スカイラインGT-RのBCNR33にだけ"C"が入る理由とは?何が違ったのか?

R33 Skyline GT-R

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現在も高い人気を誇る日産 スカイラインGT-Rシリーズ。第二世代スカイライン GT-RはR32~R34まで存在していますが、型番で見ると、BNR32、BCNR33、BNR34と、R33モデルのみ「BNR」に「C」が含まれています。この違いは何でしょうか?
Chapter
日産 スカイラインGT-Rとはどんな車種なのか
R32に続く第2世代スカイラインGT-R、R33とは
R33に搭載されたスーパーHICASの進化と「C」の関係
名は消えても最新車種で進化を続けるHICAS

日産 スカイラインGT-Rとはどんな車種なのか

スカイラインGT-Rのベースになった日産スカイラインは、1957年から生産されているセダンです。スカイラインGT-Rはそのスポーツモデルとして1969年に3代目スカイラインをベースに、初代PGC10型が誕生しました。その後、後期型のKPGC10型や、2代目のKPGC110型などが登場し、高い評価と人気を博しましたが、排ガス規制に対応できず、1973年に生産終了となりました。

その後、しばらくのあいだ「R」を冠するモデルは登場しませんでしたが、1989年にBNR32型の登場で「GT-R」の名が復活しました。そしてR33、R34と進化を続け、2002年に生産終了。2007年に後継車である日産GT-R(R35型)は、車名から「スカイライン」が外れ「GT-R」という独立した車種となりました。

R32に続く第2世代スカイラインGT-R、R33とは

R33GT-Rは、1989年に発売されたR32に続く平成の「第2世代GT-R」の1つとなります。1993年8月の第30回東京モーターショーでプロトタイプが発表され、新車発表は第13回東京オートサロンで行われました。東京オートサロンはカスタムカーのイベントとしても知られ、そこでメーカーから新車発表が行われるのは異例のことでした。

このR33からドイツのニュルブルクリンクでテスト・開発が行われ、プロトタイプモデルは7分59秒というラップを記録。先代BNR32から21秒もタイム短縮し「マイナス21秒のロマン」というキャッチコピーにも使われました。

エンジンは先代同様、名機RB26DETTを搭載。その性能を引き出すECUは8ビットから16ビットに進化しました。ターボチャージャーによる過給圧は0.75kg/cm²から約0.84kg/cm²まで上昇し、280PS/37.5kgfmを発揮しています。しかし、実際には自主規制値に無理やり抑え込んでいたとも言われ、ライトチューンで400PSを突破してしまうようなエンジンでした。

足回りにはブレンボ製ブレーキキャリパーを全車標準装備。車体は、R32よりも大型化され、全長で130mm、ホイールベースで105mm拡大し、ボディ剛性も高められています。このように、R33はR32を正常進化させたモデルといえます。では、R32の「BNR」と、R33の「BCNR」は、何を表しているのでしょうか?

R33に搭載されたスーパーHICASの進化と「C」の関係

HICAS(High Capacity Actively Controlled Suspension)は、日産自動車が開発した電子制御四輪操舵機構です。これは30km/h以上で走行中に、車速および車両横Gに応じて後輪を前輪と同位相にステアさせるシステムで、例えば左コーナーであれば後輪も左方向に動かすことで、スタビリティを向上させています。

HICASは1985年にR31型スカイラインに初搭載され、R32GT-Rにはその進化版として後輪を同位相に操舵する直前、一瞬だけ逆位相に動作し回頭性を向上させるスーパーHICASへと進化しました。 

そしてR33GT-Rではそれまでの油圧制御システムを簡素化と、応答性向上のためにモーターを使った電動アクチュエーターへ変更されました。これは、前述のスーパーHICASと区別するため「電動スーパーHICAS」と呼ばれ、R34GT-Rまで採用されました。

スカイラインGT-Rのベースとなったスカイラインのなかでも、R33シリーズにはGT-R以外にスポーツモデルが無く、四輪駆動モデル(GTS-4)にはHICASが採用されていません。また、スーパーHICASは当時の日産肝入りの技術だったということから、スーパーHICASを意味する「C」を型式に入れて、「BCNR」としたという説が有力です。

B…RB26DETTエンジン搭載の記号
C…HICAS搭載の記号
N…4WD(ATESSA E-TS)車の記号
R…R32~34を意味する

こうしたことから、R33GT-Rは「BCNR33」となっているようです。

ところが、R34では「BNR34」とまたCが抜けています。これについては、HICAS技術が定着したということ、またサーキットやスポーツ走行においてはネガティブな意見もあったことから「ハイキャスキャンセラー」等の製品も登場したため、ことさらHICASをアピールする必要はない…。という判断によりBNRに戻した、と言われています。

日産こだわりの四輪操舵技術ともいえるHICASですが、このようにR33以降は名前などから姿を消していくようになりました。その後、この技術はロストテクノロジーとなってしまったのでしょうか?

名は消えても最新車種で進化を続けるHICAS

R33やR34など第2世代GT-Rは、よりスポーツ走行性能を高めるために、ベースとなったスカイラインから独立し、日産 GT-Rへと進化しました。しかし、日産 GT-RではスーパーHICASは採用されていません。理由はより自然なハンドリングを実現するためとも言われていますが、HICASの技術そのものが絶滅してしまったわけではありません。

HICASは「4輪アクティブステア(4WAS)」と名称を変えて進化し、日産 フーガやV36型スカイラインに採用され、より自然な操舵感を実現していると言われています。 

R31型スカイラインの登場以降、4輪操舵(4WS)技術は、日産を始め、トヨタ、マツダ、ホンダなど、国産のほぼすべてのメーカーが採用するほど流行の技術でした。しかし、同位相、逆位相のコントロールや切り替えが難しいことやコストの問題から採用車種は徐々に減り、現在では一部の車種に搭載されるに留まっています。
R33は、第2世代GT-Rのなかではボディが大きく重いと評価されることもあり、軽快さでは前のモデルであるR32の方が優れていると言われることもあります。一方で、日産はそうした大きさや重さを補う最新の目玉装備としてスーパーHICASをアピールしたかったのかもしれません。実際に、R33はボディが拡大されたことにより、高速域ではR32よりも直進安定性や旋回姿勢が安定するなどの高い評価を得ています。

また、4WSは優れた旋回性能を実現できることから高性能スポーツカーに採用されていることも見逃せません。2017年に発売されたメルセデス・ベンツ AMG GT-RにはHICASと同様の4WSシステムが採用され、通常モデルよりも高い旋回性能を備えています。

次期型が噂されるR36型GT-Rは現行のR35を上回る性能を持つことが予想されており、登場の暁にはHICASから続く日産の4WS技術が採用されることもあるかもしれません。
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