スポーツクーペ「レクサス RC」を徹底解説!レクサスRC Fとの違いや魅力も紹介

レクサス RC F  Carbon Exterior package

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販売台数的には、ややニッチではあるものの、高級ブランドに欠かせないクーペとして開発されたレクサス RC。スポーツバージョンのレクサス RC Fとの共同開発であったため、サイズ的にはジャストにハマリそうなレクサス ISではなく、ひとクラス上のレクサス GSのプラットフォームを使って仕立てられている。

ここでは、レクサス RCの魅力や、本格派スポーツ仕様であるRC Fとの違いなどに迫ってみよう。

文・塚田 勝弘

塚田 勝弘|つかだ かつひろ

自動車雑誌、モノ系雑誌の新車担当編集者を約10年務めた後に独立し、フリーランスライターとしても10年が経過。自動車雑誌、ライフスタイル雑誌、Web媒体などで新車試乗記事やカーナビ、カーエレクトロニクスなどの記事を展開している。

塚田 勝弘
Chapter
ジャストサイズなレクサス ISではなく上級のGSがベース
セダンと異なるプロポーションによる乗降性
クーペ専用モデルとして登場
RCとRC Fの美点の違いは?
個性的なフォルムと熟成の走りが楽しめる

ジャストサイズなレクサス ISではなく上級のGSがベース

FFベースのレクサス ESの登場に伴い、RCと同じプラットフォームのGSが廃止される、という噂がネット上などで囁かれている。真偽は不明だが、レクサスのラインアップの中では、FRベースの貴重なミドルサイズクーペになっている。

レクサスのラインアップは、メルセデス・ベンツやBMW、アウディなどのドイツプレミアム御三家と比べると、数だけ見るとやや少なくなっていて、こうした色気のあるモデルは高級ブランドに不可欠といえるはずだ。
逆にいえば、ドイツプレミアム御三家は、隙間という隙間を執念で埋めるかのような商品ラインアップの拡充に励んできた。2ドアクーペやステーションワゴン(シューティングブレーク)、オープンモデルだけでなく、5ドアクーペやクーペ系クロスオーバーといえるSUV。

アウディA4オールロードクワトロなどのステーションワゴン派生型クロスオーバーなど、非常に多岐にわたっている。レクサスは、こうした世界の老舗高級ブランドよりも歴史が浅いこともあり、ヒットモデルを育てていくにはまだ時間も必要という見方もあるだろうし、一方でマネをする必要もないともいえる。

レクサスは、国内勢ではマツダのように、マイナーチェンジや年次改良を含めた細かな改良を各モデルに施していて、RC・RC Fを含めた最新のレクサスに乗れば熟成ぶりは十分に伝わってくる。

セダンと異なるプロポーションによる乗降性

2ドアクーペは、普段は2人までしか乗らない層であっても、後席に荷物を置きにくいなど、多少の実用性には目をつぶって乗るモデルだ。しかも、スポーティーなスタイリングと、高いハンドリング性能などを与えるべく、低く構えている。フロアやシートの着座位置も低く、乗降性も一般的なセダンよりも不利になりがち。

レクサス RCも例に漏れず、やや寝かされたAピラーに頭をぶつけないように気をつけながら、ワイドなサイドシル(ロッカーパネル)をまたがるように低めのシートに腰を落ち着ける。
逆にいえば、乗り込むまでの所作からしても特別感のあるモデルに乗っているという実感が得られ、スタイリングや走りなどのほかに、所有欲を満たす要素の1つになっているかもしれない。

さらには、分厚いロッカーパネルからも分かるように、レーザースクリューウェルディングやウェルドボンド(ボディ用接着剤)に加え、高剛性のガラス接着剤などの剛性向上やNVHの改善に寄与するメニューを加えている。

実際にステアリングを握っても、ISよりも高いボディ剛性感が得られるなど、走行フィールの面からも能力の高さがうかがえるのだ。

クーペ専用モデルとして登場

さて、RCとRC Fは2014年10月23日、同ブランドの「エモーショナルな走り」のイメージをけん引するクーペ専用モデルとして誕生した。車高をISよりも35mm低くし、前後ワイドフェンダーを与えることで、ワイド&ローの存在感のあるフォルムを得ている。

一方のRC Fは、5.0L V8のNAエンジンを搭載するスポーツクーペとして登場した。ダウンサイジングやライトサイジングエンジンが幅を利かせる今、少数派になっている大排気量の自然吸気は、このエンジンだけに惹かれて乗っても損はない、と言えるほどスムーズで爽快な加速フィールが味わえる。

筆者は、2019年のプレス向けオールラインアップ試乗会で数年ぶりにRC Fに乗る機会を得たが、ターボ車のような「ラグ(間)」を一切感じさせることなく、湧き出るトルク感と、ストレスなく回るエンジンの魅力を再確認できた。
登場から1年足らずの2015年9月には、RCに2.0L直噴ターボエンジン仕様の「RC200t」を追加すると共に、「RC350」「RC300h」の一部改良を敢行している。RC200tは、トランスミッションに8ATの「8-Speed SPDS」を採用し、欧州勢では常識になっているATの多段化を実施。

さらに、レクサスがRXなどの各モデルに積極的に採用しているヤマハ製の「パフォーマンスダンパー」もフロントに搭載されている。

なお「RC350“F SPORT”」にも制振材である同ダンパーがオプション設定されたほか、「RC200t“F SPORT”」「RC350“F SPORT”」には、トルセンLSDがオプション設定されたことで、旋回性と安全性向上に寄与している。

2015年9月、RC Fも同時に一部改良を受けた。足まわりのブラッシュアップを敢行。さらに、自慢の5.0L V8エンジンは、組み立て後に一基ずつ回転バランスを調整する専用工程が追加されている。
レクサスでは「アクセルを踏んだ瞬間から感じるV8エンジン本来の滑らかさとレスポンスの良さを、さらに高次元へと引き上げた。」としているが、先述したようにそのレスポンスの良さは、走行フィールとして十分に伝わってくる。

さらに、2016年8月の一部改良では、RCのボディカラーの変更。スピンドルグリルのカラーリング変更などの化粧直しを行っている。一方のRC Fは「NAVI・AI-AVS」標準化により乗り心地とハンドリングにより磨きをかけている。

また、フロントセクションのボディ剛性向上、電動パワーステアリングのチューニングなど、走りに関わる面をブラッシュアップした。2017年11月の一部改良では、先進安全装備の充実化がメインとなっている。予防安全パッケージ「Lexus Safety System +」の標準化を実施している。
さらに、RCでは「RC350」の3.5Lエンジンが最新の「2GR-FKS」に代わり力強い加速を維持しながら燃費も向上。また、2.0L直噴ターボ仕様RC200tの名称を「RC300」に変更している。さらに、インパネの先進性も高まったのが、2017年11月の改良で、カーナビ用のディスプレイが10.3インチにまで拡大された。

混雑や渋滞などの走行状況、走りのシーンや好みに応じて変更できる「ドライブモードセレクト」に「CUSTOM」モードが追加されたことで、パワートレーン・シャーシ・空調の各制御の組み合わせを自由にチョイスできるようになった。
そして、RCのエクステリアデザインに大きく手が加えられたのが、2018年10月のマイナーチェンジだ。レクサスの最上級クーペであるLCが登場したことにより、LC譲りのディテールが与えられ、スポーティな中にもひと目を惹くエレガントさが加わっている。

個人的には、このマイナーチェンジでRCは、デザイン性の高さでも、オリジナリティでも、ドイツプレミアム御三家とは一線を画すムードを得られたと感じられた。同時に、乗り心地やハンドリングなど、動的性能の質感向上も図られていて、従来やや硬めだった乗り味に大人の雰囲気が加わっている。

RCとRC Fの美点の違いは?

ただし、2.0L直噴ターボを積む「RC350」も、2.5Lエンジン+モーターのハイブリッド仕様である「RC300h」も、3.5L V6を積む「RC350」も“F SPORT”を選べば、比較的硬派な走りが楽しめる。

中でも318PS/380Nmというエンジンスペックの「RC350“F SPORT”」は、481PS/535Nmを誇るRC Fには遠く及ばないものの、スポーツモデルと表現できる走りを堪能できる。むしろ、ボディ剛性は高くてもハードな足まわりになるRC Fよりも日常使いには向いているのは間違いない。

個性的なフォルムと熟成の走りが楽しめる

さて、冒頭で紹介したように、レクサスはFFセダンのESが登場したことで、GSの今後を危惧する噂もある。一方で、3ドアクーペであるRCとRC Fは、最上級のLCと共に貴重なクーペであり、高級ブランドのラインアップに欠かせないピースといえる。現在は、熟成の域に達していて、価格に見合う満足感を与えてくれるはずだ。
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