参画したほか、自動車博物館「ワクイミュージアム」ではキュレーションを担当している。