Letter From Mom 夫と子どもとクルマたち Vol.17 右足だけのシューズ

アヘッド Letter From Mom

※この記事には広告が含まれます

この夏もよくサンダルを履いた。サンダルは運転に向かないが、もともと車内にはドライビングシューズを常備しているので、どんな靴の場合も運転席に座ったら履き替えるのが習慣だ。もちろんそれは安全性を確保するため、というのが大前提。でもその裏には、ペダル操作をしていると靴のカカトが黒ずんでくるのがイヤで、汚したくないお気に入りの靴を長持ちさせるため、という貧乏性があるのも正直なところだ。

text:まるも亜希子 [aheadアーカイブス vol.189 2018年8月号]
Chapter
Vol.17 右足だけのシューズ

Vol.17 右足だけのシューズ

しかし夫はそんな私の習慣を「気持ち悪いからやめてくれ」と言う。実は、めっぽう面倒くさがり屋の私は、ATやCVTなど2ペダル車を運転する時に、右足だけドライビングシューズを履くのである。だって、左足は使わないじゃん? というシンプルな理由なのだが、「A型のオレには理解不能。左右ちがう靴履いててよく平気でいられるね」と夫は呆れ顔だ。

私がO型のせいなのか、大雑把な性格ゆえなのか、右足だけドライビングシューズでもとくに違和感はない。というより、運転しはじめたら左足のことなんてすっかり忘れてしまって、ドライブ途中でコンビニに立ち寄り、左右バラバラの靴のままクルマを降りて、2、3歩テケテケと歩いてから「アレッ?」と気がつくこともよくある。そんな時はちょっと恥ずかしい。

でも夫だって、私を責める時ばっかり「自分はきれい好きで神経細やかなA型ですから」なんてエバっているが、私にもとうてい理解できないことがある。夫はお店やガソリンスタンドなどでもらった領収書を、車内のあっちこっちにポイポイと突っ込むのだ。もうポケットというポケットから何かしらの領収書が出てきて、その日付が1年以上前だったりする。

フリーランスの私たちにとって、領収書はお金と同じ。それをいつまでもゴチャゴチャとクルマの中に放っておける神経がまず信じられないし、ドアを開けた時に風で領収書が飛ばされて、それを慌てて追っかけて拾う瞬間なんかは、「なんで私が!」と本当にイラッとくる。

領収書なら家に帰ってから出して保管すればいいのに、どうして車内で出してしまうのか。結婚して3年の間ずっと不思議に思っていた。でも夫はいつもきちんと両足にドライビングシューズを履き、モコモコする上着なども脱いで運転するなぁと考えたとき、もしかしたら運転に向き合う感覚の違いかもしれないと思った。

夫にとって自分の体のポケットにある領収書は運転を邪魔するもの、気にさわるものという認識。でも私にとってのそれは、車内がゴチャゴチャしていること。夫にとって右足だけドライビングシューズは気持ち悪いが、乱雑な領収書はきっと気持ち悪くないのだ。

お互いが車内で気持ちよく過ごすために、私は夫と一緒の時には両足にドライビングシューズを履くことにした。あとは車内のゴチャゴチャを何とかしたいが、やっぱり私がせっせと片付けるしかないのだろうか。こんなところで実感する、家族で1台を共有する難しさ。独身時代には考えもしなかったことである。

--------------------------------------------------
text:まるも亜希子/Akiko Marumo
エンスー系自動車雑誌『Tipo』の編集者を経て、カーライフジャーナリストとして独立。ファミリーや女性に対するクルマの魅力解説には定評があり、雑誌やWeb、トークショーなど幅広い分野で活躍中。国際ラリーや国内耐久レースなどモータースポーツにも参戦している。
【お得情報あり】CarMe & CARPRIMEのLINEに登録する

商品詳細