30年経っても超えられない?歴代最速軽自動車3選
更新日:2024.09.09
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30年以上前のモデルが達成した速さを、最新の軽自動車でも塗替えられない。ここでは、四輪独立懸架サスと4気筒エンジンでサーキット最速マシンとなった「スバル ヴィヴィオ」と、前面投影面積の小ささとミドシップレイアウトが最高速に有利すぎた「オートザム AZ-1」、そしてコーナリング性能は現代のタイヤとボディ設計で"最新が最良"を実現する「ホンダ S660」を紹介しよう。
文・山本晋也
文・山本晋也
1992年生まれがすごい!
軽自動車の進化はめざましい。日本のモータリゼーション黎明期には360ccだったエンジン排気量が、550ccになり、660ccになり、そしてボディが大きくなって現在に至るが、1998年から始まった現行規格においても、ここ数年でのレベルアップ幅は明らかに大きく、快適性は増している。
全体の傾向としてホイールベースが伸びたことで高速道路での安定感も増したし、変速比幅の広いCVTを使うことで街乗り加速と高速巡行のバランスも取っている。また、エンジン自体のパフォーマンスも上がっており、NA(自然吸気)エンジンであっても出力的に不満を感じないレベルになっている。
とくに、いまや国民車的存在のホンダN-BOXの進化幅は大きく、そうしたトップランナーが軽自動車全体のレベルを引き上げている。しかし、軽自動車の絶対的な速さという点においては、それほど進化を感じない。
むしろ、1998年以前の旧規格のほうが速かった記憶がある。とくに1990年代初頭は軽自動車のイメージリーダーとしてスポーツ性が求められた時代であり、いまも中古市場で人気の高い2シーターのABCトリオ(オートザム AZ-1、ホンダ ビート、スズキ カプチーノ)が登場したほどだった。ボディ幅が小さいためトレッドは狭いが、逆にコンパクトなボディは軽さという武器を得ることもできた。
結論を言えば、現代の軽自動車では1990年代前半に登場したスポーツモデルを速さで超えることはできていないのだ。
全体の傾向としてホイールベースが伸びたことで高速道路での安定感も増したし、変速比幅の広いCVTを使うことで街乗り加速と高速巡行のバランスも取っている。また、エンジン自体のパフォーマンスも上がっており、NA(自然吸気)エンジンであっても出力的に不満を感じないレベルになっている。
とくに、いまや国民車的存在のホンダN-BOXの進化幅は大きく、そうしたトップランナーが軽自動車全体のレベルを引き上げている。しかし、軽自動車の絶対的な速さという点においては、それほど進化を感じない。
むしろ、1998年以前の旧規格のほうが速かった記憶がある。とくに1990年代初頭は軽自動車のイメージリーダーとしてスポーツ性が求められた時代であり、いまも中古市場で人気の高い2シーターのABCトリオ(オートザム AZ-1、ホンダ ビート、スズキ カプチーノ)が登場したほどだった。ボディ幅が小さいためトレッドは狭いが、逆にコンパクトなボディは軽さという武器を得ることもできた。
結論を言えば、現代の軽自動車では1990年代前半に登場したスポーツモデルを速さで超えることはできていないのだ。
サーキット最速マシン「スバル ヴィヴィオ」
車種名でいえば、前述したABCトリオ、ダイハツ ミラターボTR-XX、スズキ アルトワークスといったモデルが競っていた1990年代前半の軽スポーツマーケットにおいて、サーキット走行でのラップタイムをリードしていたのは1992年に誕生したスバル ヴィヴィオだった。
660ccながら4気筒DOHCエンジンに、インタークーラー付きスーパーチャージャーを組み合わせたエンジンは、カタログ値こそ自主規制の64馬力だったが、実際にはもっとパワーを絞り出していた。とくに後期型で登場したハイオク仕様のスーパーチャージャーエンジンはカタログ値の4割増しともいわれるほどパワフルなエンジンだった。
しかも、4輪ストラットサスペンションのシャシーと組み合わせていたのだから、エンジンだけでなくコーナリング性能も含めたトータルでの速さも持っていた。舗装路での速さはFFに分があったが、雪道など滑りやすい状況では4WDの安定性と速さも魅力となっていたモデルだ。
ノーマル状態で比べれば、3気筒ターボ、後輪リジッドサスペンションのアルトワークス、4気筒ターボで後輪セミトレーリング式サスペンションのミラターボといったライバルを蹴散らしたのが、ヴィヴィオだ。もっとも、スーパーチャージャーはチューニングの伸びしろが少なめで、お金をかけて改造したターボエンジンには歯が立たないという面もあったが…。
660ccながら4気筒DOHCエンジンに、インタークーラー付きスーパーチャージャーを組み合わせたエンジンは、カタログ値こそ自主規制の64馬力だったが、実際にはもっとパワーを絞り出していた。とくに後期型で登場したハイオク仕様のスーパーチャージャーエンジンはカタログ値の4割増しともいわれるほどパワフルなエンジンだった。
しかも、4輪ストラットサスペンションのシャシーと組み合わせていたのだから、エンジンだけでなくコーナリング性能も含めたトータルでの速さも持っていた。舗装路での速さはFFに分があったが、雪道など滑りやすい状況では4WDの安定性と速さも魅力となっていたモデルだ。
ノーマル状態で比べれば、3気筒ターボ、後輪リジッドサスペンションのアルトワークス、4気筒ターボで後輪セミトレーリング式サスペンションのミラターボといったライバルを蹴散らしたのが、ヴィヴィオだ。もっとも、スーパーチャージャーはチューニングの伸びしろが少なめで、お金をかけて改造したターボエンジンには歯が立たないという面もあったが…。
最速180km/h超え「オートザム(マツダ)AZ-1」
サーキットでのラップタイムのようなトータルバランスが求められる速さではヴィヴィオのバランスが光ったが、最高速という点でいえば前述したABCトリオの面々は有利な属性を持っていた。それは背が低く、前面投影面積が小さいため、空気抵抗が少ないことによる。
とくに、その点で有利だったのはABCトリオでは最後発となる1992年に生まれたオートザム(マツダ)AZ-1である。ガルウィングボディのミッドシップにスズキ製3気筒ターボを搭載した、このマイクロスポーツカーは140km/hで作動する速度リミッターを解除すれば180km/hを軽く突破するポテンシャルを持っていた。これほどの最高速性能を持つ軽自動車は、現時点では後にも先にもAZ-1だけといえる。
ただし、フロント軸重が軽いという車体特性もあって、最高速領域になるとフロントタイヤが浮き気味となり、ステアリングから伝わる接地感が失われるという欠点もあった。速いけれど、決して安全とはいえないスリリングなクルマがAZ-1だったのである。
ちなみに、ABCトリオでもっとも軽量なのは後期型のカプチーノで690kg。ハイトワゴン全盛の軽自動車基準では軽量に思えるが、じつは現行型アルトワークスは、この当時の2シーターモデルよりも軽量な670kgとなっていたりする。
また、軽自動車というカテゴリーでいえば、ケータハム セブン160というスズキのエンジンを積んだスポーツカーは500kgを切る車重。軽さという点でいえば、現代でも軽自動車が最速を競っていた時代のフィーリングを味わえそうだ。
とくに、その点で有利だったのはABCトリオでは最後発となる1992年に生まれたオートザム(マツダ)AZ-1である。ガルウィングボディのミッドシップにスズキ製3気筒ターボを搭載した、このマイクロスポーツカーは140km/hで作動する速度リミッターを解除すれば180km/hを軽く突破するポテンシャルを持っていた。これほどの最高速性能を持つ軽自動車は、現時点では後にも先にもAZ-1だけといえる。
ただし、フロント軸重が軽いという車体特性もあって、最高速領域になるとフロントタイヤが浮き気味となり、ステアリングから伝わる接地感が失われるという欠点もあった。速いけれど、決して安全とはいえないスリリングなクルマがAZ-1だったのである。
ちなみに、ABCトリオでもっとも軽量なのは後期型のカプチーノで690kg。ハイトワゴン全盛の軽自動車基準では軽量に思えるが、じつは現行型アルトワークスは、この当時の2シーターモデルよりも軽量な670kgとなっていたりする。
また、軽自動車というカテゴリーでいえば、ケータハム セブン160というスズキのエンジンを積んだスポーツカーは500kgを切る車重。軽さという点でいえば、現代でも軽自動車が最速を競っていた時代のフィーリングを味わえそうだ。
コーナリングが自慢「ホンダ S660」
最後にコーナリング性能だけに特化して注目したときに最速といえる軽自動車は何かといえば、それは現在も新車で購入できるホンダS660で決まりだ。
ノーマルで、アドバン・ネオバというハイグリップタイヤを履くが、さらに後輪のタイヤサイズが『195/45R16』という登録車並みの太さ。そして運動性能を追求した専用のミッドシップ・プラットフォームというのだから条件としては軽自動車史上最強のコーナリングマシンと呼ぶにふさわしい。
実際、メーカーの試験では定常円旋回で1.0Gを超える性能を確認したという。あまりの遠心力のためにエンジン内のオイルが片寄るという現象が起き、その対策が求められたというエピソードを持つほどだ。
そのコーナリング性能は、軽自動車という枠を超え、現代のスポーツカーとしても高いレベルにある。惜しむらくはボディ剛性や安全性能のために車重が800kgを超えてしまっている点。同等のボディ剛性を維持したまま、100kg以上の軽量化ができれば、サーキットラップタイムにおいても史上最速の冠を戴くことができるだろう。
ノーマルで、アドバン・ネオバというハイグリップタイヤを履くが、さらに後輪のタイヤサイズが『195/45R16』という登録車並みの太さ。そして運動性能を追求した専用のミッドシップ・プラットフォームというのだから条件としては軽自動車史上最強のコーナリングマシンと呼ぶにふさわしい。
実際、メーカーの試験では定常円旋回で1.0Gを超える性能を確認したという。あまりの遠心力のためにエンジン内のオイルが片寄るという現象が起き、その対策が求められたというエピソードを持つほどだ。
そのコーナリング性能は、軽自動車という枠を超え、現代のスポーツカーとしても高いレベルにある。惜しむらくはボディ剛性や安全性能のために車重が800kgを超えてしまっている点。同等のボディ剛性を維持したまま、100kg以上の軽量化ができれば、サーキットラップタイムにおいても史上最速の冠を戴くことができるだろう。
山本晋也
自動車メディア業界に足を踏みいれて四半世紀。いくつかの自動車雑誌で編集長を務めた後フリーランスへ転身。近年は自動車コミュニケータ、自動車コラムニストとして活動している。ジェンダーフリーを意識した切り口で自動車が持つメカニカルな魅力を伝えることを模索中。