ル・マンに次ぐプジョーの挑戦

アヘッド PIKES PEAK 2013

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三菱MiEVエボリューションIIでパイクスピーク総合優勝を狙う増岡浩選手は、最大のライバルにプジョーの名を挙げた。「ワークスチームが開発していますし、軽い車体に800馬力オーバーのエンジンを載せている。ドライバーは世界ラリー選手権で活躍しているロウブ選手です。彼が最速タイムを出すのではないでしょうか」

text:世良耕太 [aheadアーカイブス vol.127 2013年6月号]
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ル・マンに次ぐプジョーの挑戦

ル・マンに次ぐプジョーの挑戦

詳しく説明していこう。プジョー208T16パイクスピークは、パイクスピーク制覇を目指して開発された専用マシンだ。プジョーは2011年のル・マン24時間レースを最後にワークス活動から離れていたが、2年ぶりの復活となる舞台にパイクスピークを選んだのである。

「プジョーは耐久レースの活動をやめた後も、復帰する可能性を継続的に探ってきました。パイクスピークを選んだのは、このイベントが、ブランドの国際的な成長に合致すると判断したからです」

プジョー・ブランドCEOのマキシム・ピカ氏はパイクスピーク参戦の理由をこのように説明する。

量産208の面影を伝えるカーボンファイバー製のボディは、プジョーのスタイリングセンターによってどう猛に見えるように、リ・スタイリングされている。巨大なちり取りのようなフロントのスプリッターとリヤウィングは、空気の薄い高地で強大なダウンフォースを獲得するため。リヤウィングは09年のル・マン優勝マシンが使用したものを転用する。

車体は短期間に低コストで製作するのに適した鋼管フレーム構造で、パイクスピーク出場マシンの主流だ。エンジンは耐久レース用に開発した3.2L・V6ツインターボで、これを車両ミッドに搭載。875馬力の出力を4輪に分散して伝える。

F1が約750馬力、ル・マンカーやスーパーGTが500馬力前後だと言えば、突拍子もないパワーが想像できるだろう。車重は875㎏。0〜100㎞/h加速は1.8秒で、F1すら歯が立たない瞬発力を披露する。
このモンスターマシンをドライブするのは、WRC(世界ラリー選手権)で前人未踏の9連覇を達成したセバスチャン・ロウブ選手だ。ロウブ選手はシトロエンをドライブして快挙を成し遂げたが、プジョーとシトロエンは同じグループに属することもあり、今回のレンタルが実現した。

プジョーのパイクスピーク専用マシンがシトロエンDS3・WRCを彷彿とさせるレッドブルカラーを身にまとうのは、ロウブつながりだろう。

フランス北西部の山岳部でテスト走行を終えたロウブ選手は、208T16パイクスピークの実力に驚きを隠さない。

「こんなに加速がすごいクルマを運転したことはない。まさにロケット。F1並みのダウンフォースがあり、耐久レースカーのような太いタイヤを履き、WRCカーのようによく曲がるんだからね。世界一の集合体と言っていい」

鬼に金棒とはこのことか。

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text:世良耕太/Kota Sera
F1ジャーナリスト/ライター&エディター。出版社勤務後、独立。F1やWEC(世界耐久選手権)を中心としたモータースポーツ、および量産車の技術面を中心に取材・編集・執筆活動を行う。近編著に『F1機械工学大全』『モータースポーツのテクノロジー2016-2017』(ともに三栄書房)、『図解自動車エンジンの技術』(ナツメ社)など。http://serakota.blog.so-net.ne.jp/
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