もう一度SUZUKIに乗る ー後編 スズキに乗る理由

アヘッド もう一度SUZUKIに乗る ー後編 スズキに乗る理由

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「特別すごいヤツがほしいわけじゃない、シンプルなバイクが良い」「アップライトなポジションで、重た過ぎず、一泊二日程度のツーリングに行けて、2人乗りがしやすければ尚イイ」それなりの年齢になったライダーにとって、理想のバイクのイメージは、大方これに近いのではないだろうか。加えて数字や見栄に囚われずにバイクを選びたいと考えているなら、SV650を候補に入れてほしい。

text:神尾 成 photo:長谷川徹 [aheadアーカイブス vol.188 2018年7月号]
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もう一度SUZUKIに乗る ー後編 スズキに乗る理由

もう一度SUZUKIに乗る ー後編 スズキに乗る理由

このバイクの開発コンセプトは「原点回帰」。もう一度バイクに乗りたい、もしくはバイクに乗り始めた頃に戻りたいという想いに対して真っ直ぐに応えてくれるバイクなのだ。

SV650は、デビューから今年で20年目となる長寿モデルだ。発売当時は、トラスフレームやビッグツインスポーツが国内外から続々とリリースされるイタリアンバイクブームだったが、その中でSV650は、年間で本家イタリアメーカーの全販売台数の4倍を売り上げる世界的なベストセラーになったのである。

だが日本では、中間排気量の宿命からか販売が低迷、存在価値が認められず、僅か3年でカタログ落ちの憂き目に遇った。しかしここ数年、日本の二輪市場が熟成してきたことを受けて、一昨年のフルモデルチェンジを機に国内での販売が再開、以前よりも高い評価を得ている。

久しぶりにSV650を走らせてみると、このバイクのスズキらしさが見えてきた。低速では Vツイン固有のドコドコ感がありながら、回転が上がるに連れてストレスなく吹け上がっていく。

その時の〝戦闘体勢に入る感じ〟がGSX-Rやハヤブサと共通しているように思える。これはエンジンの特性だけでなく、バイク全体が醸し出すスズキの個性と言えるだろう。スズキは、80年代のレプリカブームを牽引しただけあって、日常の使い勝手とスポーツ性を融合させることが上手い。クルーザーやストリート系モデルでも走り出すと直ぐにライダーをその気にさせる。

中でもSV650は、スーパースポーツやフラッグシップからの乗り換えも視野に入れて開発したというだけに、見た目からは想像できないほど走行性能が高い。ブラインドコーナーが続く峠道やハーフウエットなどの難しい場面でも、必要以上に神経を尖らせることなく走りを楽しめる。

理由として、90°Vツインの路面を掴むトラクションの良さもあるが、最高出力と最大トルクのピーク差を400回転にまで狭めたことによって成し得たアクセルのリニアリティと、スリムでコンパクトな車体のまとめ方の巧みさによるところが大きい。とはいえ、足つき性を狙ったシートが自分には極端に低すぎるし、握り込まないとブレーキが効いてこないなど、不満な点がない訳ではない。

しかしそれを含めても、過不足のない絶妙なバランスがSV650にはあるのだ。

前回のGSX-S750に続き、今回のSV650と、スズキのバイクを改めて試乗してみて、自分がなぜスズキを何台も乗り継いで来たのかが分かってきた。スズキのバイクは、スペックや理屈云々ではなく、パッケージとしてバランスのとれたバイクが多いからだ。それは緊張を低減させてポジティブになり、ライディングに集中することに繋がっていく。

結果、人車一体での運動能力とライディングプレジャーのレベルを引き上げることになる。つまるところバイクに乗るということは、スポーツするということなのだ。

そういう意味でスズキのバイクはジャンルを問わず、全てのモデルがスポーツバイクとして完成しているように思う。

もし今から、もう一度バイクに乗ろうと考えていて、過去にスズキのバイクに乗っていたのなら、もう一度スズキに乗ることをお勧めする。他のバイクでは、完全燃焼できず、心の奥に引っ掛かりが残るはずだ。

◆SUZUKI SV650ABS
車両本体価格:¥738,720(税込)
エンジン:DOHC・4バルブ90°V型2気筒
排気量:645cc 装備重量:197kg
最高出力:56kW(76.1ps)/8,500rpm
最大トルク:64Nm(6.5kgm)/8,100rpm

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text:神尾 成/Sei Kamio 
1964年生まれ。神戸市出身。新聞社のプレスライダー、大型バイク用品店の開発、アフターバイクパーツの企画開発、カスタムバイクのセットアップ等に携わり、2010年3月号から2017年1月号に渡りahead編集長を務めた。現在もプランナーとしてaheadに関わっている。

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