ヘルメットの種類 Vol.2 四輪
更新日:2024.09.09
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ヘルメットには、二輪用、四輪用の区別だけではなく、使用する目的に合わせてさまざまな仕様が存在する。第一回目(Vol.171)は二輪・四輪のヘルメットを概観した。第二回目となる今回は四輪用ヘルメットの種類について詳しく見ていきたい。
text:伊丹孝裕 [aheadアーカイブス vol.172 2017年3月号]
text:伊丹孝裕 [aheadアーカイブス vol.172 2017年3月号]
ヘルメットの種類 Vol.2 四輪
昨シーズン、世界最速の座を争ったF1ドライバーのほぼ半数弱がアライヘルメットを被っていた。それはトップシェアを意味するが、だからといってアライとドライバーの間に特別な契約は存在していない。彼らは皆、自ら望んでアライを選んでいるからだ。
ジェンソン・バトン (F1、マクラーレンホンダ)
例えば長年に渡ってF1の第一線で活躍し続けたジェンソン・バトン。彼はドライビング中にしばしば頭痛に見舞われたが、マクラーレンに移籍した最初の年('10年)にアライを試したところ、その症状が解消。すでにシーズンが始まっていたにも関わらず、それまで契約していたメーカーからアライに切り換えたほどである。
平手晃平(Super GT500、 DENSO KOBELCO SARD)
明治時代に帽子店として創業を開始し、やがて産業用、2輪用、公営競技用(競輪、競馬、ボートなど)のヘルメットを手掛けるようになったアライが、4輪の世界へ参入したのはおよそ40年前のこと。'76年に初めて日本へF1が招致されたことがひとつの転機になった。
その時、ドライバーの間で流行りつつあったデザインありきの帽体形状に対して懐疑的だったアライは、安全性への意識を高めるべく本格的に4輪用ヘルメットの開発に着手。
すでに日本のトップドライバーとして活躍していた高橋国光と星野一義とともにテストを重ね、翌'77年の日本グランプリで両名が残した9位(高橋)と11位(星野)というリザルトにも貢献したのである。
その時、ドライバーの間で流行りつつあったデザインありきの帽体形状に対して懐疑的だったアライは、安全性への意識を高めるべく本格的に4輪用ヘルメットの開発に着手。
すでに日本のトップドライバーとして活躍していた高橋国光と星野一義とともにテストを重ね、翌'77年の日本グランプリで両名が残した9位(高橋)と11位(星野)というリザルトにも貢献したのである。
菅原照仁(ダカール・ラリー、 HINO TEAM SUGAWARA)
ほどなく市販化された4輪用ヘルメットは、その当時でさえ5万5千円〜7万円と高額だったにもかかわらず、多くのドライバーがそのかぶり心地や、優れた耐衝撃性、耐火性、耐候性(シールドのくもりや日差しの軽減など)を支持。
ヘルメットの性能が高いからといって勝てるわけではないものの、勝てるレースを落とす可能性はある。これは現代のトップカテゴリーでも往々にして見られるケースだが、アライならそのリスクを限りなくゼロに近づけられるという評価が浸透し、シェア拡大につながったのは間違いない。
さて、ここに掲載している4輪用ヘルメットはアライがラインアップする最新のものだ。排気量や走る場所に関わらず着用が義務化されている2輪と異なり、4輪のそれは競技用に特化しているのが特徴である。
ではどこに違いがあるのかと言えば、2輪は転倒からライダーを守り、4輪は火からもドライバーを守るという基本概念が構造の差になって表れている。
もちろん、もしもの場合にはダメージを分散、吸収するというプロテクション機能へのこだわりは共通ながら、4輪で最も怖いのは車両火災だからだ。そのため、いかにして火と熱を防ぎ、ドライバーに伝播するのを遅らせるか。4輪用ヘルメットのノウハウの多くはそこに集約されていると言ってもいいだろう。
事実、耐火のための対策はほぼすべての構成パーツにおよぶ。GP6シリーズを例に挙げると、2輪のシールドは通常2㎜厚なのに対し、3㎜厚になっていること。その開閉方法は衝撃を受けても簡単に開かないダブルロック式になっていること。
帽体への取付方法も2輪が素早い脱着を優先しているのに対し、頑強なアルミスクリューで締め込まれていることなど、これらはいずれも火の侵入を防ぐことを目的にしたものだ。
シールドで覆われた開口部が2輪と比較してかなり狭く、アゴの部分に厚みが持たされているのも同じ理由であり、これはコクピット内に閉じ込められたり、なにかに挟まった場合の保護機能も兼ねている。
そして決定的なのは内装やアゴ紐に用いられる生地の違いだ。カート用以外のすべての製品には厳格な規定をクリアした難燃性素材を採用。側頭部にはクラッシュの際に頸椎を保護するHANS(ヘッド・アンド・ネック・サポート)装着用の台座が用意されているのも4輪ならではの装備である。
世界選手権レベルのレースもさることながら、少なくとも国内の4輪レースはアライヘルメットなしでは成り立たない。唯一無二の選択であるのと同時に、それが最良でもあるからだ。
ヘルメットの性能が高いからといって勝てるわけではないものの、勝てるレースを落とす可能性はある。これは現代のトップカテゴリーでも往々にして見られるケースだが、アライならそのリスクを限りなくゼロに近づけられるという評価が浸透し、シェア拡大につながったのは間違いない。
さて、ここに掲載している4輪用ヘルメットはアライがラインアップする最新のものだ。排気量や走る場所に関わらず着用が義務化されている2輪と異なり、4輪のそれは競技用に特化しているのが特徴である。
ではどこに違いがあるのかと言えば、2輪は転倒からライダーを守り、4輪は火からもドライバーを守るという基本概念が構造の差になって表れている。
もちろん、もしもの場合にはダメージを分散、吸収するというプロテクション機能へのこだわりは共通ながら、4輪で最も怖いのは車両火災だからだ。そのため、いかにして火と熱を防ぎ、ドライバーに伝播するのを遅らせるか。4輪用ヘルメットのノウハウの多くはそこに集約されていると言ってもいいだろう。
事実、耐火のための対策はほぼすべての構成パーツにおよぶ。GP6シリーズを例に挙げると、2輪のシールドは通常2㎜厚なのに対し、3㎜厚になっていること。その開閉方法は衝撃を受けても簡単に開かないダブルロック式になっていること。
帽体への取付方法も2輪が素早い脱着を優先しているのに対し、頑強なアルミスクリューで締め込まれていることなど、これらはいずれも火の侵入を防ぐことを目的にしたものだ。
シールドで覆われた開口部が2輪と比較してかなり狭く、アゴの部分に厚みが持たされているのも同じ理由であり、これはコクピット内に閉じ込められたり、なにかに挟まった場合の保護機能も兼ねている。
そして決定的なのは内装やアゴ紐に用いられる生地の違いだ。カート用以外のすべての製品には厳格な規定をクリアした難燃性素材を採用。側頭部にはクラッシュの際に頸椎を保護するHANS(ヘッド・アンド・ネック・サポート)装着用の台座が用意されているのも4輪ならではの装備である。
世界選手権レベルのレースもさることながら、少なくとも国内の4輪レースはアライヘルメットなしでは成り立たない。唯一無二の選択であるのと同時に、それが最良でもあるからだ。
4輪
カート
SK-6 PED
GP-6の基本性能を踏襲したカート競技専用モデル。難燃素材を使用しない代わりにメンテナンスやサイズ調整が容易な着脱式の頬パッドを装備。内装には高機能生地を採用。¥48,000(税別)
GP-6の基本性能を踏襲したカート競技専用モデル。難燃素材を使用しない代わりにメンテナンスやサイズ調整が容易な着脱式の頬パッドを装備。内装には高機能生地を採用。¥48,000(税別)
ラリー
フルフェイス
GP-5WP 8859
ラリーを筆頭とするクローズドカーの競技用。刻々と変化する太陽の位置や高低差のあるコースに備え、サンバイザー付のピークを装備。シールドタイプのGP-5Wもある。¥54,500(税別)
GP-5WP 8859
ラリーを筆頭とするクローズドカーの競技用。刻々と変化する太陽の位置や高低差のあるコースに備え、サンバイザー付のピークを装備。シールドタイプのGP-5Wもある。¥54,500(税別)
オープンフェイス
GP-J3 8859
ラリーの他、ジムカーナやダートトライアルを想定したモデル。オープンフェイスながら頬から顎にかけてのホールド面積は広く、高いフィット感と低重心化を実現している。¥43,600(税別)
GP-J3 8859
ラリーの他、ジムカーナやダートトライアルを想定したモデル。オープンフェイスながら頬から顎にかけてのホールド面積は広く、高いフィット感と低重心化を実現している。¥43,600(税別)
サーキット
GP-6 8859
フォーミュラやGTマシンなど、サーキットレース向けのプロスペックモデル。F1ドライバー用と同一の形状を持ち、高いGの掛かる状況下でも被り心地が損なわれない。¥100,000(税別)
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●伊丹孝裕/Takahiro Itami
1971年生まれ。二輪専門誌『クラブマン』の編集長を務めた後にフリーランスのモーターサイクルジャーナリストへ転向。レーシングライダーとしても活動し、これまでマン島TTやパイクスピーク、鈴鹿八耐を始めとする国内外のレースに参戦してきた。国際A級ライダー。
フォーミュラやGTマシンなど、サーキットレース向けのプロスペックモデル。F1ドライバー用と同一の形状を持ち、高いGの掛かる状況下でも被り心地が損なわれない。¥100,000(税別)
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●伊丹孝裕/Takahiro Itami
1971年生まれ。二輪専門誌『クラブマン』の編集長を務めた後にフリーランスのモーターサイクルジャーナリストへ転向。レーシングライダーとしても活動し、これまでマン島TTやパイクスピーク、鈴鹿八耐を始めとする国内外のレースに参戦してきた。国際A級ライダー。