ファッション界にも影響をあたえた 60's UKカルチャー ロッカーズ&モッズ

アヘッド 60's UKカルチャー ロッカーズ&モッズ

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今や当たり前に着られている革ジャンやミリタリーアイテム。バイク乗りにとっては身近な存在だが、バイク乗りじゃなくとも、タウンウエアとして愛用している人は多い。そんな、ダブルのライダースジャケットやミリタリーコートがファッションとして取り入れられたルーツを探ると、1950年代後半から1960年代にかけて、イギリスで生まれたバイク乗り、いわゆる〝族〟たちの文化から来ているのだ。

text:サトウマキ [aheadアーカイブス vol.171 2017年2月号]
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ファッション界にも影響をあたえた 60's UKカルチャー ロッカーズ&モッズ

ファッション界にも影響をあたえた 60's UKカルチャー ロッカーズ&モッズ

『ROCKERS!』(John Stuart著)
イギリスのロッカーズに関する当時のファッション、バイク、ライフスタイルを伝える写真集。ロッカーズファンにとってバイブルと言われる一冊。



60年代のイギリスの〝族〟といったら、ロッカーズとモッズのコトだとライダーの皆さんなら直ぐにお分かりかと思うが、どちらも1950年代前半にイギリスのイースト・エンドで、10代の不良の間に流行していたテディ・ボーイズ(通称テッズ)というスタイルから派生したもの。

テッズとは、リーゼントに丈の長いジャケット、派手なベストにタイ付きのシャツにスリムパンツといったスタイルが特徴なのだが、このテッズがイギリスでは、初めて音楽とファッションが結びついたストリートスタイルといわれているのだ。

そんなテッズから派生した、ロッカーズとモッズは、一般的にロッカーズ=生粋のバイク乗り&走り屋&労働階級の怒れる若者たち。モッズ=スクーターを足代わりに使っていた、流行に敏感な中流階級の粋な若者たち、といった感じなのだが、その背景には、高度成長期に突入した1960年にイギリスで徴兵制度が廃止され、若者たちが働き始めたということがある。

給料を手にした若者たちが、音楽や洋服、または楽器やバイクといった趣味に、稼ぎを全部つぎ込めるようになったのだ。ロッカーズ&モッズは、彼らの個性を表現するスタイルとして、そんな時代に育った、ユースカルチャーなのだ。

ロッカーズとは、テッズが50年代のアメリカのバイカーズスタイルの影響を受けて生まれたスタイルで、労働者階級の若者が現実社会に絶望し、ロックンロールやスピードを求めるアウトロー的な物に熱中していったことから生まれている。

もともとアメリカのバイカーズスタイルとは、空軍パイロットをまねた物で、爆撃機の代わりにバイクにまたがり、ダブルのライダースジャケットに白いTシャツ、そして作業着であったジーンズをロールアップして履く、というものだった。

ロッカーズは、このスタイルを描いた、1954年公開の映画「乱暴者(原題THE WILD ONE)」のジョニーことマーロン・ブランドに憧れてお手本にしていた。しかし、ライダースジャケットは、アメリカの「Shott」ではなく、イギリスの革メーカー「LEWIS LEATHER」や「PRIDE & CLARKE」が作った既製品。しかも、レザーは高級がゆえに手が出ず、合成皮革のを着ていたとも…。

●乱暴者(あばれもの)
スペシャルプライスで発売中! 発売・販売元:株式会社ハピネット
(C)1953 THE STANLEY KRAMER COMPANY, INC. ALL RIGHTS RESERVED. RENEWED.RENEWED (C) 1981 COLUMBIA PICTURES INDUSTRIES, INC. ALL RIGHTS RESERVED.

ロッカーズが憧れてお手本にしたという、バイカーズの生き方を描いた映画。現代にも憧れる人が多い、マーロン・ブランドのかっこよさにも痺れる作品だ。バイク乗りの原点を見ることができる。
ジーンズはロールアップではなく、ブーツインが基本。白い厚手のハイソックスをデニムの上に履き、長めのエンジニアブーツの上に折り返して見せていた。そしてなんといっても白いスカーフをなびかせるのがお約束。

ライダースジャケットにはスタッズやペイント、缶バッチなどを飾って個性を演出していた。このバイカーズスタイルが軍隊アイテムをストリートのファッションとして着こなすようになった始まりともいわれている。

モッズはモダーンズの略で、イタリアンコンチネンタルなモダニストたちが、テッズのアンチテーゼ的なスタイルを目指した、中流階級の若者たちのスタイル。アイビー調の細身のスーツに細いタイ、マッシュルームカットも特徴的。

そして、夜中までクラブで遊ぶ彼らが時間を気にせずに使える足として選んだのは、ランブレッタやベスパといったイタリアンスクーター。油まみれになる無骨なバイクとは違う乗り物として、彼らの哲学にマッチしていたのだ。

スクーターに乗るモッズは、スクーター・モッズとも分類されていた。さらにはスクーターに乗るときに、一張羅ともいえる服が汚れないようにと羽織っていたのが、今や「モッズコート」としてお馴染みの(躍る走査線であの青島が着ていたヤツ)、米軍で1950年に使用されていたM-51パーカ。ミリタリーアイテムとスーツの組み合わせという、今までにないモダンなスタイルを粋に着こなしていた。

常に新しい物を追求するスタイリッシュともいえる60年代のそのスタイルは、以降、70年代にネオモッズ、90年代にはニューモッズとしてストリートスタイルの流行として繰り返されている。

スーツ以外では、「フレッド・ペリー」(モッズ御用達ブランド)のポロシャツや、「リーバイス」の501を愛用。さらにはローライズのパンツもモッズが発祥だったりするのだ。

現代において、ストリートで当たり前となっている、革ジャンやモッズジャケットといった実用的なミリタリーアイテムは、バイク乗りが、ファッションアイテムとして昇華させたともいえるのだ。

だったら、これからの時代だって、バイク乗りがファッション界をリードすることがあるかもしれない。流行は時代を巡るのだ。

●さらば青春の光
DVD ¥1,429+税(上)ブルーレイ ¥1,886+税(下)発売元:NBCユニバーサル・エンターテイメント 
Film (C) 1979 Who Films, Inc. All Rights Reserved.

当時の様子を見ることが出来るのが、映画「さらば青春の光(原題QUADROPHENIA)」。1979年に公開された、英国のロックバンド「TheWHO」のアルバム「QUADROPHENIA=4重人格」をベースにした映画で、モッズを中心に若者たちの暴走や挫折などを描いている青春映画であり、ブライトンの暴動までも描かれている。作中に登場するファッションやバイクなどが比較的忠実に再現されているので、当時のカルチャーを知るにはもってこいの作品となっている。

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text:サトウマキ/Maki Sato
ファッション専門誌からバイク専門誌の編集部に転職した異例の経歴を持つ。現在はフリーランスのエディター&ライター。30代でバイクの免許を取得した。遅咲きながら、バイクへの情熱は人一倍、勉強熱心で努力家。ライディングの美しさには定評がある。
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