トヨタのラインナップからマークXがなくなる理由

2019年4月24日、ついにその日はやって来ました。トヨタからマークXの特別仕様車「250S“Final Edition”」と「250S Four“Final Edition”」の設定が発表されたのです。

文・山本晋也

Chapter
2019年12月をもって生産終了になる
かつてはトヨタの売れ筋モデルだった
販売チャネルの統合で必然性を失った
トヨタ マークX 特別仕様車

2019年12月をもって生産終了になる

トヨタ コロナマークII 1968


マークX最後の特別仕様車の名前に“ファイナルエディション”とあることからもわかるように、マークXの最後を飾るスペシャルエディションです。そして特別仕様車の発表に合わせて、2019年12月をもって生産終了となることが正式にアナウンスされました。その前身といえるマークIIの誕生から51年、トヨタのミドルクラスFRセダンの終焉です。2代目のコロナ・マークIIから最終モデルのマークXまで6気筒エンジンをフロントに積んだFRレイアウトを守ってきましたが、その歴史が途絶えてしまうというわけです。

トヨタ マークX 2004


マークXと名前を変えた際に、マークIIとして10代目に当たるのでギリシャ数字で10にあたる「X」にしたという話がありました。しかし、思い返せば6気筒エンジンを積んだ最初のマークIIである2代目モデルから現在まで車両型式でのモデルを識別するアルファベットには「X」が使われています(例:現行型はGRX130系)。「X」というアルファベットは、まさにマークII・マークXシリーズのアイデンティティを示しているといえます。


またマークIIにはいくつもの兄弟モデルが用意されていた時期もあります。ファンでなくとも、「チェイサー」や「クレスタ」という名前に聞き覚えがあるという人は少なくないでしょう。とくにチェイサーはドリフトブームの中で大きな役割を果たしてきました。ちなみに、チェイサーとクレスタの名前は2004年に消え、その後継として一代限りとなった「ヴェロッサ」というモデルがありました。

かつてはトヨタの売れ筋モデルだった

トヨタ マークII 1984 4代目

4代目 トヨタ マークII


そんなマークII三兄弟の全盛期といえるのは1980年代後半~1990年代にかけての時期でしょうか。5代目のGX71系には日本初となる2.0L 6気筒ツインカム・ツインターボエンジンが搭載されましたし、6代目では2.5L 6気筒ツインカム・ツインターボエンジンが与えられました (JZX81系)。この頃、マークII三兄弟の合計で月販4万台を超えることも幾度かあったほど。日本では『一億総中流』といった前向きなマインドの中で、ある種の国民車的な立ち位置の4ドアセダンとしてポピュラーな存在になっていたのです。

トヨタ マークII 1984

5代目 トヨタ マークII


そして、この頃は直列6気筒エンジンを基本とするFRプラットフォームを持つクルマというのはユーザーの多くが素性の良さを認め、また走りの素直さから評価をしていた時代です。FF(前輪駆動)は増えていましたが「ミドルサイズから上のクラスはFRでなきゃ」という意識がユーザーには強かったといえます。

トヨタ マークII 6代目 1988

6代目 トヨタ マークII


しかしFRというのはフロント側のトランスミッションからリアデフへ動力を伝えるプロペラシャフトが必要で、そのためキャビンの中央に通り道となるトンネルが出っ張ってしまいます。後席中央は足の置き場に困りますし、トランクはリアデフのおかげで床が高くなってしまいがちです。パッケージングとしてはけっして有利なレイアウトではありません。

トヨタ マークII 7代目 1992

7代目 トヨタ マークII


そのためミニバンが増え、フラットフロアや低床フロアといったキャビンの広さが評価ポイントになってくるとFRセダンのネガが目立ってきます。操舵輪と駆動輪を分けていることのナチュラルさといった要素はクルマ選びにおけるプライオリティを下げていったのです。当然、FRセダンの市場は小さくなっていきます。セダンであっても後席の広いFFモデルのほうが評価される時代になっていきました。

販売チャネルの統合で必然性を失った

トヨタ マークX ファイナルエディション


それでもFRにこだわるユーザーはいるわけですが、トヨタにはクラウンというFRサルーンの王道といえるモデルがありますから、それで十分という市場サイズになっていったのです。ただし、トヨタには複数の販売チャネルがあります。クラウンが基本的にトヨタ店の専売モデルである限り、トヨペット店で扱うマークXを廃止するわけにはいかないという事情がありました。

トヨタ クラウン

15代目 トヨタ クラウン


しかし、日本の自動車市場がシュリンクするのに対応して、トヨタは販売チャネルの再構築を始めています。簡単にいえば、どの店でもすべてのトヨタ車を買えるようにするというものです。こうなるとクラウンとマークXという2つの“国内専売モデル”をラインナップしておく必要はなくなります。そして、どちらかを残すとなれば、クラウンという結論になるのも自然な話でしょう。

新型カムリ

10代目 トヨタ カムリ


そういうわけでマークXは生産終了となります。おそらく販売現場においては既存のマークXユーザーの乗り換えとしては、FRにこだわる人にはクラウンを勧めていくことになるのでしょう。駆動方式にこだわらないのであればセダンと思えないほど広いキャビンのカムリが選択肢にあがってきます。ただしマークXの売れ筋価格帯が300~350万円あたりであることを考えると、クラウンは受け皿となるには価格ゾーンが上がりすぎるという面は否めません。やはりFRプラットフォームは、それだけでプレミアムなのです。

マークX“GRMN” 2015

トヨタ マークX GRMN 2015年仕様


その意味では、比較的アフォーダブルな価格帯のFRセダンという「マークX」には代えがたい価値がありました。マークXが新車ラインナップから消えてしまうというのは残念でなりません。