誕生から28年!いまもなお愛される初代NSX

ホンダ NSX 初代

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ホンダ NSXを語る際、日本のバブル景気が市場に大きな影響を与えていた事実は避けて通れません。初代NA1型の発売は、1990年。バブル絶頂の頃に開発されていただけあり、その内容は野心に溢れていました。後年「唯一の国産スーパーカー」とまで言われた贅を尽くした名車の誕生です。

文・山里真元|日本スーパーカー協会 事務局 ライティングGT代表ライター

山里 真元|やまざと まさゆき

日本スーパーカー協会 事務局 ライティングGT代表ライター。国内最大手IT社員→ITコンサルティング会社創業を経て、2010年より趣味の車好きが高じて主にスーパーカーやクラシックカーなどのニッチな車の売買相談を開始。インポーター各社とのパイプも太く、国内外新型クラシック問わず幅広く相談を受けている。趣味のツーリングでは、地域密着型のスーパーカークラブを運営し、日本スーパーカー協会事務局長としても活動中。

山里 真元
Chapter
モータースポーツから市販車へ
革新的ボディ構成とエンジン
レイアウトデザインの意味
現在もなお愛され続ける初代NSX
初代NSX 画像ギャラリー

モータースポーツから市販車へ

1980年代、日本のモータリゼーション黎明期に4輪に参入したホンダは、性能や品質という点ではすでに世界トップレベルに近づいていました。しかし、自動車の持つ官能要素やスポーツ性能を訴える、いわゆるスーパーカーのような車両は存在せず、欧米勢に太刀打ちできていませんでした。

そこでF1を筆頭とするモータースポーツでの活躍を武器に、さらなるブランドイメージの向上をかけて、莫大な資金を投じて”最高のスポーツカー”開発に挑みます。

開発にあたっては、世界に君臨する高性能な車たち、特にフェラーリを意識していたのは有名な話です。そんなライバルを越えることが目標になっていました。

革新的ボディ構成とエンジン

スポーツカーの性能は乱暴に言ってしまえば、「走る」「曲がる」「止まる」しかありません。これを極めるのが大変なわけですが、そのための大きな武器となったのがNSX最大の特徴とも言えるオールアルミのモノコックボディです。

市販車としては、当時、世界でも類を見ない革新的な構造で、車体の軽量化と高剛性の両立を可能としました。量産にあたっては、それまで使用されていた鋼板やプラスチックと違い、成型や溶接方法など製造には高い技術力が必要でした。また手作業のプロセスが多いなど、課題も多発したと言います。

走行試験に選んだステージのひとつは、現在でも世界中の自動車メーカーが使用するドイツのニュルブルクリンク。荒れた路面を持つ世界的にも過酷なコースとして有名です。サーキット近くに専用の工場を建設してテストを繰り返すことで、ボディ剛性やスタビリティなどを煮詰めていきます。
軽量なボディに搭載されるエンジンは、3.0リッターV型6気筒のVTEC(のちに3.2Lに拡大)。NAながら当時の自主規制値いっぱいの280psを達成しています。

初代NSXのC30Aエンジンのカタログスペックを見てみると、最高出力280ps/7,300rpm、最大トルク30.0kgm/5,400rpm。自然吸気エンジンらしい高回転です。

低回転時と高回転時の吸気効率を最適化するホンダ自慢の可変バルブタイミング機構VTECは、その特徴的な吸気音が他メーカーのスポーツカーに無い官能要素になっています。

NSX開発のきっかけとなった”ミドシップレイアウト車両の研究”にのっとり、車体の中心に近い場所にエンジンを搭載し後輪を駆動する方式を採用しています。このミドシップレイアウトは、ハンドリング性能を求めるにはもっとも優れています。

レイアウトデザインの意味

NSXのパッケージを仔細に眺めると、コクピットの後部に搭載されたV6エンジンは横置きで限られた空間に収められ、さらにエンジンルーム内の補器類は排気系からの熱害を和らげるように配置し、構成部品の寿命までも考慮されていることがよくわかります。

また無理のない着座姿勢の運転席は、既存のスポーツカーが「車が主役で存在している」のに対して、ドライバーに無理強いをしない扱い易さにも重点を置いていたことがわかります。

このようなポイントは、硬派、軟派という話ではなく、ホンダが自社のブランドイメージを謙虚にとらえ、かつ世界に通用する価値観を創出するため、深く思慮していことが垣間見えます。

現在もなお愛され続ける初代NSX

じつのところ、筆者はNSXを”スーパーカー”だとは思っていません。個人的な解釈ですが、スーパーカーとは装備も性能も不条理なハイスペックを備えていて、その他どこか我慢しなければいけない欠陥があります。もちろんそれが魅力のひとつでもあるのですが。

NSXはボディ構造からエンジン、デザインまで合理的に存在が成り立っています。ホンダは、「世界をライバルに!」と言いながら、ホンダらしさを大事に表現することで人々に広く受け入れられる結果となりました。

当時みんなのヒーローだったアイルトン・セナや中嶋悟も開発ドライバーとして関わり、日本がモータースポーツに沸いていた時期でもあったことは、当時子供だった筆者も覚えています。

バブルの好景気でみんなが夢や熱に浮かされていたなか、それゆえに妥協なく開発できた贅沢なNSX。そんななかで生まれたマシンだからこそ、現在でも根強く多くのファンから愛され続けるのではないでしょうか。

この思いは日本だけではなく、海外にも伝播しており、販売終了から久しい2018年現在、他にはない価値として世界中で愛されています。

初代NSX 画像ギャラリー


「昔は良かった」などというノスタルジーを押し付けるつもりはありません。しかし後のバブル崩壊や世界金融危機、そして自動車文化の変移を経て多くのファンと蜜月を過ごしてきた初代NSXは際立つ存在となりました。

最新の高性能車でも、クラシックでもないNSXは、NSXという乗り物としてこれからも人々の記憶に強く残っていくことでしょう。

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