時代に合わせて進化した4世代目モンスター ~Ducati Monster 1200R

アヘッド Ducati Monster1200R 走行

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鋼管パイプフレームとバーハンドルを基本骨格とし、そこに盛り上がった筋肉を思わせる燃料タンクを組み合わせる。ドゥカティの歴代モンスターはどの世代、どのモデルも例外なく、そういう外観が与えられてきた。そして、その名の通り獰猛な乗り味の異端であり続けてきたのである……と書けば誰もが納得しそうだが、存外それほど一貫はしていない。

text:伊丹孝裕 [aheadアーカイブス vol.156 2015年11月号]
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時代に合わせて進化した4世代目モンスター ~Ducati Monster 1200R

時代に合わせて進化した4世代目モンスター ~Ducati Monster 1200R

●Ducati Monster1200R
排気量:1,198.4cc
最高出力:117.7kW(160HP)/9,250rpm
最大トルク:13.4kgm(131.4Nm)@7,750rpm
※イタリア本国仕様(2016年春日本発売予定)


実は時代の機微を読みながら、常にスポーツバイクのトレンドを先取りしてきたのがモンスターというモデルなのだ。例えば、'93年にデビューした第1世代はスーパーバイクフレームに空冷エンジンを搭載。

当時としてはあまりに斬新に見えたそのスタイルとハンドリングは確かにモンスターの名にふさわしく、いわゆるストリートファイターと呼ばれるジャンルの先駆けになった。

それが第2世代に進化した'03年になると片持ちスイングアームやスーパーバイク由来の水冷エンジンを積極的に流用することでレースイメージとの融合を強め、よりパフォーマンス重視に変化した。

ところが'08年以降の第3世代では一転。排気量も車格も一気に軽量コンパクト化になった696に代表されるようにベーシックなエントリーモデルという役割をそこに与え、ユーザー層の拡大を狙ったのである。

第1世代は飛び道具的にインパクトを放ち、第2世代はスペックとスタイルをブラッシュアップ。そして第3世代ではシンプルなメカニズムでライトウェイトスポーツとしての資質を磨く…とモンスターという共通の名の元で自在に、しかもかなりの振り幅でキャラクターを変化させてきたと言える。

そういう紆余曲折を経て、'14年にデビューしたのが第4世代である。振り幅という意味ではこの時が最も大胆だったかもしれない。なぜなら、なにかの反動のように今度は大型化。

運動性の要となるホイールベースは第3世代比で60㎜以上も延長され、車重は20‌kg増。「小振りなディアベル」と言えるほどロー&ロングな安定方向に振られたのである。
そんな中、第4世代の最新モデルとして先頃発表されたのが1200Rだ。興味深いことにこのモデルはそれを修正するようにややハイ&ショートなディメンションが与えられ、バネ下やカウルを軽量化することで重量配分も最適化。

さらにはエンジンをモンスター史上最強の160馬力にチューニングしてハンドリングとパワーのバランスを図る、と同じ世代でありながら実にきめ細やかな、そして有益な変更を加えてきたのである。

乗れば意図するところは明らかで、第3世代の軽快さと第4世代の安定性を両立。160馬力は確かにパワフルだが電子デバイスのすべてがそれをスキルに合わせて調律してくれている。

今やドゥカティのラインアップはスーパーバイク、アドベンチャー、クルーザー、モタードとキャラ立ちしたモデルで成り立っているが、気が付けばかつてのSSシリーズのような等身大のモデルが手薄になっていた。

そこに登場したピュアスポーツが1200Rであり、その存在意義はこれから高く評価されていくに違いない。

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text:伊丹孝裕/Takahiro Itami
1971年生まれ。二輪専門誌『クラブマン』の編集長を務めた後にフリーランスのモーターサイクルジャーナリストへ転向。レーシングライダーとしても活動し、これまでマン島TTやパイクスピーク、鈴鹿八耐を始めとする国内外のレースに参戦してきた。国際A級ライダー。

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