F1を頂点とする ルノー・スポールの系譜
更新日:2024.09.09
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ルノー・スポールが作っているクルマはR.S.(ルノー・スポール)という名前が付いたクルマだけではない。分かりにくいかもしれないけれど、現在ルノー・スポールが手掛ける車両は、「GTライン」、「GT」、「R.S.(ルノースポール)」、そして「フォーミュラ・ルノー」などのレーシングカーがある。これらの上にはF1まであるのだ。
text:森口将之 [aheadアーカイブス vol.127 2013年6月号]
text:森口将之 [aheadアーカイブス vol.127 2013年6月号]
F1を頂点とする ルノー・スポールの系譜
RENAULT MAGANE ESTATE GT 220
ルノー・スポールという組織は1976年、それまで「アルピーヌ」や「ゴルディーニ」などに分かれていたルノーのモータースポーツ部門を一元化することで生まれた。注目すべきは、設立した翌年にF1へ挑戦を始めたことだ。設立の最大の目的はF1の参戦にあった。
ルノー・スポールの制作したF1マシンは、92年からの6年連続チャンピオンをはじめ、何度も頂点に輝いた。そして彼らはそのテクノロジーを市販車にフィードバックしようと考えたのだ。こうして生まれたのがR.S.シリーズだ。その走りは、数あるホットハッチの中でも最初から別格だった。
モータースポーツの頂点を知る集団はやはり違うと世界中の「走り屋」から高い評価を受けた。噂はしだいに一般ユーザーにも伝わり、実用性や快適性との両立を望む声も増えてきた。そうしてGTやGTラインが生まれてきたのだ。
一連のプロセスを理解すれば、ルノー・スポールのクルマたちが、市販車でありながら、F1にリンクする存在であることが理解できるだろう。
ルノー・スポールが造っている公道を走れる車両について言えば、GTラインは、「スポーツフィーリング」、GTは「スポーツ」、 R.S.は、「ハイパフォーマンスモデル」という位置づけがなされている。
GTラインはインテリアなどをスポーティに装い、それに見合った足回りを与えられている。GTは、それにエンジンチューンが加わり、ブレーキも専用として快適性を犠牲にしない範囲で運動性能を高めている。
R.S.は、走りを最優先に考えて造られている。つまり今回「メガーヌ エステートGTライン」に追加された「GT220」は、従来からあったGTラインとR.S.の中間に位置するモデルになる。でも中身を見ていくと、限りなくR.S.に近い。
スポーツカーの聖地と言われるドイツのニュルブルクリンク北コースで、FF最速タイムをマークした「メガーヌR.S.」を彷彿させる内容なのだ。
たとえばエンジンは、メガーヌR.S.と同じ2リットルのツインスクロールターボを搭載する。最高出力がR.S.の265ps に対して車名にあるように220ps となっているのは、エステート用のボディに最適化したためだろう。
サスペンションやブレーキも、ニュル最速の技が投入してある。フロントサスペンションのダンパーや、リアサスペンションのアクスル形状、ブレーキのマスターシリンダーはメガーヌR.S.と共通なのだ。これは、高速カーブやワインディングを安心して楽しんでもらうための装備であり、高速移動の快適性を追求している。
フランス人はクルマとの対話を大切にしていると聞く。スペックを一瞥するだけでも、他のスポーツワゴンと本気度の違いが伝わってくる。そして「GT220」の極め付きは、3ペダルのマニュアルトランスミッションを組み合わせていることだ。日本で買えるスポーツワゴンでは貴重なMTだ。
近年は快適性能だけでなく、スポーツ性能においても、ATの2ペダルが台頭してきている。ところがルノーの本拠地フランスでは、いまなお3ペダルのMTを選ぶ人が多い。なぜMTなのか。それはクルマと対話できることが大きいからだと個人的に分析している。
適正なギアをクルマに選んでもらって走るのではなく、足でクラッチを操作して自分の手でギアを変え、回転を操る。そうやってスピードを上げていくにつれて、ドライバーとクルマの距離がどんどん縮まっていく。
フランス人は、会話や議論が好きだ。カフェやバーで、何時間も飽きずに、恋人や友だちと言葉を交わしている。そんな人たちが、クルマにも対話を求めるのは当然のこと。しかもクルマは鉄道やバスと違って、自分の手足を動かすことで、初めて前に進む。
フランスの人たちは、それこそがクルマの最大の魅力だと理解しているからこそ、自らの手で操るMTを選ぶのかもしれない。ましてスポーツドライビングとは、運転をとことん楽しむ行為である。それには人車一体が不可欠。MTに勝るものはない。
走りと実用性を両立させたパッケージを持つこの「GT220」は、「メガーヌR.S.」に匹敵するパフォーマンスをエステートのボディと融合した。クーペやハッチバックよりホイールベースを60㎜伸ばしたキャビンは、5人の大人が快適に過ごせ、後方には486リットルものラゲッジスペースが待ち受ける。
ドアの枚数をはじめ、普段使いの実用面で「メガーヌR.S.」に躊躇していた人でも、この「メガーヌ エステートGT220」なら何も問題はない。
ルノー・スポールの制作したF1マシンは、92年からの6年連続チャンピオンをはじめ、何度も頂点に輝いた。そして彼らはそのテクノロジーを市販車にフィードバックしようと考えたのだ。こうして生まれたのがR.S.シリーズだ。その走りは、数あるホットハッチの中でも最初から別格だった。
モータースポーツの頂点を知る集団はやはり違うと世界中の「走り屋」から高い評価を受けた。噂はしだいに一般ユーザーにも伝わり、実用性や快適性との両立を望む声も増えてきた。そうしてGTやGTラインが生まれてきたのだ。
一連のプロセスを理解すれば、ルノー・スポールのクルマたちが、市販車でありながら、F1にリンクする存在であることが理解できるだろう。
ルノー・スポールが造っている公道を走れる車両について言えば、GTラインは、「スポーツフィーリング」、GTは「スポーツ」、 R.S.は、「ハイパフォーマンスモデル」という位置づけがなされている。
GTラインはインテリアなどをスポーティに装い、それに見合った足回りを与えられている。GTは、それにエンジンチューンが加わり、ブレーキも専用として快適性を犠牲にしない範囲で運動性能を高めている。
R.S.は、走りを最優先に考えて造られている。つまり今回「メガーヌ エステートGTライン」に追加された「GT220」は、従来からあったGTラインとR.S.の中間に位置するモデルになる。でも中身を見ていくと、限りなくR.S.に近い。
スポーツカーの聖地と言われるドイツのニュルブルクリンク北コースで、FF最速タイムをマークした「メガーヌR.S.」を彷彿させる内容なのだ。
たとえばエンジンは、メガーヌR.S.と同じ2リットルのツインスクロールターボを搭載する。最高出力がR.S.の265ps に対して車名にあるように220ps となっているのは、エステート用のボディに最適化したためだろう。
サスペンションやブレーキも、ニュル最速の技が投入してある。フロントサスペンションのダンパーや、リアサスペンションのアクスル形状、ブレーキのマスターシリンダーはメガーヌR.S.と共通なのだ。これは、高速カーブやワインディングを安心して楽しんでもらうための装備であり、高速移動の快適性を追求している。
フランス人はクルマとの対話を大切にしていると聞く。スペックを一瞥するだけでも、他のスポーツワゴンと本気度の違いが伝わってくる。そして「GT220」の極め付きは、3ペダルのマニュアルトランスミッションを組み合わせていることだ。日本で買えるスポーツワゴンでは貴重なMTだ。
近年は快適性能だけでなく、スポーツ性能においても、ATの2ペダルが台頭してきている。ところがルノーの本拠地フランスでは、いまなお3ペダルのMTを選ぶ人が多い。なぜMTなのか。それはクルマと対話できることが大きいからだと個人的に分析している。
適正なギアをクルマに選んでもらって走るのではなく、足でクラッチを操作して自分の手でギアを変え、回転を操る。そうやってスピードを上げていくにつれて、ドライバーとクルマの距離がどんどん縮まっていく。
フランス人は、会話や議論が好きだ。カフェやバーで、何時間も飽きずに、恋人や友だちと言葉を交わしている。そんな人たちが、クルマにも対話を求めるのは当然のこと。しかもクルマは鉄道やバスと違って、自分の手足を動かすことで、初めて前に進む。
フランスの人たちは、それこそがクルマの最大の魅力だと理解しているからこそ、自らの手で操るMTを選ぶのかもしれない。ましてスポーツドライビングとは、運転をとことん楽しむ行為である。それには人車一体が不可欠。MTに勝るものはない。
走りと実用性を両立させたパッケージを持つこの「GT220」は、「メガーヌR.S.」に匹敵するパフォーマンスをエステートのボディと融合した。クーペやハッチバックよりホイールベースを60㎜伸ばしたキャビンは、5人の大人が快適に過ごせ、後方には486リットルものラゲッジスペースが待ち受ける。
ドアの枚数をはじめ、普段使いの実用面で「メガーヌR.S.」に躊躇していた人でも、この「メガーヌ エステートGT220」なら何も問題はない。
白い2本のストライプが「ゴルディーニ」のトレードマーク。「トゥインゴ ゴルディーニR.S.」は、そのスピリットを現代的に解釈したモデル。写真は「8ゴルディーニ」。
「サンクターボ」は「ルノーサンク」のルノー・スポールモデル。後席位置にエンジンを置くコロンブスの卵的発想のミドシップ。その思想は「トゥインラン」が受け継ぐ。
「アルピーヌ」を代表するクルマといえば、モンテカルロラリーで活躍したこの「A 110」が有名。また「A 310」は「エヴァンゲリヲン」に登場したことで注目される。
・ロングホイールベースのボディに合わせて220psにした「メガーヌR.S.」と同型の2ℓツインスクロールターボエンジン。
・アルミペダル、革巻きハンドルなどスポーツカーに相応しいコクピット。
・ホールド性の高いシートは、スポーツ走行からロングランまで考慮された設計。
・LEDを配したポジションランプは新型GTシリーズの象徴。
・GT220専用の18インチホイールは225/40R18タイヤを履く。
・486ℓの容量を持つラゲッジスペース。
エンジン:直列4気筒DOHC16バルブターボ
総排気量:(82.7×93.0) 1,998cc
最高出力:162kW(220ps) / 5,500rpm
最大トルク:340Nm(34.7kgm) / 2,400rpm
車両重量:1,420kg
乗車定員:5名 (6速MT /右ハンドル)
車両価格:¥3,190,000 (税込み)
-------------------------------------
text:森口将之/Masayuki Moriguchi
1962年東京生まれ。モータージャーナリスト&モビリティジャーナリスト。移動や都市という視点から自動車や公共交通を取材し、雑誌・インターネット・テレビ・ラジオ・講演などで発表。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員、グッドデザイン賞審査委員を務める。著作に「パリ流 環境社会への挑戦」「これから始まる自動運転 社会はどうなる!?」など。
・アルミペダル、革巻きハンドルなどスポーツカーに相応しいコクピット。
・ホールド性の高いシートは、スポーツ走行からロングランまで考慮された設計。
・LEDを配したポジションランプは新型GTシリーズの象徴。
・GT220専用の18インチホイールは225/40R18タイヤを履く。
・486ℓの容量を持つラゲッジスペース。
エンジン:直列4気筒DOHC16バルブターボ
総排気量:(82.7×93.0) 1,998cc
最高出力:162kW(220ps) / 5,500rpm
最大トルク:340Nm(34.7kgm) / 2,400rpm
車両重量:1,420kg
乗車定員:5名 (6速MT /右ハンドル)
車両価格:¥3,190,000 (税込み)
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text:森口将之/Masayuki Moriguchi
1962年東京生まれ。モータージャーナリスト&モビリティジャーナリスト。移動や都市という視点から自動車や公共交通を取材し、雑誌・インターネット・テレビ・ラジオ・講演などで発表。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員、グッドデザイン賞審査委員を務める。著作に「パリ流 環境社会への挑戦」「これから始まる自動運転 社会はどうなる!?」など。