ホンダ「シビック」をプロが試乗レビュー 最も人気のあるMT仕様「RS」の乗り味とは【プロ徹底解説】

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2021年に発売となったのが現行型の「シビック」です。その「シビック」が2024年9月にマイナーチェンジを実施。新たにスポーツグレード「RS」を追加しました。今回は、この新しい「シビックRS」を試乗し、どんなクルマなのかをレビューします。

文・鈴木 ケンイチ/写真・PBKK

鈴木 ケンイチ

モータージャーナリスト。新車紹介から人物取材、メカニカルなレポートまで幅広く対応。最近は新技術や環境関係に注目。年間3~4回の海外モーターショー取材を実施。レース経験あり。毎月1回のSA/PAの食べ歩き取材を10年ほど継続中。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員 自動車技術会会員 環境社会検定試験(ECO検定)

鈴木 ケンイチ
Chapter
マイナーチェンジ後の販売の半数が「RS」グレード
ブラックを効果的に使った精悍なルックス
上質さと、利便性が調和するインテリア
扱いやすく、それでいて高回転では気持ちよいエンジン
操作感がよく、レブマッチも便利
スポーティさと快適さを見事に両立する足回り
かつての大人気「シビック」を思い出す

マイナーチェンジ後の販売の半数が「RS」グレード

現行型「シビック」は、2021年に登場した11代目モデルとなります。基本骨格やパワートレインは先代からのものが継承されましたが、中身はしっかりと磨き上げられ進化しています。ボディタイプはセダン/ハッチバックだった先代から、ハッチバックのみに。クーペのような優雅なフォルムとなっています。
2024年9月に実施されたマイナーチェンジの主な内容は、メカニズムというよりもグレード編成や内容の見直しとなります。6速MT仕様は新たに設定されたスポーツグレードの「RS」に集約されたのがトピックです。
驚くのは、新しい「RS」グレードの人気が非常に高いということです。マイナーチェンジ後1か月の販売において、なんと「RS」グレードが「シビック」全体の7割弱を占めるほど売れているというのです。また、20代の顧客が多いというのも特徴です。

ブラックを効果的に使った精悍なルックス

試乗用に駆り出したのはソニックグレー・パールの「シビックRS」でした。少し緑がかったグレーは表面的にはクリアが吹いてありますが、マットな印象を抱かせる、ユニークなカラーです。
流麗なクーペスタイルでありながらも、ヘッドライトリングやドアミラー、シャークフィンアンテナ、アルミホイールがブラックになっており、スポーティさを感じます。上品かつ精悍で、20代の若者だけでなく、50代の筆者の心にも刺さります。素直に「格好良いな」という言葉が漏れます。

上質さと、利便性が調和するインテリア

室内はブラックを基調に、インパネやシートなどに赤い加飾やステッチがあしらわれたもの。ただの真っ黒な内装ではなく、センターコンソールには精緻な加工が施されるヘリンボーン加飾が採用され、上質感が得られます。コンビシートに使われるウルトラスエードの滑らかな座り心地も、なかなかのもの。
また、インテリア全体がシンプルなデザインでまとめられており、ノイズの少ないスッキリとした視界の良さも好印象を得ました。6ウインドウなので、斜め後ろを確認するときの視界も良好です。走り出す前から、「運転しやすそうだ」と思わせます。

扱いやすく、それでいて高回転では気持ちよいエンジン

「シビックRS」のパワートレインは1.5リッターの直噴VTECターボに6速MTというもの。最高出力134kW(182PS)・最大トルク240Nmは、驚くほどの大きな数値ではありませんが、クルマのサイズを鑑みれば十分以上なもの。
エンジンは低回転から、しっかりとターボが効いていてトルクフル。1700回転も回れば、最大トルクが発揮されます。そのため、1.5リッターではなく、もっとも大きな排気量のエンジンのようです。しかもアクセル操作に対するレスポンスもよく、アクセルを戻せばエンジンの回転も素早く落ちます。
さらに、アクセルを深く踏み込めば、粒の揃った澄んだエンジンのビートが音量を高めて室内に響きます。この変化の大きさは、エンジンのバルブタイミングの位相を連続可変させるVTCと、バルブの開閉タイミングとリフト量を切り替えるVTEC、そして「RS」専用に採用された軽量フライホイールなどが貢献しているのでしょう。低速では、お行儀がよく、高回転では痛快!というエンジン・キャラクター。扱いやすく、気持ちの良いエンジンです。

操作感がよく、レブマッチも便利

6速MTは、操作に精度の良さを感じさせる動きを見せ、シフトするだけでも楽しい気分になります。クラッチの踏み応えは軽く、極低回転でのエンジンのトルクもあるので、変速は容易です。MTに慣れていない人でも乗りやすいのではないでしょうか。
また、変速時にエンジン回転数を自動であわせてくれるレブマッチシステムも搭載されています。たとえば、一定速度で直進しているときに、ギヤを現在よりも1速なり2速落とすと、自動で走行速度にあわせてエンジン回転数が高まります。MT操作に慣れていない人には助かる機能です。また、MT操作に慣れている人間でも、ワインディングなどでブレーキを踏みながらシフトダウンをし、コーナーへ向かうというシーンで、レブマッチシステムが気持ちよい走りをサポートしてくれます。変速でのギクシャクがなくなるため、ハンドル操作に集中することができます。スポーティな走りにも大きく貢献してくれる嬉しい機能と言えるでしょう。

スポーティさと快適さを見事に両立する足回り

足回りのバランスは絶妙です。柔らか過ぎず、硬すぎず。それでいて、4輪がしっかりと路面のうねりに追従します。いわゆるロードホールディングに優れた足と言えるでしょう。乗り心地の良さとスポーティさを上手に両立しています。6速MTを気分よく操作しているうちに、知らず知らずにペースが上がってしまう~、そんな走りを「シビックRS」を見せてくれました。

かつての大人気「シビック」を思い出す

筆者は50代であり昭和から平成初期にかけて「シビック」が若者に大人気であった時代を知っています。その当時と比べてみると、最新の「シビック」は、まったく違うクルマのように車格と質感が向上しています。ところが「シビックRS」を走らせてみれば、スポーティでワクワクした気分になってしまいました。これは、若者に大人気であった昔の「シビック」そのものだったのです。これならば、今の若者に人気があるのも納得です。

ただ、ひとつ気になったのは419万8700円という「シビックRS」の価格です。内容に対して高いとは言いませんが、昔の「シビック」のように、もう少し身近な価格で登場してほしかったというのも、偽ざる筆者の気持ち。でも、良いクルマでした。
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