ひこうき雲を追いかけて vol.58 頑固者の入り口

アヘッド ディーラー

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考え方が古い、とよく言われる。仕事以外で出かけたり、人と会ったりということをほとんどしないし、最先端の家電製品を揃えようという気もなく、家の中には最低限の快適さがあればそれで満足。そういう保守的な性格ゆえだと思う。

text:ahead編集長・若林葉子 photo:長谷川徹 [aheadアーカイブス vol.173 2017年4月号]
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vol.58 頑固者の入り口

vol.58 頑固者の入り口

個人のレベルではそれでも構わないのだが、仕事という観点からすると、やはり心もとない。少なくとも時代がどういうふうに動いているかという〝時代感〟を知る努力はすべきであろうとは思っている。

でも。自分で考えている以上に人の〝思い込み〟は根が深い。自分と価値観を異にする意見はなんとなくスルーしてしまうし、議論の過程で反対意見を述べられるとつい不機嫌になったり、感情的になったりする。いろんな意見を受け入れよう、なんて聞こえはいいが、いざ自分の身に降りかかるとそう簡単にはいかないものである。

ちょっと話が壮大になるが、中世ヨーロッパで起こった天動説から地動説へのパラダイム・シフトは科学の世界の話なのに社会全体を巻き込んで、異端のレッテルを貼られ牢獄に入れられた人まで出たのだから、思考の枠組みを変えるというのはそれほどまでに困難なことなのだ。

だから私は考え方を変えようという努力より、考え方は据え置いたまま、まず行動を起こしてしまった方がいい、と考える。

天動説から今度はいきなり話が小さくなるが、たとえば少し前、アマゾンのFIRE TVスティックを買ってみた。私はプライム会員なのでさまざまな映画やドラマを無料で楽しめる。

そもそも家で映画を見てる時間なんてそんなにないし、設定するのも面倒だしと思っていたけれど、人に勧められて導入してみると、意外にもTVの前に座る時間が長くなった。そのときどきで観る映画を選べば、気分転換にもなっていい具合なのだ。こういう小さな例はきっとたくさんあって、行動を変えてみると、自然に考え方の前提が切り替わったりするものなのではないだろうか。

こだわり続けることももちろん大事。でもそれが難しくなったとき、スイッチできる〝緩さ〟を持つことは人生を楽しむためのコツのようなものだと思う。今号の特集はそんな気持ちで企画した。

また今号ではジー・エス・ティー会長の佐々木氏にインタビューした。佐々木氏は昨年、娘さんに社長を譲ったばかりで、「今の人たちには今の人たちのクルマの楽しみ方があるはず。それを見つけてくれればいい」とおっしゃったのが印象的だった。

ご本人は昔ながらの生粋のクルマ好き。欧州車は左ハンドル車しか乗らないというこだわりもあるが、娘さんはもちろん右ハンドルもOK。時代も変わり、クルマも変わる。でもただそれを嘆いていては何も生まれない。ご本人には葛藤もあったと思うけれど、私は勇気付けられた。

私たちは私たちのクルマの楽しみ方を見つければいい。

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text:若林葉子/Yoko Wakabayashi
1971年大阪生まれ。Car&Motorcycle誌編集長。
OL、フリーランスライター・エディターを経て、2005年よりahead編集部に在籍。2017年1月より現職。2009年からモンゴルラリーに参戦、ナビとして4度、ドライバーとして2度出場し全て完走。2015年のダカールラリーではHINO TEAM SUGAWARA1号車のナビゲーターも務めた。
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