DUCATI Hypermotard フルモデルチェンジした 噂のハイパーモタード
更新日:2024.09.09
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ドゥカティのハイパーモタードがフルモデルチェンジを果たした。エンジン、フレーム、サスペンションとあらゆるパーツが新設計され、無駄な贅肉の一切がそぎ落とされているため、スリムそのもの。従来のモデルもかなりのものだったが、そのスパルタンさは現行ラインアップの中でもかなり際立っている。
text:伊丹孝裕 [aheadアーカイブス vol.127 2013年6月号]
text:伊丹孝裕 [aheadアーカイブス vol.127 2013年6月号]
フルモデルチェンジした 噂のハイパーモタード DUCATI Hypermotard
その印象は、シートにまたがった瞬間から始まる。なぜなら、日本仕様はシート高が下げられているとはいえ、平均的な体格のライダーでは、片足を地面につける時でさえ、シートからお尻をずらさなければならないからだ。
のっけから手強いが、そもそもドゥカティとは生粋のスポーツバイクメーカーであり、決してライダーフレンドリーではなかったことを思い出させてくれる。目標に掲げたスペックやコンセプトに対して猛進する、理想主義的なバイク作りを真骨頂としてきたのだ。
ちょうど20年前、'93年に発表された916あたりまでが特にそうだった。「レースで勝つ」。ただそれだけのために開発された916は、実際、世界中のサーキットで連戦連勝。セールスとブランドバリューも飛躍的に向上させた一方、皮肉にも売れれば売れるほど、ユーザーからの厳しい声にもさらされた。
曰く「乗りづらい」、「細すぎる」、「長距離に使えない」と、それらはモデルの出自を無視した言いがかりのようなものだったが、新時代を前にして、「それがドゥカティですから」と突き放せない状況にも置かれていたのだ。
結果、どのモデルも年々扱い易さを増し、モデルレンジも拡大。これはこれで大成功し、選り取り見取りのモデルが選べるフルラインアップメーカーへと躍進して現在に至る。
そんな今だからこそ、高いスポーツ性ありきのハイパーモタードの存在感が輝いて見える。
それはエンジンも同様で、完全新開発の水冷Lツインの吹け上がりの鋭さは過激そのものだ。トルク型でもパワー重視でもない821ccという絶妙な排気量は、スロットルワークに対して間髪入れずに反応。そのまま開ければ、7000rpm付近から爆発的な加速感とともにパワーバンドへと突入していく様は病みつきになるほど刺激的だ。
高回転をキープすることによってスポーツライディングの醍醐味を感じたい、もしくはそれができるライダーにとって、このミドルツインは最良の選択になるだろう。
言い換えれば、ハイパーモタードのポテンシャルを引き出すには、それなりのスキルが要求されるが、それは最もアグレッシブなライディングモードを選んだ時に限られる。
これはボタンひとつでエンジン特性が選べるマッピングのひとつで、スタンダードモデルにはスポーツ/ツーリング/アーバン、上級グレードのSPにはレース/スポーツ/ウェットという3つのモードを装備。パワーとその出力特性に加え、トラクションコントロールやABSの介入度が選択できるというものだ。
例えばSPのレースモードでは、110hpのパワーが瞬時に引き出せる一方、ウェットモードに切り替えれば、それが75hpに制限されてレスポンスも穏やかになるなど、ライダーのスキルや路面状況に応じてキャラクターを変化させられる画期的な電子デバイスなのだ。
スタンダードとSPでは、こうしたライディングモードの他、足回りの装備も異なっている。
前者にはフロントにカヤバ、リヤにザックスのサスペンションが装備され、しなやかなストロークが与えられている一方、後者にはサーキットでの、よりハードな荷重にも対応させるべくフロントにマルゾッキ、リヤにはオーリンズを装備。タイヤもワンランク、ハイグリップなものが装着されている。
乗ればもちろんのこと、アスリートのように鍛え上げられたスタイルを目の前にしただけでもテンションが上がるハイパーモタードは、いつでもどこでもライダーのスポーツマインドを呼び覚ましてくれる、言わばスイッチONバイクである。
そして、もう一台忘れてはならないのがハイパーストラーダだ。
これは、大型のウインドシールドやパニアケースといったツーリング装備の他、専用のシートやサスペンションによって、足つき性と安定性を向上させたモデルで、ハイパーモタードの軽快な雰囲気のまま、長距離にも対応という日本の道路事情にマッチした新ツアラーである。
つまり、かつてのハイパーモタードは、ライダーを選んだが、この新型はそうした一面を残しつつ、あらゆるステージとライダーをカバーする間口の広さも身につけて生まれ変わったというわけだ。
サーキットをこなすSP、ストリートが快適なスタンダード、旅にぴったりなストラーダ。それぞれのコンセプトは明確ながら、どれを選ぶかは悩ましい問題でもある。
のっけから手強いが、そもそもドゥカティとは生粋のスポーツバイクメーカーであり、決してライダーフレンドリーではなかったことを思い出させてくれる。目標に掲げたスペックやコンセプトに対して猛進する、理想主義的なバイク作りを真骨頂としてきたのだ。
ちょうど20年前、'93年に発表された916あたりまでが特にそうだった。「レースで勝つ」。ただそれだけのために開発された916は、実際、世界中のサーキットで連戦連勝。セールスとブランドバリューも飛躍的に向上させた一方、皮肉にも売れれば売れるほど、ユーザーからの厳しい声にもさらされた。
曰く「乗りづらい」、「細すぎる」、「長距離に使えない」と、それらはモデルの出自を無視した言いがかりのようなものだったが、新時代を前にして、「それがドゥカティですから」と突き放せない状況にも置かれていたのだ。
結果、どのモデルも年々扱い易さを増し、モデルレンジも拡大。これはこれで大成功し、選り取り見取りのモデルが選べるフルラインアップメーカーへと躍進して現在に至る。
そんな今だからこそ、高いスポーツ性ありきのハイパーモタードの存在感が輝いて見える。
それはエンジンも同様で、完全新開発の水冷Lツインの吹け上がりの鋭さは過激そのものだ。トルク型でもパワー重視でもない821ccという絶妙な排気量は、スロットルワークに対して間髪入れずに反応。そのまま開ければ、7000rpm付近から爆発的な加速感とともにパワーバンドへと突入していく様は病みつきになるほど刺激的だ。
高回転をキープすることによってスポーツライディングの醍醐味を感じたい、もしくはそれができるライダーにとって、このミドルツインは最良の選択になるだろう。
言い換えれば、ハイパーモタードのポテンシャルを引き出すには、それなりのスキルが要求されるが、それは最もアグレッシブなライディングモードを選んだ時に限られる。
これはボタンひとつでエンジン特性が選べるマッピングのひとつで、スタンダードモデルにはスポーツ/ツーリング/アーバン、上級グレードのSPにはレース/スポーツ/ウェットという3つのモードを装備。パワーとその出力特性に加え、トラクションコントロールやABSの介入度が選択できるというものだ。
例えばSPのレースモードでは、110hpのパワーが瞬時に引き出せる一方、ウェットモードに切り替えれば、それが75hpに制限されてレスポンスも穏やかになるなど、ライダーのスキルや路面状況に応じてキャラクターを変化させられる画期的な電子デバイスなのだ。
スタンダードとSPでは、こうしたライディングモードの他、足回りの装備も異なっている。
前者にはフロントにカヤバ、リヤにザックスのサスペンションが装備され、しなやかなストロークが与えられている一方、後者にはサーキットでの、よりハードな荷重にも対応させるべくフロントにマルゾッキ、リヤにはオーリンズを装備。タイヤもワンランク、ハイグリップなものが装着されている。
乗ればもちろんのこと、アスリートのように鍛え上げられたスタイルを目の前にしただけでもテンションが上がるハイパーモタードは、いつでもどこでもライダーのスポーツマインドを呼び覚ましてくれる、言わばスイッチONバイクである。
そして、もう一台忘れてはならないのがハイパーストラーダだ。
これは、大型のウインドシールドやパニアケースといったツーリング装備の他、専用のシートやサスペンションによって、足つき性と安定性を向上させたモデルで、ハイパーモタードの軽快な雰囲気のまま、長距離にも対応という日本の道路事情にマッチした新ツアラーである。
つまり、かつてのハイパーモタードは、ライダーを選んだが、この新型はそうした一面を残しつつ、あらゆるステージとライダーをカバーする間口の広さも身につけて生まれ変わったというわけだ。
サーキットをこなすSP、ストリートが快適なスタンダード、旅にぴったりなストラーダ。それぞれのコンセプトは明確ながら、どれを選ぶかは悩ましい問題でもある。
ドゥカティ・ハイパーモタード
総排気量:821.1cc
最高出力:81kW(110hp)/9,250rpm
最大トルク:89Nm(9.1kgm)/7,750rpm
車両本体価格:Hypermotard ¥1,390,000
Hypermotard SP ¥1,790,000
Hyperstrada ¥1,490,000
総排気量:821.1cc
最高出力:81kW(110hp)/9,250rpm
最大トルク:89Nm(9.1kgm)/7,750rpm
車両本体価格:Hypermotard ¥1,390,000
Hypermotard SP ¥1,790,000
Hyperstrada ¥1,490,000
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text:伊丹孝裕/Takahiro Itami
1971年生まれ。二輪専門誌『クラブマン』の編集長を務めた後にフリーランスのモーターサイクルジャーナリストへ転向。レーシングライダーとしても活動し、これまでマン島TTやパイクスピーク、鈴鹿八耐を始めとする国内外のレースに参戦してきた。国際A級ライダー。