エアロダイナミクスとは?F1ではダウンフォースだけど乗用車ではリフトフォース?
更新日:2024.09.09
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2017年、新東名高速道の最高速度が110km/hへと試験的に上げられました。クルマの速度が上がるほど、無視できなくなるのが空気の力です。空気抵抗は燃費に影響しますが、なかでも大きな影響をおよぼすのが、クルマに働く揚力(リフトフォース)です。今回は、このリフトフォースについて見ていきましょう。
文・吉川賢一
文・吉川賢一
そもそもエアロダイナミクスとは?
エアロダイナミクスとは空気力学のこと。車両の速度に応じた抵抗力が車体に対して働き、燃費が悪化したり、クルマを浮かび上がらせたりと、影響をおよぼします。
たとえば、ミニバンのような四角いボディのクルマでは、前面面積が多く、空気抵抗も大きいです。反対に、流れるようなボディデザインのクルマは、空気抵抗を受ける前面面積が少なく、また車両後端での空気の剥離をコントロールすることで、空気抵抗(ドラッグフォース)を下げることができています。
さらに、100分の1秒や1000分の1秒を競い合うF1では、上下方向に働くリフトフォース・ダウンフォースを重視した設計を行っています。F1はパワートレインの出力が制限されているため、わずかな空力特性の差がタイム差として現れてしまうほど重要なファクターなのです。
たとえば、ミニバンのような四角いボディのクルマでは、前面面積が多く、空気抵抗も大きいです。反対に、流れるようなボディデザインのクルマは、空気抵抗を受ける前面面積が少なく、また車両後端での空気の剥離をコントロールすることで、空気抵抗(ドラッグフォース)を下げることができています。
さらに、100分の1秒や1000分の1秒を競い合うF1では、上下方向に働くリフトフォース・ダウンフォースを重視した設計を行っています。F1はパワートレインの出力が制限されているため、わずかな空力特性の差がタイム差として現れてしまうほど重要なファクターなのです。
F1におけるダウンフォースとは?
車体が軽いF1の場合、空力によるダウンフォースが低いと、タイヤのグリップを生かすことができず、コーナリング時に横滑りが生じやすくなります。そのため、車両を路面へおしつけるダウンフォースを使って接地荷重を増やし、高いグリップ力を発生しています。しかし、ダウンフォースを高めすぎると、空気抵抗が大きくなり今度は最高速度に悪影響が生じます。
そのため、コーナーの多いコースではダウンフォース確保を優先し、直線の多い高速コースでは空気抵抗低減を行うことが、一般的です。ただし、最終的な設定は、ドライバーの好みによる部分が多いと言われています。
そのため、コーナーの多いコースではダウンフォース確保を優先し、直線の多い高速コースでは空気抵抗低減を行うことが、一般的です。ただし、最終的な設定は、ドライバーの好みによる部分が多いと言われています。
乗用車にリアスポイラーを付ける目的とは?
昨今は、セダンやスポーツカーでなくても、ミニバンや軽自動車にもリアスポイラが付いていることがあります。このリアスポイラが装着されている理由って、なんだと思いますか?
目的は、高速走行時のリフトを抑えることです。市販車の場合、一部の特殊な車両をのぞいては、燃費は重要な性能です。そのため、ダウンフォースを発生させるような空力特性は、空気抵抗となってしまい、燃費に影響をおよぼしてしまいます。そのため、空気抵抗を極力下げつつ、かつ安定性を確保するためにリフトをなくす特性を狙います。
過去に「ゼロリフト」というキーワードが流行した時代がありました。これは、燃費と安定性のバランスを決める思想でした。ドイツのアウトバーンのような200km/hを超える速度で走るシーンでは、車両の安定性を保つことも非常に大切なことなのです。
もちろん、ボディ形状によっては、ゼロリフトを実現することが難しい車両もありますが、いずれもリフト力を抑える方向で設計がなされています。
冒頭に紹介したような、新東名高速の110km/h程度の速度であっても、感度が高いドライバーであればリアスポイラーの効果を感じることはできます。
目的は、高速走行時のリフトを抑えることです。市販車の場合、一部の特殊な車両をのぞいては、燃費は重要な性能です。そのため、ダウンフォースを発生させるような空力特性は、空気抵抗となってしまい、燃費に影響をおよぼしてしまいます。そのため、空気抵抗を極力下げつつ、かつ安定性を確保するためにリフトをなくす特性を狙います。
過去に「ゼロリフト」というキーワードが流行した時代がありました。これは、燃費と安定性のバランスを決める思想でした。ドイツのアウトバーンのような200km/hを超える速度で走るシーンでは、車両の安定性を保つことも非常に大切なことなのです。
もちろん、ボディ形状によっては、ゼロリフトを実現することが難しい車両もありますが、いずれもリフト力を抑える方向で設計がなされています。
冒頭に紹介したような、新東名高速の110km/h程度の速度であっても、感度が高いドライバーであればリアスポイラーの効果を感じることはできます。
エアロパーツのなかにはデザイン性を重視したようなものもありますが、自動車メーカーではリアスポイラーの高さを、ミリ単位で変更して車両評価を行い、最終形状を決めています。
とてもシビアな設計の世界ですが、ドライバーの安心感の向上と、燃費を低減するために、空力設計者は日々検討を行っているのです。
吉川賢一
モーターエンジニア兼YouTubeクリエイター。11年間、日産自動車にて操縦安定性-乗心地の性能技術開発を担当。次世代車の先行開発を経て、スカイラインやフーガ等のFR高級車開発に従事。その後、クルマの持つ「本音と建前」を情報発信していきたいと考え、2016年10月に日産自動車を退職。ライター兼YouTube動画作成をしながら、モータージャーナリストへのキャリア形成を目指している。