埋もれちゃいけない名車たち VOL.29 名前を受け継ぐ誇りのハンドリング「アルファ ロメオ・アルフェッタ」

アヘッド 名前を受け継ぐ誇りのハンドリング アルファ ロメオ・アルフェッタ

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僕達ファンは好きなメーカーに対してそれぞれの理由から〝誇り〟を感じ、それを様々なカタチで表明することができる。関連するステッカーを自分の持ち物に貼ったりすることも、もちろんそのひとつ。ならばメーカー自身が自分達の〝誇り〟を強く意識するとき、それはどんなカタチになって表れるのだろう?

text:嶋田智之 [aheadアーカイブス vol.145 2014年12月号]
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vol.29 名前を受け継ぐ誇りのハンドリング「アルファ ロメオ・アルフェッタ」
アルファ ロメオ・アルフェッタ

vol.29 名前を受け継ぐ誇りのハンドリング「アルファ ロメオ・アルフェッタ」

例えばそれは、歴史の中にキラリと光る名前の復活だったりするかも知れない。いわゆる〝昔の名前で出ています〟だ。過去の名車の名前やニックネームを新型車に冠するのは今ではそれほど珍しいことともいえないが、昔はどうだったのだろう?と考えると、無視することのできないモデルの姿がポンと頭に浮かんでくる。

それが過去の名車の名前を復活させた世界で最初のモデルかどうかは判らないが、今から40年以上も前に、それより遙か30年以上も前の名車の名前を受け継いでデビューしたクルマがあったのだ。アルファロメオ・アルフェッタ、である。

ここに紹介する〝アルフェッタ〟は、1972年に登場したアルファロメオのミドルクラス・セダンとその末裔達だが、実は最初に〝アルフェッタ〟と呼ばれたクルマは、現在のF1に相当するレースを戦うためのフォーミュラマシンで、正式名称を〝ティーポ158〟という。

158は1938年から大戦を挟んだ'48年にかけて猛威を振るい、F1グランプリ初年度の1950年には全戦優勝でシーズンを制覇している。そのマシンのニックネームがアルフェッタ(=小さなアルファ)だった。

何ゆえ〝小さな〟だったのかは、エンジンが小排気量かつ軽量コンパクトだった、スペースフレームの設計がコンパクトだったと諸説あるが、このティーポ158〝アルフェッタ〟の最大の特徴は、トランスアクスル・レイアウトを採用したことだった。

トランスアクスルとは、通常はエンジンに付属するギアボックスを、デフと一体化させてリアアクスル直前に配置するというレイアウトのこと。前後の重量配分を適正化させやすいため、運動性能や操縦性の面で大きなメリットを生む。反面、高額なコストが必要となるなどのデメリットもある。後にセダンの姿をして現れた乗用車の方のアルフェッタは、このメカニズムを踏襲していたのだ。

御想像どおり、アルフェッタ・シリーズは後に追加されるクーペ版まで含め、理想的なハンドリング性能を持つスポーティカーとして抜群に高い評価を受けた。そして今もなお、そのテイストを愛する熱狂的なファン達が、少なからず存在する。

その素晴らしいハンドリングの実現こそが〝アルフェッタ〟のネーミングの復活だったのだろう。関わった人達の熱い想いが、そこにはあったに違いない。〝誇り〟とは、そういうところに宿るべきものなのだ。

アルファ ロメオ・アルフェッタ

乗用車版のアルフェッタは、1972年から1984年にかけて生産されたモデル。当初は4ドアセダンのみだったが、1974年には3ドアクーペの“GT”シリーズが追加され、1987年まで生産された。

セダン、クーペともに1.6/1.8/2.0リッターの直列4気筒DOHCエンジンをメインとしていて、クーペには2.5リッターV6SOHCもラインアップ。トランスアクスル・レイアウトによる優れたハンドリングもあって、デビュー当初から高い評価を受け続けた。アルファの歴史の中で存在としては地味目ながら、名車としての誉れは極めて高いモデルだ。
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text:嶋田智之/Tomoyuki Shimada
1964年生まれ。エンスー系自動車雑誌『Tipo』の編集長を長年にわたって務め、総編集長として『ROSSO』のフルリニューアルを果たした後、独立。現在は自動車ライター&エディターとして活躍。
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