40代の大いなる"原チャリ" ―BMW C600 Sport

アヘッド BMW C600 Sport

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乗り出してすぐに感じたことは、ゲルマン的なシート高と、少し多めの小遣いを許される大人なら、これは絶対に所持すべき「大人ツール」だという直観だった。それは500mも走らないうちに直観から確信に変わる。

text:大鶴義丹 photo:渕本智信 [aheadアーカイブス vol.121 2012年12月号]
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40代の大いなる"原チャリ" ―BMW C600 Sport
BMW 「C600 Sport」

40代の大いなる"原チャリ" ―BMW C600 Sport

一つ一つのマシンの動きが分かり易い言葉で物語っていた。洒落で作った訳ではない、本気であると。600㏄のエンジンを全開にしてみればすぐに分かる。車体構成から乗り味まで、全てがBМW的な哲学で嫌味な程に溢れているのだ。

BМWとしてはスクーターという表現は使わず「Urban Mobility」ということだが、まあ意訳すれば、まさにそれこそが言うところの「スクーター」じゃないかと、ひとりツッこみをした。

もちろん、こいつがスクーターという世界観の遥か彼方にあることは、アクセルをひとひねりして、角を三つも曲がったら「まともなバイク乗り」ならすぐに分かることだ。

ビックリするくらいの加速をして、鋼のような剛性感でグイグイと曲がって、ABSでドカンと止まる。その性能はとてもよくできたスーパースポーツ以外何物でもなく、そういう意味では決して、正式アナウンスの通りスクーターなどではない。

だが、私たちが知る大型バイクなのかと言われたら、どこかその範囲ではない気もする。操作の簡易さからは想像もできないような高性能に、バイクというよりは「不思議な乗りモノ」という感じだ。

だが同時にどこか懐かしい気持ちにもなった。その気持ちの出どころは何だろうかと、さらに角を曲がり続けると、生まれて初めて「原チャリ」に乗ったときのことを思い出した。

16歳の自分がアクセルを捻った瞬間、未知の力に蹴飛ばされたかのような感覚が貫いていった。その感覚は、当たり前のように1000㏄以上のバイクを乗り回している故に、いつの間にか忘れていたものだ。難しい理屈を考えずに、とりあえずアクセルをひねるだけ。それが始まりであり、全部の答というスタイルだ。

今回は市街地の移動と高速道路だけしか体験できなかったが、峠道を含んだショートツーリングをしたら最高のツールだと予想できる。そのときもやはり同じように、難しく考えずに楽しむというスタイルを可能にしてくれるだろう。

バイク乗りは、自由を謳いながら、意外と理屈っぽいところや無駄なこだわりに囚われ過ぎるきらいがある。それはバイク乗りにとって必須でもあるのだが、ときには、こんなマシンでその枠を叩き壊すことも楽しい。

いつの間にか凝り固まっているその枠を取り除くと、何のためにバイクに乗るのか、何故思いを込めてアクセルをひねってしまうのかという、「原チャリ」と共に見ていた原風景に気持ちは戻っていく。

「アクセルを開けろ、それだけ」

あのとき、原チャリを持っていた友達が、ビビっている私にそんなことを言った。

BMW 「C600 Sport」

BMWが考えるUrban Mobilityを形にした、初のビッグスクーター。C600 Sportの他、長距離移動を想定したC650GTも同時発売されている。

車両本体価格:¥1,120,000
○総排気量:647cc
○最高出力:44kW(60ps)/7,500rpm
○最大トルク:66Nm/6,000rpm

■BMWカスタマー・インタラクション・センター
TEL:0120(269)437 
www.bmw-motorrad.jp

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text:大鶴義丹/Gitan Ohtsuru
1968年生まれ。俳優・監督・作家。知る人ぞ知る“熱き”バイク乗りである。本人によるブログ「不思議の毎日」はameblo.jp/gitan1968
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