オフロードバイクはレジャーになるのか 〜手ぶらで ”しどき”に行ってみた。

今は、何でもレンタル&1日体験で遊ぶのが当たりまえになってきた。サーフィンやサップボード、ダイビングからスノボーまで、手ぶらで現地に行って思いっきり楽しむ時代。最近はレンタルバイクがメジャーになって手軽にバイクに乗れるようになったとはいえ、免許は必要だし、家族全員でツーリングに行くのは難しい。けれども、バイクがなくて、免許がなくて、ヘルメットやブーツがなくても、みんなが泥んこになって遊べるオフロードパークがあるのだ。

text:橋本洋平、伊丹孝裕 photo:長谷川徹 [aheadアーカイブス vol.179 2017年10月号]

Chapter
オフロードバイクはレジャーになるのか 〜手ぶらで ”しどき”に行ってみた。
アウトドアでラフにがんがん使える頼もしい相棒。プロパイロットで行楽の行き帰りもサポートしてくれる。
インジェクションがもたらした新しい2ストロークの世界
ハイエースの独壇場に待ったをかける新型キャラバン

オフロードバイクはレジャーになるのか 〜手ぶらで ”しどき”に行ってみた。

福島県の「モトスポーツランドしどき」は、子供用のミニオフロードバイクから、本格的なレーシングモデルまでを貸し出し車両としてラインアップ。そして装具一式もレンタル可能。家族と一緒にレジャー感覚でオフロードバイクを楽しめる。

今回は、頼もしい相棒となってくれる2台のクルマ、「エクストレイル」と「NV350キャラバン」に人と荷物を満載にして、わいわいがやがや、みんなで「モトスポーツランドしどき」へと向かった。

果たして、オフロードバイクは初めてという四輪モータージャーナリスト、橋本洋平氏の感想は!?

昨年末、いつかは取得してやろうと考えていた大型バイクの免許をようやく取得した。中型バイクの免許を持っていたため、教習所に通い12時間の実技教習を受けるだけで取得可能ということもあり、それは大した挑戦では無かった。

だが、かれこれ10年も二輪車から遠ざかっていたこともあって、教習所通いという行為はとても新鮮であり、新たな世界に踏み込んだ感覚が得られるとても充実したものだった。40歳を過ぎ、新しいことに触れる機会が無くなってきた自分にとって、バイクという存在は若かりし頃に感じていた乗り物に対するワクワク感を蘇らせてくれる良きツールになった。

そんな話を編集長にしたからなのだろう。ある日突然、「オフロードバイクに乗りに行きませんか?」というオファーをもらった。バイクに再びときめいているとは言ったけれど、いま乗っているのはオンロードのアメリカンでありオフロードには程遠い。ゆえにオフロード用のプロテクターやヘルメットなんて持っていない。そんな人間にオフロードバイクを勧めるとはこれいかに?

聞けばバイクから装備品まですべてを貸してくれるコースがあるという。〝手ぶら〟でオフロードバイクが楽しめるというそこは、福島県にある「モトスポーツランドしどき」。オフロード初心者から成熟した方々までがフリーライドを楽しめる場所らしい。競技指向の人々にはご遠慮頂くと記されていることもまた、ド素人の僕にとっては有難い。それならやってみますかとなったわけだ。

ところがその取材に参加するメンツに腰が引けた。本誌で活躍する二輪に長けた執筆陣やカメラマンが、集合場所にあった日産エクストレイルとNV350キャラバンに分乗していたのだ。しかもキャラバンの後ろには撮影車のKTM 250 EXC TPI SIXDAYSが載せられている。本気印の方々に気後れしながらエクストレイルのステアリングを握って福島を目指した。

東京からおよそ2時間半。モトスポーツランドしどきに到着すると、そこはこれまでに見たこともない異空間が広がっていた。まるでスキー場の上級者用斜面のような角度で立ちはだかる目の前のモトクロスコースは圧巻の一言であり、こんなところを走破できるのかと不安に思えてきた。

けれどもよくよく見渡してみると平らなダートにパイロンを備えたビギナーズ広場や、うねりの少ないミニコースもあり、技量に応じてコースを選択することも可能だから一安心だ。

受付脇には装備品一式を貸し出してくれる小屋があり、ヘルメットやシューズなどを揃えてもらえる。着替えるスペースやシャワールームなどもあり完璧な体制がある。

そこはまるでレンタルスキーの受付かと思えるほどのサイズラインアップがあり、頭がとにかくデカく、腹が出てきたという独特な体系のアラフォーオッサンにもフィットする装備品が用意されているから有難い。いっちょまえの格好にしてもらえた。

それが終われば今度はバイク選びだ。ところが、これがまた悩ましい。子供でも乗れるクラッチ操作いらずのものから、本格的なモトクロスコンペモデルまでズラリと並べられていたのである。バイクは好きだが車種には疎い初心者からしてみると、何を選んで良いのやら……。

そこで達人たちに選んでもらい、ひとまず手の内に納めやすい小ぶりなホンダCRF125Fをチョイスすることに。いよいよオフロード体験をはじめる。

まずはビギナーズ広場に進んで走り始めてみると、これがなかなか難しい。前日までの雨の影響でコースはぬかるみだらけ。スロットルを開けるとあっという間に後輪が振り出してしまうのだ。

はじめはすぐにコケてしまったが、見よう見まねでイン側に足を出しながら、スロットルワークに気を付けて走ってみると、次第にテールの納め方も学ぶことができた。

クルマで学んできたドリフト定常円旋回の要領でジワジワとスロットルをコントロールしてみると、何とか乗りこなせそうな気配が。「タイヤが付いてりゃ2輪も4輪も変わらないぜ!」なんてちょっとばかり気が大きくなり、次なる試練のミニコースを走ることに。

しかし、これがなかなか厄介だ。アップダウンがあり、轍だらけのようなミニコースは、どこを走って良いのかわからない。しかも起伏が激しく、気を抜くとすぐにジャンプしてしまいそうだから怖くて仕方ない。坂を下る時にスロットルを開け、起伏の頂上へ向けては減速すると良いなんて教わりながら走ってみると、速さはまだまだだが次第に走れるようになってきた。

だが、中腰で走ることを強いられるそのコースは、連続2周走るのがやっと。体力はいつまでも持たない。足はプルプル、息はハアハアと荒げて休憩所に帰り30分……。我ながら情けないが、それくらいオフロードコースは体力勝負だ。これはなまり切った身体を鍛え直すにはちょうどいい。

体力が復活した後は、ヤマハのSEROW250やWR250Rも借りてみた。林道向けでありちょっと重さがあるSEROW250も、慣れてくれば安定感があっていいかもと確認。パワフルで軽快さがあるWR250Rは速さと身軽さが魅力だと感じた。オフロード走行だけでなく、それぞれのバイクの持ち味まで楽しめるレンタルバイクの充実ぶりが面白い。

最後は撮影用に持ち込んだKTM 250 EXC TPI SIXDAYSに跨り、最もハードなモトクロスコースに挑戦。2ストロークエンジンでインジェクションを備えるというそのマシンは、ラフにスロットルをひねればすぐに暴れ出すが、きめ細やかなスロットルのツキがあるからかえって扱いやすい。急斜面を一気に駆け上がるパワフルさはなかなか爽快だ。

朝は圧倒された斜面を征服できた時、また新たなワクワクを知りハマりそうな自分がいた。これは間違いなくまた来てしまいそうだ。大型バイクへの挑戦も新鮮だったが、今回味わったオフロード体験はそれ以上にインパクトがあり、もっと上手くなりたいと欲も出てきた。

帰り道、身体はボロボロですでに筋肉痛の嵐が訪れていた。しかし、そんな時にこそ新たなエクストレイルに搭載されたプロパイロットは有難い。運転支援システムのそれは、高速道路で速度や車間、そしてステアリングをアシストしてくれる。だから疲れ切っていようが安心して移動が可能だったのだ。

おかげで車内は今日の振り返りの話題にずっと包まれていた。そこはまるで、学生時代にやっていたワイワイガヤガヤの空間にタイムスリップしているかのようだった。

アウトドアでラフにがんがん使える頼もしい相棒。プロパイロットで行楽の行き帰りもサポートしてくれる。

日産エクストレイル

■日産エクストレイル
車両本体価格:¥2,755,080(20X, 4WD, 税込)
排気量:1,997cc
最高出力:108kW(147ps)/6,000rpm
最大トルク:207Nm(21.1kgm)/1,100rpm
燃料消費率(JC08モード):15.6km/ℓ


プロパイロットを装備することで高速移動の快適性を高めたエクストレイルだが、やはりこのクルマの本質は悪路走破性をシッカリと備えた本格SUVであることだ。

インテリジェント4×4と名付けられた電子制御4WDシステムは、荒れた林道を走ってみても安心のトラクションを確保。ヒルディセントコントロールも備え、下り坂でも速度をキープしたまま安全に下ってくれるなど、狭い林道での安心感はかなり高い。

また、世界初の搭載となるインテリジェント ライドコントロールは、エンジンとブレーキを電子制御することで、デコボコ道でも車体振動を低減してくれる。荒れ果てた道でも乗り心地を出そうという思想は面白い。

一方、アウトドアにおける使い勝手もなかなか。汚れや傷が付きにくい防水のラゲッジスペースは、使い終わったバイク用品をガンガン乗せることも躊躇なくできるし、シートも防水仕様だからちょっとばかし服が汚れていようがお構いなしで使い倒せるところがマル。

リアバンパーの下で足を振るだけで開閉可能なリモコンオートバックドアも、重たい荷物を持ちながら操作する時にはかなり便利だった。走行性能から使い勝手までまさに本格SUVの仕上がりである。

----------------------------------------------
text:橋本洋平/Yohei Hashimoto
自動車雑誌の編集部在籍中にヴィッツ、フォーミュラK、ロドスターパーティレースなど様々なレースを経験。独立後は、レースにも参戦する“走り系モータージャーナリスト”として活躍している。走り系のクルマはもちろん、エコカーからチューニングカー、タイヤまで執筆範囲は幅広い。「GAZOO Racing 86/BRZ Race」には、84回払いのローンで購入したトヨタ86 Racingで参戦中。

インジェクションがもたらした新しい2ストロークの世界

KTM 250EXC TPI SIX DAYS

■KTM 250EXC TPI SIX DAYS
車両本体価格:¥1,190,000(税込) 
エンジン:単気筒2ストロークエンジン
排気量:249cc
ボア×ストローク:66.4×72mm


2輪業界で、エンジンのことがこれほど話題になったのは久しぶりだ。エンデューロやモトクロスといったオフロードモデルに馴染みがない人は、そもそも2ストロークが今もラインアップされていたことに驚くかもしれないが、先頃KTM(傘下のハスクバーナも含む)がそのインジェクション化に成功。しかも公道走行も可能な‘18年モデルとして市販化したのだから、ライダーがザワつくのも当然だろう。

2ストロークのインジェクション化自体は、すでにジェットスキーやスノーモービルの世界では達成している技術だが、2輪では困難だった。なぜなら、2輪特有の微妙なスロットルワークに対するレスポンスをインジェクションで再現することが難しく、キャブレターの方が圧倒的に優位だったからだ。海上や雪上でそれが問題にならなかったのは、路面と比較してあまりにも摩擦や抵抗が大きく、1㎜単位でスロットルを開閉し、1ps足すか足さないか・・・という繊細な制御を必要としなかったからである。

KTMの新型モデル・250EXC TPI(写真はシックスデイズ仕様)は、そういう出力特性の問題をクリアしただけでなく、排ガスのクリーン化に成功したことも見逃せない。2ストロークはガスを完全に燃焼させることが難しく、白煙が多くて燃費も悪いという構造上の弱点を克服。多くのメーカーがサジを投げたエンジンを、独自の技術で乗り越えたことのインパクトは大きい。

そんな250EXC TPIのフィーリングをひと言で言えば、フレキシビリティの塊だ。その昔、2ストロークに乗っていたレーサーレプリカ世代のライダーは、ピーキーさと引き換えに得られる加速感こそがその魅力だと記憶しているに違いないが、このモデルは真逆である。

アイドリング状態でもスッと軽く動き出し、スロットル全閉のままガレ場へ突入してもクラッチ操作だけでトコトコと進んでいく極低速域の躾は見事というより他はない。弾けるような爆発フィーリングこそ、2ストロークらしい過敏さを感じさせるものの、実際はディーゼルのように低回転では粘り、それでいて高回転まで回せばパンチのある加速力が味わえるため、弱点がまったく見つからないのだ。

普段、この手のモデルに試乗する機会がほぼなく、ハンドリングの良し悪しやサスペンションの動きが他のモデルと比較してどうなのかはわからない。しかし、なんの恐怖感もなく乗れ、ひと昔前なら「じゃじゃ馬」や「モンスター」にも例えられた250ccの2ストロークマシンを「フレキシブル」だと思えたことがなにより完成度の高さを示している。

ユーロ4排気ガス規制に適合する水準をクリアし、キャブセッティングからも混合燃料作りからも解放してくれたKTMのインジェクション技術が今後の2輪業界に大きな変革をもたらすのは間違いない。

ハイエースの独壇場に待ったをかける新型キャラバン

日産 NV350 キャラバン

■NV350キャラバン
車両本体価格:¥3,504,600(税込) 
(プレミアムGX、2WD・ディーゼルターボ、ロングボディ)
排気量:2,488cc
最高出力:95kW(129ps)/3,200rpm
最大トルク:356Nm(36.3kgm)/1,400-2,000rpm
燃料消費率(JC08モード):12.2km/ℓ
写真はトランスポーター仕様(オプション)


仕事でもプライベートでも2輪でモータースポーツを楽しむ機会が多い。そのため、バイクやパーツを積載して移動できるトランスポーターは必須のツールなのだが、多くのライダーがトヨタ・ハイエースを選んでいるのが実情だ。

価格、利便性、耐久性、燃費など、その要因はいろいろあるものの、最大の理由が口コミの力だろう。誰かが言った「キャラバンよりハイエースの方が優れている」という言葉が広まり、最初に一定のシェアを確保。一度そうなると、様々なアフターパーツもハイエースがメインになり、さらにユーザーが増えていく・・・というループが出来上がったのだ。

この手の商用車は広告も稀なため、実際に購入したユーザーの声にかなり左右される。ハイエースの台数が多ければ必然的にその声は多くなり、しかも耐用年数もモデルチェンジのサイクルも長いため、一度定着した評価を覆すのは難しい。そして、いざ乗り換える時もあえて冒険するユーザーは少ないのが実情だ。

ところが、そんなハイエース一強状態に変化が表れ始めた。最初のきっかけは、'12年にキャラバンがフルモデルチェンジを受け、名称も新たにNV350キャラバンになった時だ。新キャラバンは、まずエクステリアの力強いデザインとインテリアの上質さで話題を集め、自動ブレーキを始めとする安全装備も充実した結果、以前は10%前後で推移していたハイエースに対するシェアが30%近くにまで向上。今夏にはデザイン変更や安全運転装備の拡大を含んだ大幅なマイナーチェンジが施され、さらなる追い上げが期待されている。

数あるバリエーションの中でも我々ライダーにとってうれしいのが、その名も「トランスポーター」と呼ばれるグレードだ。これは専用の床張りを標準装備することによってバイクや自転車、スキー板などの積載性を引き上げたもので、サイドボックスやベッドシステムといったオプションの追加も可能なアウトドア仕様である。

乗って印象的なのは、操作系が華奢なハイエースと比較するとあらゆる部分にガッシリとした手応えがあるところだ。やや小径なステアリングは支持剛性が高く、回した時のフィーリングや路面からのインフォメーションが分かりやすくなっている他、シフトレバーの操作性やボディ剛性にもそれが共通しているため、明確にスポーティな味つけだと言える。

中途半端なユルさを廃し、仕事のツール然とした力強さに溢れる新キャラバンは、それゆえ長距離になればなるほど頼もしく感じられるに違いない。

今、日産が取り組んでいる活動は、「ユーザーの声を直接聞き、自分で見て、知る」という極めて愚直な作業だ。その成果が口コミになって表れ、いかにシェアに影響するか。今度その効果を知るのは日産であり、その怖さを知るのはトヨタかもしれない。

-------------------------------------------
text:伊丹孝裕/Takahiro Itami
1971年生まれ。二輪専門誌『クラブマン』の編集長を務めた後にフリーランスのモーターサイクルジャーナリストへ転向。レーシングライダーとしても活動し、これまでマン島TTやパイクスピーク、鈴鹿八耐を始めとする国内外のレースに参戦してきた。国際A級ライダー。